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【内容紹介】ISW ロシアによる攻勢戦役評価 1835 ET 29.12.2023 “評価分析:2023年12月29日のロシア軍大規模空襲”

ウクライナ現地時間の2023年12月29日朝、ロシア軍は全面侵略開始以降で最大規模となるウクライナ領内へのミサイル・ドローン攻撃を実施しました。戦争研究所(ISW)は、12月29日付ウクライナ情勢報告において、このロシアの大規模な空爆パッケージに関する評価分析を行っています。以下、その内容をみていきます。

まず、攻撃の内容ですが、ウクライナ軍関係の各種情報源によると、ロシア軍はドローン(シャヘド136/131)36機と各種ミサイル120発を、キーウ・ハルキウ・リヴィウ・ドニプロ・ザポリージャ・オデーサといった都市及びスームィ州・チェルカースィ州・ミコライウ州にある産業施設や軍事施設、また、重要インフラに向けて発射したとのことです。ウクライナ軍参謀本部は、ロシア軍が投じた発射体は160を超えていると報告しており、ウクライナ軍がシャヘド・ドローン27機とミサイル88発(Kh-101、Kh-555、Kh-55)の撃墜に成功したと述べています。また、ロシアとの国境に近いハルキウ市に対して、ロシア軍がS-300対空ミサイルを対地攻撃用で発射したという情報もあります。

さて、この大規模空襲に関するISWの全般的な評価は以下となります。

ロシア軍が12月29日に発動した空爆パッケージは、ここ数カ月間、ロシア軍がドローンとミサイルの様々な組み合わせを検証し、ウクライナ側防衛能力を試してきた取り組みの集大成的結果であるように思われる。

Russian Offensive Campaign Assessment, December 29, 2023, ISW

ここ数カ月間、ロシア軍は昨冬と比較すると小規模なウクライナ領内への空爆を行ってきましたが、これはウクライナ防空網の状況を探る意図であったと考えられます。例えばウクライナ空軍報道官ユーリ・イフナト大佐は、ロシア軍がシャヘド・ドローンを頻繁に用いて、ウクライナ側防空網に探りを入れ、ウクライナ側防空兵器を効果的に迂回する攻撃経路の決定を行っていると指摘しています。

また、ロシアの目的は、ウクライナ人の士気を下げることと、ロシアとの戦争持続的に行うウクライナの能力を低下させることにあり、このような攻撃をロシアは続けていくと、ISWは指摘します。後者に関して、ISWは以下の指摘もしています。

ウクライナはこの1年間、自国の国防産業基盤(DIB)を拡張する努力に集中して取り組んできた。ロシア軍が産業施設を攻撃したことが報じられているが、このことは、さらに長引く戦争遂行を持続的に行っていくために鍵となる能力を、ウクライナが発展できないようにすることを意図している可能性が高い。ウクライナはまた、ウクライナ国内での共同生産に関する西側からの協力も求めており、産業施設へのロシア軍の空爆は、西側支援国及び企業に対して、ウクライナ国内で操業する際の、現下の許容リスク範囲以上のリスクを加えることを意図している可能性が高い。

Russian Offensive Campaign Assessment, December 29, 2023, ISW

現状のロシア側のドローン・ミサイル備蓄量と製造ペースを考えると、ロシア軍が今回のような大規模ミサイル攻撃を定期的に実行できる可能性は低いとISWは評価しています。ただし、ドローンによる攻撃は、継続して行われる可能性が高く、この数少ない大規模空襲と継続的なドローン攻撃というのが、最近のロシア軍のパターンとして示されていると、ISWは指摘しています。

さて、ロシアが今回、このような大規模なミサイル・ドローン攻撃を実施できた背景に、ロシアが戦争遂行のための産業動員に成功していることがあります。この成功は「西側当局者が以前、分析査定したもの以上」だと、ISWは指摘しています。ロシアが西側の想定以上の戦時産業動員に成功した要因の一部に、「ロシアと連携する国々から軍事装備品が調達できていること」と「ロシアが自国資源を軍需生産目的に再分配したこと」があるとも指摘しています。

ロシア軍のウクライナ空爆攻撃の意図はすでに述べましたが、より戦術的な意図として「限られたウクライナ軍防空兵器を前線から引き離して、その場所に拘束する」ことがあるとISWは述べています。ここのところ、前線のウクライナ軍防空能力がロシア軍の航空作戦にとって、かなりの問題になっていた可能性があり、それへの対応としてロシアが12月29日に大規模空襲を行った可能性は高いという評価もISWは示しています。

結局のところ、ウクライナの防空を支える重要要素は、西側からの支援であり、「その支援が終わることがあれば、それはウクライナでのロシア軍の航空活動が拡大する条件を用意することになる可能性が大きい」とISWは述べます。

また最近、ロシア側に停戦交渉の意向があるということが報じられていますが、今回の大規模空襲はそれを行動で否定するものだといえます。

米国のバイデン大統領も、「ウクライナの壊滅」と「ウクライナ国民の従属化」というプーチンの目標は、今まで通り変わっていないと、今回の空襲に関する声明のなかで述べています。

ISWは停戦交渉に関して、以下の評価を示しています。

停戦交渉に関心があるというシグナルをプーチンが裏ルートを通して送っているという報道があったにも関わらず、ウクライナにおけるロシアの目標、それはウクライナ及び西側の全面的屈服に等しいもので、クレムリンから公に向けた発言のなかではっきりと語られているものであるが、それは以前と変わらず同じ目標のままである。

Russian Offensive Campaign Assessment, December 29, 2023, ISW

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