18.蜜蜂と遠雷 連載からの加筆・修正 05

星星峡 2009年11月号 No.142 P2-7

おう、ここから毎月かな。

懐かしい匂い。
前後に空白行

 明石の出す音は優しいねえ。お蚕様も、明石のピアノだ
とよう聴いとうよ。
*前後に空白行

 明石の出す音は優しいねえ。お蚕さんも、明石の
ピアノが好きみたいや。

むろん、自分が天才少年でないことは知っていた。
*前に空白行

ピアノは天才少年や天才少女のためだけのものじゃない
んだから。
*前後に空白行

 このピアノの前に初めて座った時の感激は忘れら
れない。
*前に空白行

それでも、祖母はコツコツと真綿を作って稼いだお金を貯
め、中古ではあるけれど、明石にこのピアノを買ってくれ
たのである。

         それでも、祖母はコツコツと稼
いだお金を貯め、中古ではあるけれど、明石にこの
ピアノを買ってくれたのである。

 あいつ、ピアノん中に虫飼ってるらしいぜ。
 芋虫だらけの部屋で練習してるんだって。キモチ
ワルッ。
*前後に空白行

「この曲知ってる。なんて曲だっけ?」
「シューマンの曲だよ。トロイメライっていうの」
ゆったりと曲を奏でながら、明石は雅美に答えた。
「これも知ってるでしょ」
別の曲を弾く。
「あっ、胃薬のコマーシャルの曲だね」
「モーツァルトだよ」
「やっぱ、高島君の音は優しいね」
明石はなぜかどきっとした。
*前後に空白行

「この曲知ってる。なんて曲だっけ?」
「シューマンの曲だよ。トロイメライっていうの」
ゆったりと曲を奏でながら、明石は雅美に答えた。
「これも知ってるでしょ」
別の曲を弾く。
「あっ、胃薬のコマーシャルの曲だね」
ショパンだよ」
「やっぱ、高島君の音は優しいね」
明石はなぜかどきっとした。

お蚕様も、明石のピアノだとよう聴いとうよ。
*前後に空白行

お蚕さんも、明石のピアノだとよう聴いとうよ。

 ここで、仕上げをしよう。祖母が買ってくれたピアノで、
祖母が聴いてる、お蚕様の部屋を改造したこの部屋で、コ
ンクールの曲を仕上げよう。それが、今の自分にはいちば
んふさわしい。
*前後に空白行

ふーっ。
真綿じゃないよな。お蚕様が、さんにね。
胃腸薬のコマーシャル なんのかなぁ。気になるが、ここは
ガマンして、先に進みましょう。

本 P53~58

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