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【報告抄訳】ISW ロシアによる攻勢戦役評価 1915 ET 23.07.2023 “ルハンシク方面でのロシア軍の反撃”

※以下は、戦争研究所(ISW)の7月23日付ウクライナ情勢報告から添付文書画像の部分を日本語に訳したものです。ルハンシク方面でロシア軍の行動が活性化するなか、ロシア側情報筋は、ロシア軍がジェレベツ川を西に渡ったと主張しています。しかし、このようなロシア側情報は誇張されている可能性があると、ISWは分析しています。

https://www.understandingwar.org/sites/default/files/Russian%20Offensive%20Campaign%20Assessment%2C%20July%2023%2C%202023%20%28PDF%29.pdf

ロシア軍は7月23日、スヴァトヴェ〜クレミンナ線沿いで攻勢作戦を続け、各種情報によると、スヴァトヴェの南西で戦術的に重要な戦果をあげたとのことだ。ウクライナ軍参謀本部は、ロシア軍はルハンシク州のナディヤ(スヴァトヴェ西方15km)、ドネツィク州のトルシケ(クレミンナ西方16km)、フリホリウカ(クレミンナ南方11km)の各周辺で攻勢作戦を行ったが、失敗に終わったと伝えた。ロシア軍事ブロガーの一人は、ロシア軍がクレミンナの南にあるセレブリャンシケ森林地帯内、ネヴシケ(クレミンナ北西18km)周辺、マキイーウカ(クレミンナ北西23km)周辺で攻撃を仕掛けたが、成功しなかったと主張した。複数のロシア軍事ブロガーが、カルマジニウカ(スヴァトヴェ南西12km)西方でのロシア軍のジェレベツ川渡河を主張し、ロシア軍がノヴォイェホリウカ(スヴァトヴェ南西15km)へ向かってジェレベツ川西岸(右岸)でさらに前進したと主張した。軍事ブロガーの一人は、ロシア軍がカルマジニウカの西で最大4km西方へ進んだと主張しているが、ISWはこの地域における最近のロシア軍前進を示す映像証拠を目撃していない。別の軍事ブロガーの主張によると、第21自動車化狙撃旅団(中央軍管区第2諸兵科連合軍隷下)が最近のロシア軍進撃を担っており、第15自動車化狙撃旅団(中央軍管区第2諸兵科連合軍隷下)と第74自動車化狙撃旅団(中央軍管区第41諸兵科連合軍隷下)からの諸部隊もこの地域での攻勢作戦に参加しているとのことだ。

ロシア側情報筋の主張によると、ウクライナ軍は7月23日にスヴァトヴェ〜クレミンナ線沿いで地上攻撃を行ったが、何ら成果をあげることができなかったとのことだ。ロシア国防省は、ロシア軍中央部隊集団に所属する部隊が、ノヴォヴォディアネ(スヴァトヴェ南西16km)周辺とカルマジニウカ周辺で6回のウクライナ軍攻撃を撃退し、クレミンナ地区で4回のウクライナ軍攻撃を撃退したと主張した。それに加えて、クレミンナ南方のドネツィク州ビロホリウカ(クレミンナ南方30km)付近で複数のウクライナ軍攻撃を撃退したとも主張した。ロシア軍事ブロガーの一人は、ウクライナ軍がセレブリャンシケ森林地帯、ネヴシケ、トルシケ、ディブロヴァ(クレミンナ南西5km)の各周辺で攻勢に出たが、不成功に終わったと主張した。

ロシア軍があげた戦果と、クプヤンシク〜スヴァトヴェ〜クレミンナ線沿いでのウクライナ軍攻勢行動について、ロシア側情報筋は誇大に表現している可能性がある。その意図は、現在進行中のウクライナ軍反攻作戦を失敗として描き出すことにある。クプヤンシク北東、スヴァトヴェ南西、クレミンナ西方でのロシア軍進撃に関する最近のロシア側主張を、ISWは認識してはいるが、事実を裏付ける映像資料がこれらの主張に伴っていない。ロシア側情報筋はかつて、ロシア軍のトルシケ付近への進撃を主張するために、7月8日に古い動画を誇張して流したが、この主張を裏付ける、実際の状況を示した映像をISWは確認できなかった。英国国防省は7月23日付報告のなかで、ロシア軍はルハンシク・ハルキウ両州であげたわずかな戦果を、重要な戦術的前進として意図的に描き出そうと試みていると報告している。ロシア国防省とごく一部の軍事ブロガーはここ数週間、クレミンナ〜スヴァトヴェ線沿いにおける広範なウクライナ軍反攻行動を主張している。ルハンシク州でウクライナ軍が目立った攻勢的行動をとると、それがロシア軍事ブロガーのなかで大きな議論を招くことになる可能性は高いのだが、一方でISWはそのような出来事を確認できずにいる。また、この地域でロシア軍が相当な戦果をあげたのならば、それに伴う撮影場所が分かる動画やその他裏付け資料が生じるはずだろうが、そのようなものもISWは入手、確認できていない。

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