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進化する鹿児島 第14節 長野対鹿児島

鹿児島県民160万人の鹿児島ユナイテッドサポーターの皆さん、こんにちは仙太郎です。私も現地で応援し、勝つには勝ちましたが、なかなか厳しい試合だった長野戦。それでは振り返っていきましょう。

鹿児島は2試合勝ちなしという、チーム状態が良くない中での、アウェイ長野との試合でした。ただ、長野も3連敗中(天皇杯入れると4連敗中)ということで、こちらもあまりチーム状態がよくありません。

長野対鹿児島 スターティングメンバー

鹿児島の先週からのスタメン変更は1人で野嶽選手が外れ、本職?のSB星選手が入ります。
長野は攻撃の指揮を取るボランチの宮坂選手がベンチ外。怪我なのかどうなのか。試合前には出店界隈にいたという証言もありましたが、単純にローテーションでお休みなのでしょうか。とにかく長野の攻撃の核が不在なのは鹿児島有利な状況ではありました。ただ試合展開はそれとは逆でほぼ互角の戦いでした。

ボール自体は鹿児島が持つことが多いのですが、長野的にはこれは想定内だったと思います。ボールは持たせて厳しいプレスからボールを奪取して、カウンターから仕留めるというのが彼らのゲームプランです。

そして実際、前半初めから鹿児島ボール持つ局面が多くなりますが、長野は素早く厳しいプレスからボールを奪取。波状攻撃を仕掛けてきます。ただここで失点しなかったことが鹿児島の勝利の最初のポイントになりました。

10分過ぎた頃から鹿児島が長野のプレスに対応したのと、長野のプレスが少し弱まったので、ボールの前進ができるようになり、そこからフィニッシュまで行けるようになりました。前半21分の中原選手がGKの金選手と1対1になった場面は長野の5バックを完全に崩していました。

前半21分鹿児島が長野の固い守備を崩した場面。この場面、実は鹿児島の左サイドから始まっており、長野の右WB船橋選手が前にプレスに行っている。そこから鹿児島は右へ展開。長野の左WBが迎撃に行くも距離があり、プレスを掛けられずに裏にいた五領選手にパスを出される。仕方なく長野の3バックは左にスライド。そこへ端戸選手が絶妙なポジションでフリーでボールを受けるので、CBの池ヶ谷選手が迎撃に行くも、ここで端戸選手がツータッチで前にいる藤本選手へパス。池ヶ谷選手のプレスを無効化し、前に出て開けた大きなスペースへ2列目から中原選手が走り込み、藤本選手からのダイレクトパスを受け、GKと1対1になる。ただ中原選手が受けたパスがほんの少し体の後ろだったので、少しだけボールを動かさざるを得ず、その動いている間にGKの金選手が寄せてきてシュートをブロック。中原選手もボールを浮かせたのだが、手に当たってしまう。金選手は止まらずに前に出てきたので、ボールを少し前に動かせば得点の可能性は高かった。ただ問題はここではなくて、鹿児島がこの攻撃のビルドアップの開始のときに長野は5対4の数的有利な状況で強いプレスを掛けられず、簡単に右に展開されたのが課題。数的有利な状況のときは、全力でプレスに行かないと、ボールが前進され、後ろの大きなスペースを使われ、後ろのDFは厳しくなる。本来このスペースは右WGの船橋選手が埋めるべきだが、前にプレスに行っていたので、間に合わず。

いつも遅攻が多い鹿児島はビルドアップでもタッチ数が多く、プレスに厳しいチームには苦戦することの多いのですが、この日はワンタッチやツータッチとタッチ数が少なくプレーできており、長野のプレスを回避して前進することができていました。そしてそんな流れの中から五領選手がプレスからボールを奪い、先制点を上げます。

またいつものように端戸選手が狭いスペースでボールを受け、ワンタッチで有利な味方にパスしてボールの前進もできていましたし、渡邉選手も長野の素早いプレスをあざ笑うようにワンタッチでの素晴らしいプレー を見せていました。彼のプレーは目立たないけど、毎回唸ることが多いです。

前半28分の鹿児島の先制点の場面。鹿児島の選手がパスコースを限定していて黄色点線矢印のパスコースが消されている。そこで唯一空いていた選手へパスするも後ろから五領選手がプレスを掛けに来る。後ろを見て五領選手のプレスを認知していたが、それ故かパスを浮かせてしまい五領選手がボールを奪取。ファーストタッチを左のアウトサイドで縦にボールを動かしCBをかわし、されにそれによりGKが動いたので、逆コースにシュートを撃ちゴール。プレスも素晴らしかったが、そのあとの一連のプレーも素晴らしかった。

なので以前は前プレス掛けられると、ボールを蹴ることも多かった鹿児島ですが、この日はほとんどロングキックを使うことなくビルドアップできていました。

ただこの日は気温はそれほど高くはなかったですが、ピッチ上は直射日光が燦々と降り注いでいて、これは長い距離を走りプレスを掛ける長野(特にWG)にとって適した気候とは言い難いでした。一方鹿児島はショートーパス中心なので、影響は限定的でこの気候は鹿児島有利だったと思います。

またパスの距離感も良かったので、ボールをロストした時も、すぐにプレスに行けて即時奪回できるシーンも多く見られました。

後半69分の長野の同点ゴールの場面。確かに山口選手がプレスを掛けられていないのは事実だが、実はバイタルゾーンに山口選手ひとりという状況。これでは守るのは難しい。山口選手が安東選手にプレスに行けば、横にいる選手にパスを出されてシュートを打たれていただろう。どちらが有利かといえばパスを受けた選手の方がゴール正面で有利。本来は山口選手ももう少し前のポジション(左の赤点線丸)に、福田選手が右の赤点線丸にいるべき。福田選手は試合中、逆サイドの選手にマン・ツー・マンでつくことが多かったが、この場合逆サイドの選手は捨てるべき。この赤点線丸のポジションにいれば、後ろの選手にパスを出されることはなく、しかも前にもプレスに行ける。

またシュフタル監督のコメントに、広瀬選手を釣りだして空いたスペースを攻撃したかったとのコメントもあり、実際広瀬選手が飛び出すシーンは多々あったのですが、ほとんど跳ね返していましたので、そのスペースを使われる機会はあまりありませんでした。

広瀬選手の守備面の貢献はいつも高い(ボール保持時もですが)のですが、この日はさらに素晴らしかったと思います。攻撃的にいくチームは、当然のごとく前に人を掛けるのでボールをロストすると、カウンターから数的同数のような状況で攻撃されるわけですが、ここで広瀬選手がヘディングやスライディグで相手ボールをクリアできるので、ピンチを未然に防いでいました。

後半開始から同点を狙う長野はプレスからボールを奪取し、カウンター攻撃から鹿児島のファールを誘い、セットプレーからチャンスを作ります。鹿児島は同じサイドでパスを何回も繋ぐと長野がスペースを狭めてプレスを掛けられてボールを失う場面が何回か見受けられ、その流れの中から安東選手にスーパーミドルを叩き込まれて同点になります。

同点の直後の長野の決定的な場面。進選手が広瀬選手の後ろから前のスペースに全力ダッシュして、ヘディングシュート。惜しくも外れたが見事なプレーで、さすがは点取り屋と感じさせた。

同点にされた後は長野のプレスは前から行かなくなり(行けなくなり?)、鹿児島がボールを持てるようになります。鹿児島も余裕を持ってボールを持てたのですが、点を取りに行くためか、リスキーな縦パスを入れてボールを失い、トランジションの回数が増え、こうなると完全に長野ペースになります。そんな状況から進選手のヘディングシュートが炸裂しますが、これがギリギリ外れて、これも鹿児島が勝利するもうひとつのポイントとなりました。

長野は自分たちのゲームプラン通りで、鹿児島も自分たちのゲームプラン通りの戦い方で、主導権は鹿児島にありましたが、試合の勝敗だけを考えると、どちらに転んでもおかしくはありませんでした。ただ暑い気候の中では主導権を握ったほうが有利ではあります。

試合前の予想とは違い、長野はショートパス繋いでビルドアップをしてきました。私が見た長野の試合はロングパスが主体だったので、これには少し驚きました。ただ長野はそれでボールの前進もできていたし、よく訓練されていたと思います。ただそのビルドアップからボールを失い失点するのですから、サッカーは難しいですよね。

後半の長野チャンスの場面。長野3対2で数的有利だったが、星選手が全力ダッシュで遅らせて難を逃れた。このあと広瀬選手が戻ってきてスライディグタックルしている。お見事キャプテン。

長野は試合中に前プレスやめてミドルブロックへ変更し、鹿児島からのパスが入った瞬間にプレスを掛けてボールを奪取を試みる場面もありましたが、先述の端戸選手がワンタッチパスで長野のプレスを回避したり、ボールキープしてファールを誘発したり、彼の存在は今日も大きかったですね。

それでも長野のカウンターが炸裂する場面も多々あり、引き分けも頭に浮かび始めた90分に木村選手のスーパーミドルが決まり、鹿児島が勝利しました。

宮坂選手不在の影響はあったと思いますが、安東選手はピッチ上のあらゆる場面に顔を出し、得点シーン以外でもいいプレーしていました。ドリブルで持ち運べて、ミドルシュートもよく、同点弾はゴラッソでしたよね。彼がリーグ戦初先発とは信じられません。

ただ残念だったのはアディショナルタイムです。長野はファール連発します。これで鹿児島はかなり助かりました。時間消費して困るのは鹿児島ではなく長野。イライラするのはわかりますが、全く意味のないプレーです。シュフタル監督は審判に早くプレー再開するように言ってましたが、これ審判ではなく自チームの選手に言う必要があると思います。試合中でも自分たちが有利な状況にもかかわらずファールして、鹿児島ボールになることが多々あり、これはかなり勝敗に影響したと思います。

逆に鹿児島はボールをきっちり保持して時間を消費できました。ロメロ・フランクと鈴木選手のガテンコンビでボールキープなども見せつつ危なげなく勝利しました。

試合終了間際の決勝点の場面。ロメロ・フランク選手がスペースの真ん中にいる素晴らしいポジショニング。そこへパスを入れる渡邉選手もまたすごい。普通ここからだと浮き球のセンタリングいれるのですが、ここでグラウンダーのパスを入れるとこに彼の非凡さが伺えます。そしてこれが得点のキーポイントとなります。この時、横にいる木村選手にパスを出すオプションもありましたが、その場合木村選手はシュートを打てていなかったと思います。
ロメロ・フランク選手にパスが入ったことで長野の選手がスペースを消すために中央に収縮します。ロメロ・フランク選手の落としから山口選手がシュートするも、ブロックされますがこぼれ球がこの収縮でできたスペースにこぼれて、走り込んだ木村選手がゴラッソを叩き込み、決勝点となりました

いつもは同じタイプの選手同士で交代するのですが、この日はタイプの違う体格のいい二人を投入したことで、鹿児島の攻撃パターンが変わり、長野の守備はこれに対応するのに苦労したと思います。決勝点もその流れの中から生まれました。

鹿児島のビルドアップは確実にレベルアップしていると思います。以前は前プレスかけてくるチームには苦戦していましたが、この日は大きな問題はありませんでした。長いシーズンを勝ち抜くには、チームが成長していく必要があります。そういう意味では今日の試合は勝利以上に価値のある試合だったと思います。

直近の3試合(奈良・八戸・長野)はJ3でも最も守備のいいチームとの対戦だったと思います。そしてそれは鹿児島が得意とする対戦相手ではありませんでした。そこを1勝1敗1分で乗り切れたことは、良かったのではないでしょうか。

そして次週はホームの鳥取戦となります。下位に沈む鳥取が鹿児島戦前に金監督を解雇したとのニュースが飛び込んできて驚きました。前監督が鹿児島に来られないのは残念です。ただ監督交代がカンフル剤となり勢いを取り戻すチームも多いので、気を引き締めて臨みたいと思います。

「チェストー!鹿児島ユナイテッド!」

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