41. 蜜蜂と遠雷 連載からの加筆・修正 26


星星峡 2012年3月号 N.170 P72-76
黒鍵のエチュード(承前)

 一次審査の、気の遠くなるような(自分の出番までも、
そのあとも)長い待ち時間に比べれば、ずっと気分的には
楽である。
 一次予選の、気の遠くなるような(自分の出番ま
でも、そのあとも)長い待ち時間に比べれば、ずっ
と気分的には楽である。

 おばあちゃーん。
*前後に空白行

歩いている。明石は波打ち際を歩いている。
歩いている。明石は川べりを歩いている。

 賢治は波打ち際を歩き続ける。トシの声など聞こえない
かのように、俯いて、黙々と暗い浜辺を歩き続ける。
 賢治は川べりを歩き続ける。トシの声など聞こえ
ないかのように、俯いて、黙々と暗い浜辺を歩き続
ける。
 
 トシの声は、澄み切って美しい。遠いこだまのように、
仏が握っている錫杖の鈴のように、繰り返し繰り返し、空
の彼方から響いてくる。
  トシの声は、澄み切って美しい。遠いこだまのよ
うに、修験者が握っている錫杖ののように、繰り
返し繰り返し、空の彼方から響いてくる。

 しんと静まり返る場内。二次審査も、拍手は禁じられて
いる。
 しんと静まり返る場内。二次予選も、拍手は禁じ
られている。

 終わった。
*前後に空白行

 しかし、万雷の拍手の中に、泣き顔の満智子を見て、そ
うか、本当に、今二次審査が終わったのだと、ようやく腑
に落ちたのだった。
 しかし、万雷の拍手の中に、泣き顔の満智子を見て、そ
うか、本当に、今二次予選が終わったのだと、ようやく腑
に落ちたのだった。

本 P212-218

あめゆじゅとてちてけんじゃ――
あめゆじゅとてちてけんじゃ――
この前後の空白行は残されてますね。

3:38あたりです。
https://youtu.be/o6rlg3-6goI

波打ち際→川べり、仏→修験者、鈴→音と、審査→予選以外の
書き換えがありましたね。 この書き換えは納得いきますね。
こういうの見つけると、やりがいありますね。

ではまた。



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