Russian Offensive Campaign Assessment, June 10, 2024, ISW ⬇️
ロシア軍の国境越えスーミ州襲撃
戦争研究所(ISW)報告書の一部日本語訳
6月9日にロシア軍はスーミ州内への小規模な国境越え侵入を行ったが、この地域での大規模な部隊展開、もしくは永続的な部隊展開はできていない可能性が高い。6月9日公開の撮影地点特定可能な動画に、ロシア軍歩兵がロシア領とスーミ州の間の国境を越えて、[ウクライナ領の]リジウカ[Ryzhivka](スーミ州とクルスク州の間の国境に隣接)に進入する様子が示されており、この歩兵部隊はウクライナ領内に全体で 730メートルほど進入した。チェチェン共和国首長ラムザン・カディロフは、チェチェンの「アフマト・チェチェン」連隊隷下部隊がこの侵攻に参加し、リジウカという集落全体を制圧したと主張した。しかし、ロシア軍がリジウカの北東部区画を越えて行動していることを裏付ける映像・画像を、ISWは確認していない。ウクライナ軍北部作戦司令部報道官ヴァディム・ミシンクは6月10日の発表で、この国境地域でチェチェン部隊が活動していることを、ウクライナ軍が冬以降ずっと把握していたことを指摘した。ミシンクによると、襲撃を仕掛けてきたチェチェン部隊は小規模の破壊工作・偵察任務グループであるとのことで、リジウカは国境に隣接しているため、双方の勢力が相争う「グレーゾーン」になっているとのことだ。ウクライナのウォロディミル・ゼレンシキー大統領は、ロシア軍がリジウカで「プロパガンダ作戦」を行ったと非難したうえで、ウクライナ軍がこの集落内のロシア軍の存在を排除したと述べた。ロシア軍事ブロガーの一部はカディロフの主張を増幅して伝えたが、この侵攻を「小規模襲撃[raid]」と表現した軍事ブロガーもいれば、ロシア軍がこの村落を実際に掌握したという話を否定した軍事ブロガーもいる。ロシア軍事ブロガー・アカウントの一つは、リジウカはクルスク州にあるロシア・ウクライナ国境沿いの集落テトキノ[Tetkino]とつながっている集落であって、開戦前、この両集落の住民は、お互いの集落を自由に行き来していたことを指摘した。ISWは以前から、スーミ州の国境付近で小規模なロシア軍地上攻撃があったという報告を確認しており、現状入手できる情報は、6月9日の限定的な侵入が、以前行われた限定的越境侵入と同類のものであることを示唆している。
報告書原文の日本語訳箇所(英文)