今の延長線上に優勝はない 第18節 沼津対鹿児島
鹿児島県民160万人の鹿児島ユナイテッドサポーターの皆さん、こんにちは仙太郎です。私も現地で応援してきました、連勝で迎えた上位対決のアウェイ沼津戦を振り返ります。
鹿児島の先週のリーグ戦からのスタメン変更は2人で野嶽選手、武選手が外れ、星選手、福田選手が入り、福田選手が右に、圓道選手が左にポジションを取ります。沼津は先週のリーグ戦からのスタメン変更はありませんでした。
前半は共に高いラインを保ち、ハイプレスを掛け合う展開になります。ただ鹿児島のビルドアップは正直、うまくボールを運べておらず苦しい展開が続きました。両チームともハイラインでスペースない中でのプレーが必要だったのですが、その面では沼津の方が一枚も二枚も上手でした。
それでも前半の鹿児島はセットプレーを中心に沼津ゴールに迫りますし、守備も人数をかけて守れていて、前半25分までにシュート1本に抑えていました。ただ飲水タイムを機会に流れが変わります。ここから沼津の守備強度が上がり鹿児島はボールを一度奪取してもすぐに奪い返されて、沼津が押し込む展開が続き、繰り返し鹿児島ゴールへ迫る場面が増えてきます。その流れの中から前半37分に沼津が先制します。
飲水タイム以降、鹿児島はミドルシュート二本に抑えられ、完全に流れを変えられてしまいました。飲水タイムは基本的に指示が出せない建前ですが、実際は出せてしまうので、中山監督の指示の的確さが光ります。
全般的に鹿児島は沼津のプレスに苦労して、ボールをなかなか前進できませんでした。だからロングボール使って前進するのもひとつの方法でした。
どうしてもビルドアップがうまくいかないと、最終的に縦に蹴ってボールロストする展開になるのなら、最初から意図してロングボールを組み入れた方が良かったと思います。
と思っていたら後半頭から武選手を投入。
武選手は相手SBと比べて背の高さがあるので、ヘディングには優位性があります。そして後半の最初は武選手を狙って、そのクリアボール拾えて攻撃できて、いい感じでした。ところがこのロングボール攻撃、すぐにやめてしまいました。なんで?
高さのある武選手と背の高くないSBのマッチアップは鹿児島に有利で、ヘディングで勝てなくても沼津はかなり嫌だったはずで、こうすれば沼津の前プレも無力化できるので一石二鳥。後半最初から武選手に繰り返しロングボール入れてきたので監督の指示かと思ったのですが。ロングボールやめてからは立て続けに決定的なピンチを迎えてしまいます。
そして後半17分に決定的な追加点を見事なカウンターから取られます。
沼津のCBも高さはあまりないので、ここも狙い目で、鈴木選手も投入したのですが、これも数回しか試みしてません。もっともボールの出処もプレス厳しかったので、質の高いボールを入れるのは簡単ではなかったです。
簡単なミスパスも多く見られて、これも沼津のプレスが強かったの一因だったと思います。
試合前は前プレスから奪ってショートカウンター狙いたいと思っていたが、全く無理でした。沼津のビルドアップは質が高くて、ワンタッチやツータッチで鹿児島のプレスを無力化してボールを前進させていました。正直、ここまでビルドアップが整理されているJ3のクラブは始めてみました。J2やJ1でもここまでビルドアップがうまいチームはあまりないでしょう。
沼津は守備強度が高く、スペースもなかったのですが、途中出場の端戸仁選手はちょっと別格で、ボールを失うこともなく決定的なパス出していました。なんかひとりレベルが違うんです。ちょっと宇宙人レベル(笑。後半26分のヒールで星選手に出したパスも、星選手がコントロールミスしていなければ得点できていたと思います)。
沼津のSBはサイドにボールが出ると、前に出てきたのでその裏のスペース使いたかったのですが、ロメロ・フランク選手はそういうプレーは得意ではなく、圓道や福田がドリブル突破するのも困難でした。
ビルドアップの局面でも鹿児島はピッチ中央を使えず、サイドから前進なので沼津は対応が簡単です。
沼津は一度中を使ってサイドへ行くので鹿児島のスライドが遅れて、フリーでボールを持たれます。
ただサイドアタッカーのクオリティは鹿児島のほうが高かったので、鹿児島も守れてはいました。
なのでサイドを突破されてピンチになることは少なかったです。
失点シーンですが、ボール奪った選手がそのまま裏のスペースに走り込みシュート。理想的なカウンターです。これも練習しているはずです。鹿児島だとあれはボール奪取してパスして終わりですよね。得点者がSBとCBですからね、普通は考えられないプレーです。
沼津のプレー強度の高さと比べると、鹿児島のプレー強度は比較的低いのが目立ちました。現代サッカーはプレー強度が高いのが当たり前で、その上で何ができるかを求められます。昨年終盤に高いプレー強度のいわきになすすべもなく破れたのを思い出しました。
正直な感想を言うと、今の鹿児島のままの延長線上では優勝はないと思います。練習からプレー強度を求めたい。
鹿児島の選手は能力が高く、ボール持てるから持つのですが、それ故攻撃が遅くなりがちです。藤本選手が得点できないのも、そこに原因があると思っています。
それと鹿児島は、もう少しシンプルにプレーしたい。これも選手の個人能力が高いが故なのですが、難しいプレーを選択しがちだと思います。でもシンプルなプレーこそベストなソリューションだと思います。
後半追加点後は、沼津は体張って守備していました。
鹿児島がセンタリングする場面とかでは体を投げ出してセンタリングをブロックしていました。敵ながら感銘を受けるくらい見事でした。鹿児島であのプレーできる選手が何人いるでしょうか。でもそういう泥臭いプレーが、得点や失点を分けますし、試合の勝敗を決定します。
試合終了間際のプレスで鹿児島ボールをGKまで戻す場面もありました。普通はその時間帯で2点勝っていれば、そこまでボールを追いかけることはしないです。そのあたりの意識も素晴らしかったと思います。
沼津はビルドアップもきちんとデザインされ、ワンタッチ、ツータッチ、ドリブルと適切に使い分けていました。選手が動き、スペースを作り、その作った選手がまた入ってきてパスを受ける。フリーマン作れて使えていました。お見事としか言いようがありません。
近いサイドでボールを回して鹿児島を引き付けて逆サイドに展開も素晴らしかったと思います。
ここまでビルドアップを仕込んでいるクラブはなかなかない、教科書みたいなビルドアップでした。
沼津のプレー強度が高いのは、監督が練習中から強度の高いプレーを要求しているからだと思います。そうでないと試合中にこのプレー強度は出せません。そしてプレー強度の高い練習をしていれば、攻撃のレベルも上がります。まさにこの日の沼津のサッカーはそういうサッカーでした。
そういう意味でいうと鹿児島はもっとプレー強度を上げていく必要があり、それには強度の高い練習をする必要があります。私は鹿児島の練習を見たことがないので、偉そうなことは言えませんが、少なくとも試合ででる現象を見るとそう判断せざるをえません。
そう考えると今試合に出ているメンバー選考も考えなければなりません。今の延長線上にはJ3優勝はちょっと想像できないなと感じた沼津戦でした。今のままでも3位や4位は行けるかもしれませんし、運が良ければ2位で昇格できるかもしれません。少なくとも優勝は無理だろうなと。
ただ今年のJ3は中断期間がなく、思い切った戦術や選手の変更がしにくい環境です。シーズン途中に大きな変更をするにはリスクがあります。変えたら1ヶ月くらいは結果が出ないかもしれません。ただ今変える勇気を持たないと、結局シーズン終わって後悔することになりそうな気がしています。
そして次は首位の愛媛とホームで対戦です。現在勝点差は4。
ここで負ければ差が大きく開くので、負けられない戦いです。
「チェストー!鹿児島ユナイテッド!」
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