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行き当たりばったりの感覚値で生み出された、終わらせたくない時間感覚 〜アフタータナトス セルフ解説vol.2〜

ようへいメンバーのセルフ解説、「アフタータナトス」の生まれ出ずるまでの経緯や思いが見事にまとめられていて素晴らしい。ぼんやりしていたら忘れてしまう「その都度思い、感じたこと」が、「そうだった、そうだった」と思い起こされる。

コロナ禍を跨いで作られたこの曲、変更された歌詞の中でも象徴的なのが「満員電車」が「Zoom」に置き換わったことだったりする。以前には想像もしなかったようなことが、以後には当たり前になっていたりする。それでも気付けば「今日もまた 同じ朝」と感じてしまうほど人は慣れてしまう。でも当たり前だが、「同じ日のようで同じ日は無い」。

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動画制作について、まず最初にあるのが「こんな感じで作ってみたい」というイメージの元になるPVだった。それがこれ。

スナップ写真が高速度(それも視認できないくらいの高速度)でひたすら垂れ流される、っていう内容。「走馬灯」というイメージで、今回は作ってみたかった。

なので最初は今まで撮りためてきた写真を動画ソフトに放り込んで、曲に合わせて0.5秒くらいで次々変わる感じで作ってみた。それはそれでアリで、写真のチョイス次第で面白くなる予感がした。なのでその手法での制作は、そのうちやるかもしれない(というか、それはやってみたい)。

試しに写真の羅列の一部を動画にしてみたら、それはそれで面白くなった。ただ、動画と写真の混在がイマイチ、というかやるならば高度なことをしなければならなそう、と感じられた。なので今回は全部短い動画で繋げてみよう、と思った。そこから旅が始まった。

スタジオに入ったのが2021年のGW。そこから1か月強の制作を経た。もともと大まかなイメージしかなく、あとは素材の組み合わせ。うまく歌詞にはまる動画もあるし、はまらないものもある。改めて撮りに行った素材も入れ込んだりしているうちに、今の形が見えてきた。

本当は最初からちゃんと絵コンテを書いて作る、っていう方が無駄なく作ることができるだろう。行き当たりばったりで作るので、どうも無駄が多い。けどそんな無駄もあえてやろうとしている意図もある。きっと次に作るとなってもそれに近い方法になると思われる。

で、作りながら次第に完成が見えてきて、「このくらいかな」ってところでようへいメンバーに見てもらって「ここはこんな感じどうすか」ってアドバイスをもらってさらに作りこむとさらに良くなる。その繰り返しを数回やっていると、自分でも気づきがあったりしてさらに良くなる。クリアしたあとのエクストラステージ、完成=終わりが見えてくると「終わらせたくない」という感覚がやってくる。ああこれは、芝居の稽古を重ねて本番に挑み、まもなく舞台の時間が終わろうとしている時の、「まだこの芝居は終わらせたくない」という感覚と一緒だな、と思った。

で、やっぱり何があるから終われるのかといえば、それは「〆切」であり、「次に作るべきもの」があるからだったりする。ただ思えば、2年前に芽生えたものが一応終わったのだが、まだ「終わってない」感触もある。それはもしかしたら、これから作っていくであろう作品の、これがはじまりであるからかもしれない。

(ひさとし)

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