見出し画像

デジタルプロダクト中心型組織になるのか、価値探索・開発型組織になるのか

 「アジャイル型価値開発」の話に触れた。

 「価値を探索し、開発する」という文脈と、その組織的拡張、スケール化は別の話になる。実際のところ、アジャイル型価値開発(仮説検証型アジャイル開発)では、複数チームの構造化については言及していない。むしろ、「チームを分けない」ところに立っている。

 「より新規性の高い価値の探索と開発」という文脈に立って考えるならば、大勢のメンバーがいてぞろぞろとチームと編成するところから始まる、というのは考えにくい。考えにくいというか、既に何かがおかしい。価値探索と最初の価値実現は、可能な限りアジリティを求めたい。その前提において、「どうスケールしよう」という問いは見当違いになる。

 価値探索とスケール化は、より問題として扱いたい領域が異なる。というか、両方いっぺんに扱おうとすると、複雑すぎて手に負えない。

 一方、近年の「組織アジャイル(業務や組織運営にアジャイルを適用する)」という方向性は、この問題に辿り着く気配を感じさせてくれている。深化前提の業務や組織のあり方に対して探索適応(アジャイル)を持ち込むための方策である。

 つまり、価値探索のスケール化、複雑化は避けられないようにはなる(だいぶ先においてだが…)。いかにして、この複雑性に対抗していくか。大規模アジャイルはその手がかりにあたるとみなされるだろう。

 ただし、ソフトウェア・プロダクト開発のスケール化と、業務・組織運営の探索適用およびその拡張を単純に合わせて考えることはできない。「デジタルプロダクト」をすでに事業の中心に据えている組織であれば、大規模アジャイルの距離感は近くなる。しかし、日本の多くの組織がデジタルトランスフォーメーションという言葉を必要としたように、いまだそのような状況にあるわけではない。

 以下のように想定状況を分類できるが、上段と下段は世界が違う

 だからこそとばかりに、リアル事業中心からデジタルプロダクト事業へのシフト論はDX界隈で見られた論調だ。それを否定することはしないが、デジタルプロダクト中心組織になることが目的なのか、価値探索・実現組織を目指すのかは、同じ話ではない。一緒くたに捉えて良いのか、丁寧に考えるべきテーマだ。

 「組織を芯からアジャイルにする」で示したのは、後者に向けた「移行」である。

 ただ、現実にはデジタルプロダクトが中心となっている事業でも、この移行が必要な組織もある。そう考えると、なおさら別問題とみることもできる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?