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「故郷」のうた

故郷に続くこの道をたどって家に帰りたい
本当の自分でいられる場所へ
ウェスト・ヴァージニア
あの懐かしい山の麓へ
この道を辿って家に戻りたい

ご存知「Take Me Home , Country Roads / 故郷へかえりたい」。1971年に発表されたジョン・デンバー作の名曲。
でも、ジョン・デンバー自身はニュー・メキシコ州ロズウェルの出身。父上の転勤であっちこっち移動してますが、大学はテキサス工科大学だし、実際、この曲を書いた当時、彼はウェスト・ヴァージニアに行ったこともなく、故に楽曲の中に登場する地名と実際とは合致せず、歌詞に歌われている風景は大半がヴァージニア州のものだという意見もある。ちょっと感動していた少年の僕としては、後になって、ずいぶんがっかりさせられもした。考えてみれば、この楽曲をカバーして大ヒットさせるオリビア・ニュートンジョンなんて、イングランドに生まれてオーストラリアに育った人だし…

でもね。ハーパーズ・フェリー(ウェスト・ヴァージニア州)あたりで路肩にクルマをとめて「ここが歌に歌われた風景よ」と涙を流すシニアなご夫妻に「実は、この歌…」って話しはできないと思う。

たぶん、歌詞に書かれている言葉の言外にジョン・デンバーが描いたのは「誰の心にもある故郷」だったんだろう。だからこそ、この楽曲は、遠い日本で、アメリカではない、この国の「故郷」を描いた映画「耳をすませば」の主題歌にもなったんだと思う。そういう意味では、表層上の歌詞がウェスト・ヴァージニア州の風景を歌っているか否か、そういうことは、どうでもいいことなのかもしれない。

彼が歌ったのは国歌や人種という壁を超えて、誰の心にもある「故郷」だった…それでいいんだろと思う。リアルの真骨頂であるはずの「生まれ故郷」でさえ「物語」…きっと、この楽曲は、そういう名曲なんだ。

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