【SNS英文投稿和訳】ウクライナ戦況:ドネツィク州南部 2024.10.27(フィンランド人OSINTアナリスト John Helin氏)
上記のリンク先から始まるXの連続投稿(日本時間2024年10月28日06:07投稿)は、ウクライナ領ドネツィク州南部方面の戦況評価分析です。投稿者のジョン・ヘリン氏はフィンランドのOSINT分析チーム「ブラック・バード・グループ」の一員として、ロシア・ウクライナ戦争に関する分析を発信されている方です。
以下は、ヘリン氏のこのX連続投稿の日本語訳になります。なお、当翻訳記事中の画像は、ヘリン氏のX投稿に添付されているものを転載して使用しています。
日本語訳
情勢報告:ドネツィク州南部
この週[*注:10/20~10/26]の初めにセリドヴェ[Selydove]とヒルニク[Nirnyk]を突破したのち、ロシア軍は金曜日からヴフレダル[Vuhledar]方面で攻勢作戦を開始した。
ここでの進展をみると、ドネツィク州南部戦線はかなり厳しくなっている。
ヴフレダル戦線:
金曜日にロシア軍はシャフタルシケ[Shakhtarske]とボホヤウレンカ[Bohoyavlenka]に向かう大規模な攻撃を開始した。
ロシア軍は迅速に占領地を広げ、シャフタルシケに向かって7kmほど前進した。
ここでの攻撃は大規模な砲撃と空爆によって支援されている。
ボホヤウレンカにおいてロシア軍は、金曜日までに苦戦しつつもこの町から3kmの範囲内まで進出した。
最初の攻撃は撃退された可能性が高いが、ボホヤウレンカからの動画とシャフタルシケからのレポートによって、ロシア軍がこの二つの集落に強力な足場を築いていることが分かる。
シャフラルシケとボホヤウレンカでの成功に加えて、ウクライナ軍事ブロガーの一部の主張によると、ロシアはノヴォウクラインカ[Novoukrainka]内に進入したとのことだ。
ウクライナが30km幅で連携のとれた撤退を行っているか、この地域における最初の防衛線が事実上、崩壊しつつあるのかのいずれかだ。
ドネツィク州の南側の側面は、その大部分がTDF[ウクライナ領土防衛隊]の部隊によって守られていた。そして、正規軍旅団のほとんどはほかの地域に移っている。
戦線上でウクライナ軍が防御を薄くせざるを得ない地区を見つけて、奇襲的に圧力をかけて戦果をあげることを、ロシア軍は続けている。
一方、この状況によって、ウクライナ軍はすり減りつつある予備戦力を用いた、場当たり的な"もぐら叩き"をさせられている。同軍は乏しい予備戦力を、戦線上のある問題地点から別の問題地点へと移動させられているのだ。
このことが原因で、ウクライナ軍はまたもや戦線上で少なくとも2箇所の明らかに問題をある地点を抱えることになっている。そこに3つ目としてクプヤンシク[Kupyansk]が加わっているのはほぼ間違いない。
とはいえ、破局について語るには早すぎる。これらの集落の後方には、さらに別の防御陣地線が存在しており、戦闘は今でも続いている。
だが、ロシア軍は予備戦力を集めており、もしロシア軍がさらなる突破をした場合、問題はよりいっそう大きくなるだろう。
ここの情勢に関しては、まもなくもっと多くのことが分かるようになる。
セリドヴェ:
さて、別の問題地域に話を移そう。ロシア軍はセリドヴェ[Selydove]という町の大部分を占領しており、報告によると、ヒルニク[Hyrnyk]という町も同様に、そのほとんどがロシア側の手に落ちているとのことだ。
現在、戦闘はクラヒウカ[Kurakhivka]へと移行している。ここは狭い突出部の一番底側に位置している。
ロシア軍はまた、ノヴォドミトリウカ[Novodmytrivka]に向かって西進を続けている。これとあわせて、クレミンナ・バルカ[Kreminna Balka]とノヴォセリディウカ[Novoselydivka]に向かう動きも報告されている。
さらに心配なことに、ロシア軍がヒルニクから南西方向の地点に展開し、そこから南進していることを、ウクライナ軍が指摘している。
セリドヴェ自体に関して、ロシア軍はヴィシュノエ[Vyshnoe][*注:Vyshneveのことか?]をすでに占領しており、そこの道路を完全に封鎖している。セリディウカ[Selydivka]南部[*注:セリドヴェ南部のことか?]のほとんどがロシア軍支配下にある可能性は高い。
セリディウカ北西部[*注:セリドヴェ北西部のことか?]にウクライナ軍拠点が残っている可能性は高いが、まもなく撤退せざるを得なくなるだろう。
今後の進展分析:
現時点でウクライナ軍が作戦レベルで崩壊しつつあるわけではない。この文章を書いている時点で、ロシア軍は作戦レベルでの突破を成し遂げられていない。
だが、長期的にみて、ドネツィク州南部の広い地域におけるリスクは継続している。
ロシア軍が今後、セリドヴェ周辺とヴフレダル周辺での戦果を固め、それを活かしていこうと試みていく可能性は高い。
ロシア軍はセリドヴェから進むことで、ウクライナ軍防衛線の後方へと回り込むことを試み、N15高速道路の遮断と、それと伴うかたちでクラホヴェ[Kurakhove]につながる主要補給路の遮断を、最終的に目指すことになるだろう。
ヴフレダルから出発して、ロシア軍はウクライナ軍防衛線を突き抜けて進撃しようと試み、南側からN15に接近することを試みて、クラホヴェ周辺に突出部を形成しようとするだろう。
ロシア軍はまた、ヴェリカ・ノヴォシルカ[Velyka Novosilka]の後方に向けて、西方に転回することも試みるだろう。
これらの試みと並行して、ロシア軍が東側の側面に対する圧力を維持する可能性も高い。この圧力は、形成される突出部の端にウクライナ軍を引き付けておくための牽制攻撃となる可能性がかなり高く、ロシア軍がこの箇所でもゆっくりとした前進を続けていく可能性は高い。
これまでのところ、ロシア軍は戦術的な成功を作戦的な成功に変えていくことができていない。それゆえ、上述地域における展開のさらなる広がりは、秋の後半から冬にかけて目に見えるようになる可能性が高い。
ウクライナ軍がここに増援戦力を移していくと、ロシア軍はほかの地区での圧力を増していくだろう。
だが一方で私は、消耗戦における「徐々に、そして突然に[破局を迎える]」ということに関して、考え続けている。
ウクライナ側の募兵活動は当初、うまくいったが、それ以降は芳しくない。そして、ウクライナは消耗した部隊で火消をしようとし続けている。
とくにTDF部隊にいえることだが、軽装備で指揮レベルの低い部隊が、ロシア軍の攻撃の矢面に立たされたあげく、その圧力に屈する状況が、継続的に目撃されている。
シャフタルシケでロシア軍は一気に7km前進した。
このような戦果が作戦レベルの成功に変わる前に、あと何回のシャフタルシケが必要になるのだろうか?
他方でロシア軍も、募兵活動と経済に関して全般的な問題を抱えている。
戦術的戦果を拡張していくための投入可能な機械化予備戦力が十分に存在することはまれである。しかし、敵軍を十分に消耗させていれば、小規模な戦力でさえ、かなりの前進が可能である。
何にせよ、セリドヴェ及びヒルニクの陥落に、ヴフレダル戦線での最近の進撃が加わったことは、ドネツィク州南部に展開するウクライナ軍の状況が悪化していることを意味している。
戦線全体にのしかかるロシア軍の圧力を払いのけるための確固とした答えを、ウクライナは依然として見いだせていない。
何度も繰り返すことになりますが、ブラック・バード・グループで仕事できるのは、ジェニー&アンッティ・ウィフーリ財団と財団からの助成金のおかげであり、それによって、パシ・パロイネン[*注:OSINTアナリスト・フィンランド軍予備役将校]の雇用と業務の全般的な運営ができています。
私たち制作の地図は常に更新されており、以下リンクからアクセスできます。