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【SNS和訳】ウクライナの次の冬:最悪の事態に備えよ(@Tatarigami_UA氏)

以下は、ウクライナ軍予備役将校@Tatarigami_UA氏のSNS投稿(日本時間2023年8月9日04:57)の和訳である。


私は幾つかの次の冬に起こりうるリスクを検討し、そのリスクを緩和させる方策を探っていくつもりだ。本質的に重要なことなので強調しておきたいのだが、ここで示す観点は公開情報とその分析に基づいており、内部情報によるものではない。そのように考えておいてほしい。

両陣営ともに現在、航空優勢を確保しておらず、攻撃能力も限られているため、南部と東部の両地域おいて私たちは消耗戦の状態に戻されている。この戦争では火砲が重要な役割を担っており、その結果、生産能力と比べて、それを上回る砲弾消費が生じている。

この問題に取り組むため、ホワイトハウスは相当規模の砲弾セットを韓国から調達し、砲弾欠乏を避けるためにクラスター弾で埋め合わせた。来年、このことが再び再現可能かどうかに関して、私は確証を得ない。

そのような状況であるにも関わらず、重要かつ大規模な作戦レベルの突破が起こらなければ、戦況は依然として流動的だが、戦略レベルでの転換は生じないままだ。我が軍がバフムートを解放する可能性、もしくはロシア軍がスヴァトヴェ〜クレミンナ方面の孤立した幾つかの地区を占領する可能性というものは、単に地図上の見た目を変えるだけに過ぎず、その一方で、作戦レベルの相当な変化を生み出さずに死傷者の面で損失を被ることになる。

ロシアの弾薬供給は国内生産のみに頼っているわけではない。北朝鮮中国のような国外供給源が、ロシアの武器庫を支える潜在的な可能性がある。それを示唆したのが、ショイグの平壌訪問である。この可能性は未だ憶測段階に留まっており、両国が十分な数量を供与するかどうかにかかっている。

Korean Central News Agency / Korea News Service via AP

ロシアが追加で手に入れた弾薬と新たな部分動員による追加予備兵力によって増強され、冬に反転攻勢に打って出るかもしれないという憶測が高まっている。徘徊型ドローンの生産が向上していることで懸念は増しており、それは決して無視すべきものではない。ロシアと比べて、ウクライナには強固に要塞化された防衛網が欠けており、その明らかな脆弱性は、公開されている衛星画像でも確認できるものだ。

プーチンの戦略目標は、冬の数カ月間に自身の地位を強固にし、交渉への影響力を戦略的に増し、消耗戦を持続させていくことへの自身の関与を戦略的に示していくことにあると、私は確信している。とりわけ2024年に米国大統領選挙があることを考えると、このタイミングはかなり重要だ。プーチンは選挙期間中の反ウクライナ感情につけ込んで、支援継続見込みを失わせていこうとしている模様だ。なぜなら、プーチンは候補者の討論において、ロシアによるウクライナ侵略が重要テーマの一つになることを予期しているからだ。この動きは影響力の発揮と、可能性としてだが、西側諸国を無理にでもプーチンのアジェンダに同意させようとすることを意図している。

冬季にウクライナの耐久力を低下させる目的で、電力発電所のような基盤インフラを目標に、ミサイルとシャヘド型ドローンによるさらなる攻撃を開始するであろうこともまた、私は確信している。この戦略の目的は、ウクライナの決意を弱め、戦争疲れを育み、交渉での影響力発揮のためのより強い立場を得ることにある。

そのような状況であるにも関わらず、この状況を緩和し、好ましくない環境を避ける手立てが存在すると、私は確信している。

  • ウクライナに必要なのは、防空の傘を広げるために防空能力をよりいっそう高めることだ。この問題に関して我々は、支援国に完全に依存している。

  • 敵の指揮能力と、大規模に集結させた戦力への兵站維持を阻害するために、ウクライナは長射程能力を必要とする。それに必要な効果を得るために、複数の国々からの諸努力が要求されることになるだろう。

  • もし大規模な作戦レベルの突破が南部もしくは東部で起こらない場合、防御態勢準備と地雷原の設置を急ぎ進めていく必要が生じる。

  • ウクライナと西側支援国間の協力は、複合的な訓練の新プランを最優先とすべきだ。これには西側の訓練施設での統合訓練演習が含まれ、西側の教官とともに、経験豊富なウクライナ軍将校と下士官も参加して進めていく。このアプローチによって、実際の現実に近い形での実戦的な訓練が行えるようになるだろう。

このような課題があるにも関わらず、認識しておかなければならない楽観的な見込みも幾つか存在する。

  • クリミア経由でロシアと[ウクライナ]南部をつなぐ兵站ルートの注目に値すべき混乱は、南部地域のロシア軍補給路に対する、実質的なかなりの阻害になっている。

Source: Maxar Technologies
  • 南部地域における消耗比は依然として不確かである。ロシア軍が十分に弱体化し、我が部隊が防衛線突破の好機を得る可能性は、可能性の枠内に留まるものではない。

  • これからの冬のための砲弾をロシアが十分に補充することができる可能性について、不確かさが伴う。それに加えて、懸念されている砲身損耗の問題は未解決なままで、この問題に取り組むロシアの能力に疑念が投げかけられている。

  • ロシアが新たな動員を効果的に行えるという見込みがあるかどうかは、はっきりしていない。なぜなら、ロシア国内に潜在的に存在する複雑な問題が、このような取り組みの邪魔になり得るからだ。

  • 最近、ジッダ交渉の場に中国が参加したことは、同国がロシアへの支援拡大を避け、その代わりに外交的成果を優先しようとする可能性を指し示している。この戦略面でのアプローチは、国際関係の枠組のなかで中国が先に行った動きの反映であり、その一例がイランとサウジアラビア間の交渉仲介である。

結論。全体的に見通しは厳しくみえるかもしれないが、それに先んじて措置することで、上述のシナリオを阻止することができる。緊急の意識をもって現下の情勢に取り組み、最悪のケースのシナリオに備えることによって、我々は将来の難題を避けることができる。ある種の懸念は現実化しないかもしれないし、また、そもそも理論上の域を超えないままである可能性もあると私は考えているが、これらのあり得るかもしれないシナリオに備えることの重要性を強調することは、最も重要なことであり続けている。なぜなら、そのようなシナリオは依然として、かなりのレベルで現実化し得るものであるからだ。

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