本記事は、戦争研究所(ISW)の2024年3月2日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。
[*記事サムネイル画像:ウクライナ空軍のテレグラム投稿より]
損失が続くなか、活動を低下させないロシア空軍
報告書原文の引用(英文)
日本語訳
ロシア軍は、ウクライナ東部において、おそらくはアウジーウカ〜ドネツィク線沿いで戦術的戦果をあげることを求めるために、継続的な航空機損失のリスクを厭わないでいる模様だ。3月2日にウクライナ空軍は、同国東部にあるウクライナ側陣地に対して誘導爆弾による爆撃を行っていたSu-34航空機1機を、3月1日朝に撃墜したと報告した。この報告に続いて、ウクライナ空軍司令官ミコラ・オレシュチク中将は、ウクライナ軍がさらに2機のSu-34と1機のSu-35を撃墜しようと試み、結果として、1機のSu-34の撃墜に成功したと述べた。ウクライナ軍当局者は、同軍が2月17日以降、15機のロシア軍機を撃墜していることを伝えている。ウクライナ空軍報道官ユーリ・イフナト大佐によると、2月23日のA-50長距離レーダー搭載警戒機1機の墜落に続く6日間、ロシア軍はアゾフ海上空にA-50を展開させていなかったとのことだ。そして、A-50の不在の結果、ロシア軍のSu-34とSu-35航空機が、爆撃を実行するために、攻撃目標により近づいて飛行せざるを得なくなっていることを、イフナト報道官はほのめかした。過去、ロシア軍機の損失があった際、そのことはウクライナ全域での航空活動をロシア軍が一時的に減少させることを促した。ロシア軍が、アウジーウカ占領戦の最後の数日間、限定的かつ局地的な航空優勢の確立に一時的とはいえ成功したと、ISWは判断評価している。このような限定的かつ局地的な航空優勢の再確立を、ロシア軍が現在、試みている可能性は高く、その目的はアウジーウカ方面におけるロシア軍の戦術レベルの前進を支援することにある。また、攻勢作戦への航空支援の継続は、さらに航空機を失うリスクを上回るという判断をロシア軍がし続けている可能性も高い。2週間程度の期間に、15機と伝えられている数の航空機を損失し、高度な訓練を受けたパイロットもおそらく失ったことは、ロシア軍にとって軽視できるものではないと、ISWは引き続き評価している。それは、ロシア軍が保有する各種スホーイ航空機は、おそらく300機ほどだと考えられるからだ。