見出し画像

整音さん

整音技術者という職種の方がいらっしゃる。録音された音源から「雑音」にあたるものを除去する仕事をされている。
でも、彼らが活躍されていたのもアナログ時代の話しで、録音もデジタルが主流になると、あまりお見かけしなくなった技能職さんでもあるともいわれている。

もちろん、録音がデジタルになったからといって、録音された音から「雑音」がなくなったわけではない。特に街頭の音を拾ってくるときなんかはそう。ただ、以前、整音さんがなさってたような仕事は、コンピュータなりAIなりがするようになったと。あらかじめ、この周波数帯の音はいらないよとインプットしておけば、そうしてくれる。さらにそういうこともAIなりが勝手にやってくれる。

ただ、そうやっても残ってしまう「雑音」というのはあるのも事実。
整音さんでなければ分からないような繊細なレベルの…

その作業をするかしないかで、録音の空気感が違ってくる…
特に、ライブ録音なんかでは、どの音を残して、どの音を削れば、臨場感を残しつつ、きれいに演奏を聴かせることができるのか…整音さんの腕一本で、出来はまったく違ったものになる。

(売れる売れないには関係ないかもしれないけれど)

でもね。ある整音さんがいっていた。

「俺らは、どれが消すべき音か、残すべき音か、二択なんだよな。だから整音した後のものしか聞いたことがなければ、どの音を残したらいいんだか、わからなくなっちまうと思うんだ」

確かに整音さんが腕をふるった後のものしか聞いたことがなく、整音も、たいていのことはAIが判断してしまうとなると、やがては、整音という技術があったことも消滅し「雑音」の定義すら消滅してしまう。

で、僕らは、整音さんがいた頃よりは質が低いものなのに、まあ、こんなもんなのね。ライブじゃないしと聞いている。

どうすればいいんだろう。

歓迎すべき方向に進んでいるようには思えないんだけれど。