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センセイの鞄

下に写真は、WOWOWで製作され、2003年の2月(もう20年前か)、フジテレビのスペシャル枠で放送されたTVドラマ「センセイの鞄」DVDのジャケット。

川上弘美さんの原作も人気作ですし、漫画にも、舞台にもなっているようでだけど、僕は、このドラマ版が一番好き。久世光彦さんらしい演出、筒井ともみさんらしい脚本。オーケストラのような重厚に過ぎる感じのない、カルテットな感じで奏でられた名作だと思っている。

それにしても、まさに、この物語こそが、小料理屋か居酒屋的店舗の妙というのか、都市らしい人間関係、あるいは「つながり」つまり「(お店の)カウンターを挟んだ、お客さんどうしの横の関係。その「不思議」をそのまま画にしたような作品だ。毎度のことながら、感心してしまう。

主人公のツキコさんが、高校時代の古文の先生と再会するのは、いきつけの居酒屋。そもそも、その居酒屋は、都会で一人がんばっているツキコさんにとって、唯一「ただいま」的に帰って来れる場所(だから、カウンターに座るんだと思う)。

そして、ある意味、同じような境遇にあった初老の男と、このツキコさんの心を、30歳の年齢差を越えて結んでいくのも、この、居酒屋のカウンター。都会的だ。

カウンターに座れば、先生とツキコさんは横並び。面と向かってしまうと、どうしていいかわからない関係でも、なんとなく横には並べたりもする。
そして、目の前には、店主がいる。彼は料理を供しながら、二人を客として寓しながら、なんとなく仲人役にもなっていく。

確かに、高校の教師と生徒ではありますが、それは遠い昔の話しで、今は職縁で繋がる話題もなく、育ってきた時代も違うので、そういう意味で話しが弾むわけでもない。

だから、切っ掛けは難しい。一度、打ち解けてしまえば、お互いがそれぞれに抱える寂しさが、きっと二人を繋げていくのだけれど…

作品の中で、この居酒屋と、このカウンターは、先生とツキコさんの物語の背景であり、舞台装置に過ぎないけれど、このカウンターと、この居酒屋がなければこの物語も始まらなかったことも、また事実。僕はね、現実の「人と人のつながり」も、案外、こうやって始めていく方がスムーズなのかなとそんなふうに思っている。

DVD「センセイの鞄」
原作:川上弘美  脚本:筒井ともみ 演出:久世光彦
出演:小泉今日子/柄本明/モト冬樹/豊原功輔/竹中直人/木内みどり/加藤治子/樹木希林 他

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