本記事は、戦争研究所(ISW)の2024年4月29日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。
ウクライナ東部アウジーウカ方面戦況+ロシア軍の今後の前進方向
報告書原文からの引用(英文)
日本語訳
4月29日の時点でロシア軍はアウジーウカ[Avdiivka]から北西と南西の地点において、わずかではあるが戦術レベルでのさらなる戦果を確実に得ているが、直近の24時間でアウジーウカ方面において大々的な前進はできていない。4月28日と29日に公開された撮影地点特定可能な動画によって、オチェレティネ[Ocheretyne](アウジーウカから北西の地点)という集落内の西部と北東部、オチェレティネ郊外北西部に向かう鉄道線沿い、ネタイロヴェ[Netaylove](アウジーウカから南西の地点)のそれぞれにおいて、ロシア軍が前進したことが分かる。ロシア軍はまた、オチェレティネから北西の地点でノヴォオレクサンドリウカ[Novooleksandrivka]に向かって、幅1.2km、縦深1.7kmの範囲で前進したと、複数のロシア軍事ブロガーが主張している。あるロシア軍事ブロガーの主張によると、ロシア軍はC051801道路の西方、ネタイロヴェとウマンシケ[Umanske](アウジーウカ西方の地点)の間に位置する地点において、400~450メートル前進したとのことだ。ただし、これらのロシア軍前進の主張を映像・画像で裏付ける情報を、ISWは今のところ確認できていない。4月28日にウクライナ軍総司令官オレクサンドル・シルシキー大将[旧上級大将]がウクライナ軍のセメニウカ[Semenivka](アウジーウカ西方の地点)撤退を発表したことに続いて、ロシア国防省はロシア軍が同集落を制圧したことを発表した。ロシア軍事ブロガーの主張によると、ベルディチ[Berdychi](アウジーウカ西方の地点)とオチェレティネでロシア軍は掃討作戦を遂行しているところで、ノヴォカリノヴェ[Novokalynove]とケラミク[Keramik](両方ともアウジーウカから北西方向、オチェレティネの東方に位置する)においても同様に掃討作戦が行われているとのことだ。また、戦闘が続いたのは、次に示す場所である。アウジーウカから北西の方向の、カリノヴェ[Kalynove]付近、アルハンヘリシケ[Arkhanhelske]付近、ノヴォバフムティウカ[Novobakhmutivka]付近、ソロヴョヴェ[Solovyove]付近、ソキル[Sokil]付近、ノヴォポクロウシケ[Novopokrovske]付近、ノヴォセリウカ・ペルシャ[Novoselivka Persha]付近。アウジーウカから西の方向の、オルリウカ[Orlivka]付近とウマンシケ付近。
[※支配地域評価の詳細は、以下のISW制作インタラクティブ地図を参照]
ロシア軍は今後、アウジーウカ周辺から攻勢進撃を行うに際して、戦術的攻勢方向を複数の選択肢のなかから選ぶことができるという好機を有している。しかし、ロシア軍が近い将来の攻勢に関してどの地点に重点を置くかは、今のところ、はっきりとしていない。ロシア軍がアウジーウカから北西の方向において追及する可能性のある目標に関して、ロシア軍事ブロガーたちが憶測を巡らしている。一部の有名な軍事ブロガーの主張によると、ロシア軍はアルハンヘリシケへ向かって進む目的で、ケラミク周辺で攻勢作戦を遂行しているが、その一方で、ソキルへ向かってオチェレティネから西へ、また、ノヴォポクロウシケ~ノヴォセリウカ・ペルシャ線に向かってオチェレティネから南西へと進もうともしているとのことだ。ロシア軍の前進方向に関して、ISWは引き続き次のように考えている。ロシア軍がアウジーウカから北西の方向の突出部を引き続き安定的に保持しているという情勢は、伝えられているポクロウシクという作戦目標に向かってロシア軍が西進を続ける、もしくは、北方への前進を試みて、チャシウ・ヤール付近の取り組みとおそらく呼応するかたちで攻勢を遂行するという二つの選択肢から一つを選ぶことができる状況を、ロシア軍統帥部に提示している。