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【SNS投稿和訳】ウクライナにとってのゲーム・チェンジャー的兵器が存在しない理由(by Franz-Stefan Gady)

国際戦略研究所(IISS)のフランツ=ステファン・ガディ氏が、自身の記事(Franz-Stefan Gady, “Why There Are No Game-Changing Weapons for Ukraine”, Foreign Policy, 14.09.2023)の要点をまとめたものを、X( 旧Twitter)に投稿しています。

西側諸国のウクライナへの兵器供与に関する問題が、簡潔にまとめられている投稿です。以下、ガディ氏の投稿を日本語に翻訳していきます。


ガディ氏のX投稿の日本語訳:

フォーリン・ポリシーへの私の最新記事に関して。ウクライナが領土を解放することにドイツが真摯な姿勢であるならば、ドイツはタウルス巡航ミサイルを供与すべきだ。

しかし、タウルスが成し遂げられることに関しては、かなりの程度のリアリズムをもつことが必要とされる。

ウクライナの継戦に必要なものを、ウクライナが確実に入手できるようにしながら、ゲーム・チェンジャー的兵器についての言説を葬り、個々の兵器に何ができ、何ができないのかについて、もっと現実的な理解をもつべき時期が来ている。

ゲーム・チェンジャー的兵器という思考が誤りであり、危険でもある理由は、あまたに存在する。一つあげれば、この考えは西側政府による長期的な軍事支援を損なう危険がある。なぜなら、ある特定の兵器に寄せる西側の期待感が、満たされることはないからだ。

タウルス(と供与の流れにあるかもしれないATACMS)が、戦場でよりいっそう限定的なインパクトしか与えられない可能性は高く、それには主な理由が2つある。まず、ウクライナ軍はすでに同様の兵器システムをすでに供与されていることがその理由だ。

新たな巡航ミサイルが加われば、その結果、ウクライナ軍の兵器庫は補充されることになるだろうが、ロシア軍が適応する必要が生じるような重大な能力が、新たに与えられるわけではない。

2点目。この夏の現地調査の間に感じたことだが、縦深戦闘作戦が達成可能なことに関して、多くの戦争観察者が根本的に誤った理解をしている可能性がある。

要するに、戦線後方のロシア軍のシステムを組織的に解体することを目的とした縦深戦闘作戦の実施、そこには補給線の遮断も含まれるが、それは評論家たちが思っている以上に、かなり難しいものだということだ。

使用可能なミサイルとロシア側の適応を考えると、ロシア側後方地域への長距離ミサイル攻撃が成し遂げられることへの期待感は、実際に可能だと考えられることと比べて、過大すぎる。

新たに精密誘導ミサイルが加わるからといって、戦争遂行に突如、破壊的なインパクトが生じることを、私たちは期待すべきではない。たとえそれがもっと強力な弾頭をもち、ATACMSのようにずっと射程が長いものであったとしてもだ。

そうではなくて、このような兵器システムは、ウクライナがロシアの戦争遂行能力をゆっくりと消耗させていく一助となる追加アセットになるだろう。タウルス巡航ミサイルやATACMSが戦場でのゲーム・チェンジャーとなる可能性が低いのは事実だが、その事実がこれらの兵器を供与するべきではないことを意味するものではない。

反対に、ウクライナの精密誘導攻撃能力を持続させるための西側の支援は、ウクライナ軍の消耗戦略全般における重要要素だ。

ウクライナはドイツとアメリカのミサイルを必要としているが、その一方で極めて重要なのは、個々の兵器がこの戦争において達成できることとできないことに関する、もっと丁寧な議論だ。

特定の兵器を使うことによる、または西側の縦深戦闘ドクトリンを用いることによる勝利への近道は存在しない。これが苦い真実なのだ。

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