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【報告抄訳】ISW ロシアによる攻勢戦役評価 1730 ET 08.08.2023 “ウクライナ軍のドニプロ川東岸への襲撃”

以下は、ISW(戦争研究所)の2023年8月8日付ウクライナ情勢報告の一部(添付した文書画像箇所)を、日本語に訳したものになります。


https://www.understandingwar.org/sites/default/files/Russian%20Offensive%20Campaign%20Assessment%2C%20August%208%2C%202023%20PDF.pdf

ウクライナ軍は限定的なドニプロ川渡河襲撃を実行した模様であり、ヘルソン州東岸(左岸)に上陸した。だが、ウクライナ軍部隊が東岸に恒久的な部隊展開を確立したのかどうかは、依然として不明である。幾人かの軍事ブロガーの8月8日報告によると、ウクライナ軍はそれぞれ6〜7人を運ぶことができるボート最大7艘で、ドニプロ川東岸のコザチ・ラヘリという集落付近に上陸したのち、ロシア軍防衛線を突破し、ロシア側戦線の背後へと最大で800m前進したとのことだ。あるロシア軍事ブロガーは、ロシア軍司令部が最近、ロシア空挺軍(VDV)の兵員からなる「即応態勢にある集団」を、コザチ・ラヘリ地区からザポリージャ州に再配置し、その代わりとして詳細不明の部隊から連れてきた動員兵をコザチ・ラヘリ地区に配置した結果、この地区のロシア軍防衛能力は弱体化していると指摘した。ヘルソン州占領当局トップであるウラジーミル・サルドはウクライナ軍上陸の報告を軽く扱い、ロシア軍の砲撃でウクライナ軍ボートは撃退され、コザチ・ラヘリ周辺にウクライナ軍部隊は存在していないと主張した。しかしその一方で、ロシアの有名軍事ブロガーの大多数は、ウクライナ軍が戦術的奇襲効果を活用し、東岸に上陸することを何とか成し遂げたのち、ロシア軍と小火器で交戦したと主張している。そして、サルドは既に神経質になっているロシア情報空間内でのパニック発生を避けるため、この地区にウクライナ軍が存在するという主張を故意に否認しようとした可能性が高い。入手できたNASA「資源管理システムのための火災情報(FIRMS)」のデータが過去24時間にこの地区で示した熱源地点によって、かなりの戦闘があったことが確認できるようにみえる。これはおそらく砲兵の準備射撃か、攻撃に伴う砲撃を示していると思われる。8月8日の終わりまでに、多くのロシア側情報筋はその主張内容を更新し、ロシア軍がコザチ・ラヘリの支配権を保持しており、ウクライナ軍を河岸線まで押し戻したと報告した。また、小火器による小規模戦闘が、コザチ・ラヘリ付近と東岸のほかの集落付近の河岸エリアで起きているとも報じた。

Source: NASA’s Fire Information for Resource Management System over Kherson, August 8 and Esri, Maxar, Earthstar Geographics, and the GIS User Community; overlayed on ISW’s August 8 control-of-terrain map


https://www.understandingwar.org/sites/default/files/Russian%20Offensive%20Campaign%20Assessment%2C%20August%208%2C%202023%20PDF.pdf

コザチ・ラヘリ付近もしくは東岸のほかの集落付近におけるウクライナ軍の恒久的な存在が映像で確認できるまで、またはその確認ができなければ、ISWは今後もヘルソン州東岸情勢に関して慎重な評価分析を示すつもりだ。コザチ・ラヘリ付近における相当数のウクライナ軍将兵の存在または同軍車両の展開を示す映像資料を、ISWは今のところ確認していない。また、ロシア側報告の現状のパターンをみると、規模の大きなウクライナ軍作戦ではなく、小規模な渡河襲撃と一致することのほうが多い。なお、本報告を執筆している時点で、ウクライナ当局者はこの地域における作戦に関するコメントを発していない。

ヘルソン方面

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