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最高の仕事術とは、自分で仕事の方法を生み出すこと

 20年以上も仕事をしていれば、自分の「これまでの仕事」をふりかえるには十分な素材がある。仕事を「絵描き」に例えて考えてみよう。

 様々なプロジェクト、やるべきことは「キャンバス」にあたる。キャンバスに向き合うにあたって、自分がどんな色を使うことができるのか。まずもって、「パレット」の上に「色」が無ければ、キャンバスを前に手も足もでない。
 パレットとは自分の仕事に関する引き出しであり、その上に乗っている絵の具は、その一つ一つが仕事の方法・仕事術、プラクティスということになる。
 自分の手元にどんな「色」があるか。「色」にいくつかの種類があるからこそ、絵が書ける。つまり、仕事に取り組める

 自分をふりかえってみると、最初は何一つ色を持っていなかった。パレットの上は、まっさらで、がらんどうだった。そこに最初に加わったのは、ソフトウェア開発者として礎となるものの考え方、「習慣」だった。

 それから、XP(エクストリーム・プログラミング)を手にして、アジャイルな開発者としての学びを始めることになる。

 リーンソフトウェア開発がしっくりときたことを今でも覚えている。リーンから、源流を辿っていった。トヨタ生産方式、リーン・シンキングといった系譜の旅。もう一つの流れ、ザ・ゴールも大きな出会いとなり、それは今にも繋がっている。

 …とあげていくと、もはやきりがない。この記憶の掘り起こしは早々に切り上げておこう。言いたかったのは、まっさらなパレットだったところに、10年20年かけて、今は実に様々なものが乗っているということ。そして、今もパレットには時折新たな「絵の具」が加わるが、それ以上にパレットの上で「色をつくる」ことのほうが多いということだ。

 既にパレットの上には色々な色が乗っている。その色同士をかけ合わせることで、簡単に新たな色を作り出すことができる。ただし、混ぜるのは簡単だが、「使える色」を成すのはそれほど簡単でもない。ただ混ぜただけでは色が腐り、使い物にならない。少し混ぜて、少し試してみる。そんな所作が欠かせない。

 仕事の方法とは、最初とにかく集めることから始まる。世の中には膨大なナレッジが存在している。いきなり新しい色を開発する必要はない。赤はもちろん、紅色、紅葉色、薄桜。乙女色なるものも既に存在する。世の中にどんな考え方、方法があるのか、調べ回ることから始めれば良い。多くの書籍と、物知りな人達があなたの好奇心を十分に打ち返してくれる。

 実際に、自分の周辺で学んだ方法を試してみる。どういうときにどんな方法が有効で、どういう場合にはフィットしないかを経験でもって知る。そうして、少しずつ使い方自体を学んでいくことになる。この繰り返しで、徐々に色使いが上手くなり、書ける「絵」も達者になっていく。仕事の方法を自分なりに使いこなして、期待する結果が出せるようになるということだ。

 その先に、「自分で色をつくる」が待っている。

 「アジャイル開発」と「デザイン思考」、「リーン・スタートアップ」
→ 「仮説検証型アジャイル開発」(「正しいものを正しくつくる」)

 さらには、作った色と他の色をかけあわせることもできる。

 「組織変革」と「正しいものを正しくつくる」
→ 「組織を芯からアジャイルにする」

 私にとって「カイゼン・ジャーニー」とは原色を乗せたパレットのようなものと言える。そこから様々な色を作っていった。

 ルーチンワークを除けば、「この前と全く同じ仕事」ということはほとんどなくて、私達はいつも異なる狙いや条件の下、臨むことになる。以前上手くいった方法がいつも通用するとは限らない。何かの手順・プロセスをそっくりそのままなぞっていれば常に結果が出るというものではない。大小の度合いはあるが、本質的に応用を効かせなければならない。

 自ずと、自分で、自分なりの「色」を作り出す必要がある。

 この本は、もしかしたらあなたのパレットに新たな絵の具を乗せることになるかもしれない。この数年、様々な組織変革・DX、新規事業・プロダクト作りに挑むにあたり、痛感したのは使っている「色」が時に古すぎるということだ。これでは新たな絵を描こうにも、描けない。
 ただ、それ以上に。この本を通じて、あなたらしい「色」が生まれること。それが、私としての本懐となる。

 古い色、新しい色。「色違い」について語りますので、よろしければご参加下さい。


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