【報告抄訳】ISW ロシアによる攻勢戦役評価 1830 ET 06.08.2023 “ヘルソン〜クリミア間の橋梁へのウクライナ軍攻撃とその影響”
8月6日、ウクライナ軍は、占領下のクリミアと同じく占領下のヘルソン州をつなぐロシア側の極めて重要な地上連絡線(GLOC)上に位置する主要道路橋2本を攻撃した。その結果、ロシア軍は道路輸送路を、比較的短い東側ルートから、比較的長くなる西側ルートに再設定することになった。ヘルソン州占領統治機関の長ウラジミール・サルドは、ウクライナ軍がアラバト砂州とヘニチェシク地区をつないでいるヘニチェシク海峡上の道路橋1本に向けて12発のミサイルを発射し、ロシア軍防空部隊がそのうちの9発を迎撃したという見解を示した。ロシア側情報筋は、この橋が被ったかなりの損傷を写した画像を広め、ウクライナ軍の攻撃によって橋の一区画が部分的に崩落したと主張した。ロシア側情報筋は、ウクライナ軍がチョンハル道路橋を攻撃する動画も広めた。この橋はM-18(ジャンコイ〜メリトポリ)高速道路上にあり、占領下クリミアと占領下ヘルソン州を結んでいる。また、動画には、この橋の両側で攻撃によって生じた軽微な損傷が映っている。クリミア占領当局の長セルゲイ・アクショノフは、ウクライナ軍がこの橋にミサイル2発を発射し、1発がロシア軍防空網をすり抜け、道路橋の路床に被害を与えたという見解を示した。ロシア側情報筋の主張によると、ウクライナ軍はこの両方の橋への攻撃にストームシャドー巡航ミサイルを使ったとのことだが、ISWは現時点で、ロシア軍がストームシャドー巡航ミサイルを迎撃した裏付けを得ることができていない。
チョンハル橋の復旧作業は進行中だとアクショノフは発表し、また、ロシア当局者はすべての交通を、M-17(アルミャンシク〜オレシキー)高速道路とT2202(アルミャンシク〜ノヴァ・カホウカ)高速道路上に位置するアルミャンシクとペレコプの検問所を通るルートに変更する予定であると発表した。クリミア占領当局運輸部局は、M-18高速道路上のジャンコイ検問所を通る交通はすべて閉鎖されているが、ケルチ大橋上の交通とケルチ海峡のフェリー輸送は通常通り利用できていると発表した。7月31日時点において、ロシア連邦保安庁(FSB)はアラバト砂州への民間人の立ち入りを一時禁止にしたが、ロシア当局者はヘニチェシク〜アラバト砂州GLOCの状況に関するコメントを発していないままだ。ヘニチェシク海峡上の橋の損傷は、ロシア軍が軍事輸送をアラバト砂州から、占領下クリミアと占領下ヘルソン州をつなぐ、より長距離なルートである西側ルートに変更せざるを得ないほどのものである可能性が高い。M-17高速道路はアルミャンシクを通ったのち、北へ向かうT2202との分岐点で道が分かれ、M-17はそのまま北西へ向かう。このことは、クリミア〜ヘルソン州間のロシア側交通すべてではないものの、その交通のほとんどが、イシュニ〜アルミャンシク区間20kmの1本の道路か、その隣接地を通る必要に迫られることになることを意味する。これはロシア側GLOCのボトルネックの中心になり、兵站のかなりの混乱、遅延と交通渋滞の可能性増大をもたらすことになる可能性を高くする。ロシア当局者がどれほど迅速にチョンハル橋を復旧できるのかは明らかではなく、ウクライナ軍が7月29日に攻撃したチョンハル鉄道橋をロシア当局者がすでに修復したのかどうかも、同様に明らかではない。ヘニチェシク海峡橋の損傷は、修復の相当の長期化をロシア当局者にもたらすことになる可能性が高い。クリミアから北西へ向かうT2202に沿ったロシア軍GLOC、そのなかでも特にノヴァ・カホウカ南方の主要幹線道路上のルートは、ヘルソン州のドニプロ川を遡った場所にあるウクライナ軍拠点に近く、その多く地点が、ウクライナ側西岸からの砲撃範囲内にある。ロシア軍は運送速度が遅くなり運送効率もよくなくなるチャプリンカ北東の村道を使うことで、この地域においてウクライナ軍から間接射撃されるリスクを軽減できる可能性は高いが、それには兵站支援がより遅くなり、より複雑になるという代償が伴う。
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