【抄訳】ISW ロシアによる攻勢戦役評価 1600 ET 20.10.2023 “ロシア軍アウジーウカ攻勢＋ウクライナ軍ドニプロ渡河”
本記事は、戦争研究所（ISW）の2023年10月20日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。なお、この記事で用いた地図は、ISW制作地図（インタラクティヴ・マップ含む）とGoogle Mapsの画像である。ただし、一部、加工してある。また、本記事サムネイル画像は、ウクライナ軍参謀本部のFacebook投稿写真を使用した。
ロシア軍のアウジーウカ攻勢
Russian forces launched a renewed offensive push near Avdiivka on October 20 and marginally advanced, indicating that the Russian military command remains committed to offensive operations in the area despite heavy materiel and personnel losses. Geolocated footage published on October 20 shows that Russian forces secured minor advances west of Krasnohorivka (5km north of Avdiivka). Russian milbloggers and a Ukrainian military observer claimed that Russian forces captured a Ukrainian stronghold near the waste heap just northeast of Avdiivka, advanced to a rail station north of Avdiivka, and advanced near the “Tsarska Okhota” restaurant south of Avdiivka. One prominent Russian milblogger claimed that Russian forces unsuccessfully attacked near Sieverne (6km west of Avdiivka), south of Avdiivka, near Stepove (8km northwest of Avdiivka), and near Novokalynove (11km northwest of Avdiivka), however. Other milbloggers claimed that Russian forces advanced up to one kilometer on the Stepove-Berdychi line (8-10km northwest of Avdiivka) on October 19 and that fighting is ongoing near Berdychi on October 20. The Ukrainian General Staff reported that Ukrainian forces repelled Russian attacks near Avdiivka, Novokalynove, Stepove, Pervomaiske (11km southwest of Avdiivka), and Sieverne.
The Ukrainian General Staff reported on October 20 that Ukrainian forces damaged and destroyed almost 50 Russian tanks and over 100 armored vehicles during the past day of fighting near Avdiivka. Ukrainian soldiers operating in the Avdiivka area reported on October 20 that Ukrainian forces have destroyed 200 Russian armored vehicles in the past four days. Avdiivka City Military Administration Head Vitaliy Barabash stated that Russian forces are attempting to repair damaged equipment while still in the field. Footage published on October 20 shows Ukrainian forces striking a Russian TOS-1 thermobaric artillery system near Avdiivka. A Russian milblogger complained that Russian counterbattery fire near Avdiivka is decreasing in effectiveness due to poor communication and the failure to stockpile munitions ahead of the offensive effort, very likely exacerbating material losses in the area. The initial Russian offensive operations in the Avdiivka area on October 10 also resulted in high verified Russian equipment losses, and the fact that Russian forces regrouped and re-launched assaults after the initial attacks suggests that either Russian forces believe they can feasibly take Avdiivka, or that the Russian military command is poorly prioritizing offensive operations regardless of cost.
日本語訳：
ロシア軍は10月20日、アウジーウカ周辺での攻勢進撃を再開し、わずかに前進した。この動きが示しているのは、ロシア軍統帥部が、物資・兵員双方の甚大な損失にも関わらず、この地区での攻勢作戦への熱心な取り組みを続けているということだ。10月20日公開の動画で、撮影地点の特定が可能なものに、クラスノホリウカ（アウジーウカ北方５km）西方でわずかに進撃できたロシア軍が映っている。複数のロシア軍事ブロガーとウクライナ人軍事ウォッチャーの一人の主張によると、ロシア軍は、アウジーウカ北東すぐの地点にある石炭屑集積場付近のウクライナ軍拠点を占領し、アウジーウカ北方の鉄道駅へと進み、アウジーウカ南方では料理店「ツァールスカ・オホタ」付近で前進したとのことだ。一方で、有名なあるロシア軍事ブロガーの主張によると、ロシア軍は、シェヴェルネ（アウジーウカ西方６km）付近、アウジーウカ南方、ステポヴェ（アウジーウカ北西８km）付近、ノヴォカリノヴェ（アウジーウカ北西11km）付近で攻撃を仕掛けたが、失敗に終わったとのことだ。ほかの軍事ブロガーは、ロシア軍が10月19日、ステポヴェ〜ベルディチ線（アウジーウカ北西８〜10km）で最大で１km前進したと主張し、ベルディチでの戦闘は10月20日も続いていると述べた。ウクライナ軍参謀本部は、ウクライナ軍がアウジーウカ付近、ノヴォカリノヴェ付近、ステポヴェ付近、ペルヴォマイシケ（アウジーウカ南西11km）付近、シェヴェルネ付近でのロシア軍の攻撃を撃退したと報告している。
② ベルディチ
③ ステポヴェ
④ クラスノホリウカ
⑤ シェヴェルネ
⑥ ペルヴォマイシケ
（アウジーウカ周辺の集落）
ウクライナ参謀本部の10月20日付報告によると、アウジーウカ付近での昨日の戦闘において、ウクライナ軍はロシア軍の戦車約50両、装甲車両100両以上に損傷を与え、破壊したとのことだ。アウジーウカ地区で任務についているウクライナ軍兵士は10月20日に、過去４日間でウクライナ軍が200両のロシア軍装甲車両を破壊したと伝えた。アウジーウカ市軍政当局の長であるウィタリー・バラバシは、ロシア軍が損傷した装備を、それがまだ戦場にあるときに修理しようと試みていると述べた。あるロシア軍事ブロガーは、アウジーウカ付近でのロシア軍対砲兵射撃の効果が、貧弱な通信連絡と攻勢遂行前に弾薬備蓄ができていなかったことによって低下しており、そのことがほぼ間違いなくこの地区での物資的損失を悪化させていると、不平不満を述べた。10月10日からのロシア軍アウジーウカ攻勢第一期は、確認されただけでも多くのロシア軍装備損失を生む結果に終わった。そして、このような初期攻撃に続いて攻撃を再開することは、ロシア軍がアウジーウカを奪取できる見込みがあると信じているか、ロシア軍統帥部が犠牲を度外視しても攻勢作戦を優先するという不適切な優先順位づけを行っているかのいずれかを示している。
ウクライナ軍のドニプロ渡河
Ukrainian forces continued larger-than-usual ground operations on the east (left) bank of Kherson Oblast on October 20 and established a confirmed presence in a settlement on the east bank. Geolocated footage published on October 19 indicates that Ukrainian forces advanced into northeastern Krynky (27km east from Kherson City and 2km from the Dnipro River). Russian milbloggers claimed that Ukrainian forces are establishing a foothold near Krynky and continue to maintain their presence near the Antonivsky roadway and railway bridges. A prominent Russian milblogger claimed that Ukrainian forces temporarily advanced further into Krynky up to the Kozachi Laheri-Krynky-Korsunka road before Russian airstrikes pushed Ukrainian troops back to the northern outskirts of the settlement. Another Russian milblogger claimed that fighting is ongoing near Pishchanivka (14km east from Kherson City and 4km from the Dnipro River) and that a Ukrainian sabotage and reconnaissance group is operating on the southern outskirts of the settlement. The prominent Russian milblogger suggested that Russian forces only maintained positions on the southern outskirts of Pishchanivka as of the afternoon of October 18, and the Ukrainian General Staff reported on October 19 that Russian aviation struck Pishchanivka, implying that Ukrainian forces were still operating in the settlement. ISW has not observed any other visual confirmation of Ukrainian forces maintaining positions in east bank settlements other than Krynky, however.
日本語訳：
10月20日、ウクライナ軍はヘルソン州東岸（左岸）での通常よりも大規模な地上作戦を継続し、東岸の一集落において、部隊展開を確立したことが確認されている。10月19日公開の動画で、撮影地点の特定が可能なものによって、ウクライナ軍がクリンキ（ヘルソン市東方27km、ドニプロ川から２km）の北東区画内へと進入したことが分かる。複数のロシア軍事ブロガーの主張によると、ウクライナ軍はクリンキ付近で足場を確立しつつあり、アントニウシキー道路・鉄道橋付近においても部隊展開を維持し続けているとのことだ。ある有名なロシア軍事ブロガーは、ウクライナ軍がクリンキ内へ進入し、コザチ・ラヘリ〜クリンキ〜コルスンカ道路にまで進んだが、その後、ロシア軍の空襲を受け、ウクライナ軍部隊はクリンキ北端まで押し戻されたと主張した。別のロシア軍事ブロガーは、ピシチャニウカ（ヘルソン市東方14km、ドニプロ川から４km）付近で戦闘が続いており、ウクライナ軍破壊工作・偵察グループ１個がこの集落の南端で行動中であると主張した。上述のロシアの有名軍事ブロガーは、ロシア軍が10月18日正午時点で、ピシチャニウカ南端陣地のみを維持していると憶測している。そして、ウクライナ軍参謀本部は10月19日にピシチャニウカへのロシア軍航空機による攻撃を報告している。このことから、ウクライナ軍が依然としてこの集落内で行動中であったことが分かる。そうではあるが、クリンキを例外として、ISWは東岸集落でウクライナ軍が拠点を維持していることを裏付ける映像を確認できていない。
附記
ロシア・ウクライナ双方の情報筋は、ヘルソン方面ロシア軍の戦闘能力の低さを指摘しています。ウクライナ側情報によると、ヘルソン方面ロシア軍は第49CAA（諸兵科連合軍）と新設の第18CAAがその中心であるとのことです。第49CAA隷下部隊の一部は、すでに相当な損失を被っていることが伝えられています。また、第18CAAはヘルソン方面にもともといた部隊の寄せ集めであり、基準を満たす戦力を保持して可能性は低いと英国国防省は判断しています。
なお、第18CAAに関する英国国防省の評価分析（2023年８月21日）の日本語訳を、拙訳ではありますが、以下のリンク先で読むことができます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか？