Russian Offensive Campaign Assessment, July 14, 2024, ISW ⬇️
ロシア軍、戦力充足完了前の部隊を戦闘に投入か?
◆ 戦争研究所(ISW)報告書の一部日本語訳
ロシア軍統帥部がもともとは作戦予備として行動させる予定でいた装備不足の部隊を、戦闘任務に投入した可能性があり、その理由として、ロシアの国防産業基盤(DIB)の能力の限界、あるいは、ウクライナで現在進行中のじりじりとした消耗の激しいロシア軍の地上攻撃を増強する取り組みといったことが考えられうる。ウクライナ人軍事ウォッチャーであるコスチャンティン・マショヴェツの7月13日の投稿によると、ロシア軍統帥部は第27自動車化狙撃師団(中央軍管区第2諸兵科連合軍所属)を中央部隊集団(現在、アウジーウカ[Avdiivka]方面及びトレツィク[Toretsk]方面のロシア軍攻勢作戦を統制している指揮機構)の作戦予備として編成する予定であるとのことだ。また、マショヴェツは、同師団が、アウジーウカ方面でウクライナ側の反撃が進展する場合に、もしくは、トレツィク方面でロシア軍が攻勢を行う場合に戦闘投入される可能性があると述べた。だが、ロシア軍統帥部は、第21自動車化狙撃旅団の戦力低下した残存将兵からなる第27自動車化狙撃師団第433自動車化狙撃連隊を、戦闘能力が完全に回復する前に、アウジーウカから北西の地点に投入したことを、マショヴェツは指摘した。さらにマショヴェツは、ロシア軍統帥部が第506及び第589自動車化狙撃連隊を、「計画された条件」を満たす前にスケジュールを前倒して、トレツィク方面に投入したことも指摘した。2024年3月にマショヴェツは、ロシア軍統帥部が第27自動車化狙撃師団隷下の各部隊用の兵器と装備を、ドクトリンに規定された必要数量の最大87%分装備させることしか計画していないと述べ、それに加えて、ロシア軍統帥部が第433・第506・第598自動車化狙撃連隊を、2024年晩春か初夏までに戦闘投入可能な状態にする計画だと述べている。第27自動車化狙撃師団隷下部隊がアウジーウカ周辺で作戦行動中であるという報告にISW[戦争研究所]が初めて接したのは2024年4月であり、その後、トレツィク周辺で行動中との報告に2024年7月上旬であるが初めて接した。これらの連隊が予定よりも早く戦闘投入されているというマショヴェツが7月14日に示した見解は、ロシア軍統帥部が人員充足・武装供給スケジュール計画を予定通りに進められておらず、目標値の最大87%まで部隊を装備させることに失敗したことを示唆している可能性がある。ロシアが継続して進めている戦力造成の取り組みは、すぐに前線に投入して使うことはできないけれども、作戦予備を段階的に構築する目的で、わずかな数の追加戦力をつくり出しつつあるという評価分析を、ISWは以前に示した。だが、ロシアのDIBがロシア軍予備兵力を完全に支えられる可能性は低いという評価も、ISWは以前に示した。なお、ロシア軍統帥部が、ウクライナ東部で進行中のじりじりとした消耗の激しい地上攻撃を強化する目的で、これらの部隊の早期投入を行った可能性もある。
◆ 報告書原文の日本語訳箇所(英文)
◆ 戦争研究所が参照しているマショヴェツ氏のテレグラム投稿(一部)