16.蜜蜂と遠雷 連載からの加筆・修正 03

03.星星峡 2009年8月号 No.139 P2-11

やっぱり聞こえる。雨の馬たち。
*前後に空白行

世界は音楽に溢れているのに、あたしのどこにも音楽は
ない。

*前後に空白行

世界はこんなにも音楽に溢れているのに。

 色彩のない、雨に歪む風景をぼんやり眺めていると、そ
んな醒めた実感だけが込み上げてくる。
こんな状態でコンクールに出てどうなるというのか。

 色彩のない、雨に歪む風景をぼんやり眺めている
と、そんな醒めた実感だけが込み上げてくる。
 わざわざあたしが音楽を付け加える必要があるの
だろうか。

燃え尽き症候群。二十歳過ぎればただの人。
*前に空白行

 母の死後、最初のコンサートで、亜夜は演奏を
しなかった。
*前に空白行

ねえお母さん、紅茶は?
*前後に空白行

 あたしは一人。一人きり。お母さんは、もうこの
世界のどこにもいない。あたしに紅茶を渡してくれ
ることも二度とない。
*前後に空白行

 よかったよかった、心配してたけど、一人でもし
っかりしてるね。
 たいしたもんだ。もっとショック受けてるかと思
ったけど、落ち着いてた。
 やっぱり、演奏することで乗り越えるしかないん
だね。
*前後に空白行

一人きり。一人きり。
*前後に空白行

彼女の視界には、静かに光を浴びているグランドピアノ
しか見えていなかった。

彼女のには、静かに光を浴びているグランドピ
アノしか見えていなかった。

客席にも、ステージ袖にも、世界のどこにもお母
さんはいない。
*前後に空白行

あそこにもう音楽はない。あたしにとっての音楽
は消えた。
*前後に空白行

かくて、彼女は「消えた天才少女」となった。
*前に空白行

 亜夜はあまたの「天才もどき」とは異なっていた。
*前に空白行

 ただ、亜夜はあまたの「天才もどき」とは異なっ
ていた。

 かつて、母と音大で同期だったという男性で、お母さん
の命日も近いし、彼女が好きだった亜夜ちゃんのピアノを
聴かせてくれないか、という申し出だった。
*前に空白行


 CDやMD、ぬいぐるみに観葉植物。今ではすっかり亜
夜の第二の部屋と化している。

 CDや、ぬいぐるみに観葉植物。今ではすっか
り亜夜の第二の部屋と化している。

ショスタコーヴィチのソナタ。
*前後に空白行

 栄伝亜夜さん、ぜひうちの大学を受けてもらえな
いでしょうか?
*前後に空白行

 どうして受ける気になったのかは分からない。
*前に空白行

 だけどなあ。まさか、今さら、コンクールなんかに。
*前後に空白行

 誰かの陰口が聞こえる。そう、彼女はこの春に二
十歳を迎えていた。ステージに背を向けて七年。
*前に空白行

だけど、あたしの中には、あの時以来、音楽はないんで
すよ、先生。
*前後に空白行

どうしよう、お母さん。
*前後に空白行

本はP38-49

3日目にして削除された部分がでてきました。どう表記していいか、悩んではいますが。ここ文字の色ってかえれないのかねぇ。

映画を先に見た人は、あの馬のシーンがなんのこっちゃだったと思いますが、ここを読めば納得いくような。原作を読みたくなるような、映画ってのはある意味正解というか、作家好みというか。

昨日言ってた、「祝祭と予感」古本屋でみつけて、「伝説と予感」立ち読みしちゃいました、5分もかかんなかったかな、ほんと短編。
5歳から師事してたんでしょうね。ぐらいにしときますか。塵君のお父さんは学者さんからの養蜂家ってかんじでしょうか。お父さん主人公で小説書いて欲しいなぁ。

では、また明日。


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