会社をつくった人間が引っ張り続ける組織から、そこにいる人達でつくる組織へ

 仲間と立ち上げた会社が来年の3月に丸6年を迎える。実際のところもう10年くらいやっている気分だ。事実、この会社に注いできた時間はそれまで居たどの組織よりも物理的に多い。当然思い入れがあって、会社のビジョン、ミッション、価値観を自分で考え引っ張ってきた。

 ビジョン、ミッション、価値観は、それ自体が組織になかったり、あるいはあっても日々の運用がイメージできないものだったりということが珍しくないだろう。だから、自分で会社を運営するにあたっては毎日向き合いたくなるような、自分の腹の底と一致しているものを選ぶようにした。

 自分で作り出した言葉だが、その言葉に救われることは少なくなかった。

 何のためにここまでやっているのか? そのアンサーは常に、ミッションにある。正しいものを正しくつくるために、と。

 そこまで苦労を厭わず、一体どこへ向かいたいのか? ただ、今とは違う風景をみたいんだ、と。

 そんな自分を支える信念とは何か? 10年以上変わらず自分の中にある越境という姿勢以外にはない。

 どれもこれも、会社の言葉ではなく、自分の言葉だ。それで良いと思ってきたし、これからもこれらの言葉は自分の中で生き続けていく。だが、丸5年経ったところで、考えが変わり始めた。この組織はあくまで会社だ。誰か個人の言葉で染め上げていて良いのか、と。

 組織が今よりもうひとつ強くなるためには? 自分たちで言葉を作り出すことなのではないか。私は、組織のステートメントは個人のステートメントと繋がっていたいと思う。そこが繋がっているからこそ、当事者として組織の活動、方向性にともに臨むことができる。逆に繋ぎようがなければ同じバスに乗らないほうが良い。

 それを思い出したときに、そろそろ次へ行くときなのだと感じた。会社をつくった人間が引っ張り続ける組織から、そこにいる人達でつくる組織へと。6年目はそんな思いで始めたし、残りの時間をそう考えている。

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