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梁英姫 監督の

以下は2015年に、当時運営していたブログに書いたもの。

梁英姫(ヤン・ヨンヒ)監督の「ディア・ピョンヤン」はドキュメンタリー映画。2006年の8月に公開された作品で、DVDが発売されたのは、翌年のことだった。

この映画は、梁監督のお父様、お母様、そしてご家族の日常を追った物語。ただ、お父様もお母様も朝鮮総連の幹部、梁監督のお兄様3人は、すべて帰国事業で帰国。今はピョンヤンで暮らしている。
お父様とお母様は敬愛する将軍様に忠誠を誓いつつ、ご本人たちはつましい生活を送りながら、北に居る3人のお兄様や親戚、友人たちにせっせと物やお金を送っている…そういうご家庭。

映画の中には、万景峰号の船内も、ピョンヤンのご兄弟一家の生活風景も映し出されるが、あっけないほどフツウ。ただの見慣れた中流っぽい家族の幸福風景。

ご兄弟の暮らしは、お父様とお母様がせっせと送る仕送り、物資を背景に成り立っているも。ピアノはYAMAMAだったし、女の子はキティちゃんのパジャマを着ていた。

ピョンヤンに暮らしているという、つまりこれはエリートの事例ということでもあるようだから、この事例から、北朝鮮=朝鮮民主主義人民共和国の大半の人々の生活レベルを推し量るわけにはいかないけれど、とにかく、あっけないくらい「革命完遂」な感じがない「中流」な感じ。

そして、このご家庭は、前述したように、その経済力は、お父様、お母様に拠るところなので、前述したように、日本のものがフツウにたくさん置いてある。ピアノの教則本の背表紙もみな日本語。それでも、お子さんたちはエリート校の生徒。反革命分子な扱いはなさそう。

貧富の差がある社会主義って、何だか変ですが。朝鮮総連の幹部を父に持つ、お兄さんの家庭はステイタスなお受験家庭のようにみえた。

梁監督は、この家の末娘にあたり、日本に暮らしているので、その影響を最も強く受けている。だから、ご両親、ご兄弟のことを愛する家族とは思いながら、主義主張の面では斜に構えて見ざるを得ないという状況にいらっしゃる…

そうした心情を抱えながら、まるでホーム・ムービーのように家族をとらえた作品は、それ故にとてもリアルだったし、北朝鮮憎しでもなく、また、革命バンザイでもない、この問題を取扱っているにしては、希有なドキュメンタリー作品になっていると思います。

最後までご覧いただくと「ああ、そうだよな。誰だってフツウの親子だよな」と再確認させらる作品。梁英姫監督に、いろいろ教えていただいた。

「ディア・ピョンヤン」(2006年)
監督・脚本・撮影:梁英姫(ヤン・ヨンヒ)/プロデューサー:稲葉敏也
編集:中牛あかね/サウンド:犬丸正博