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【SNS投稿和訳】ウクライナ・ハルキウ州北部情勢分析(Emil Kastehelmi氏)

フィンランドの軍事史家でOSINTアナリストであるエミール・カステヘルミ氏が、Xにウクライナ領ハルキウ州北部の戦況分析を投稿しています(日本時間2024年6月17日03:22投稿)。

以下は、この連続投稿の日本語訳になります。なお、記事中の画像はすべて、カステヘルミ氏の投稿に添付されているものを使用しています。

日本語訳

ハルキウから北に位置する地域でのロシア側の作戦は6週間を超えて続いている。ここでは、作戦レベルと戦略レベルの双方で、深刻なほど困難な問題が[ロシア側に]存在している。

攻勢が行き詰まるなか、衛星画像によって、ロシア軍が新たに占領した地域の要塞化に着手していることが分かる。

ハルキウ作戦は、3つの目標があったものと推測できる。

  1. 混乱を生み出し、ウクライナ軍予備戦力を副次的な方面に拘束すること。それがうまくいけば、ほかの方面で進撃できるようになる。

  2. [ロシア領]ベルゴロドとウクライナ領との間に「緩衝地帯」を築くこと。

  3. おそらくだが、ハルキウ市の一部を火砲の射程範囲内に収められるようにすること。

ロシアはウクライナ軍戦力の一部をハルキウ方面に縛り付けておくことに成功したが、戦線上のほかの方面で、ハルキウ方面で当初獲得した勢いを活用することができなかった。ロシアは戦力を分割し、相対的に重要性の低い地域で兵力を消費せざるを得ず、結果、あらゆるところで進撃は緩慢なままだ。

ウクライナは比較的迅速に戦線を安定化させ、限定的だが、反撃も開始している。

最近、ウクライナ軍はヴォウチャンシク[Vovchansk]、スタリツィア[Starytsia]、フリボケ[Hlyboke]において領土の奪還を進めている。一方でロシア軍は新たに占領地を広げられていない。そして、ハルキウ市は今でもロシア軍火砲の射程から、ずっと遠くに位置している。

いわゆる緩衝地帯は狭く、この範囲を広げるにはさらなる追加戦力が必要になるだろう。

ロシア軍はすでに占拠した地域を保持する準備に着手している。新たな衛星画像によって明らかになったのは、ロシア軍がヴォウチャンシク北方に位置する国境沿いのウクライナ側地域付近で、防御陣地を構築している最中であるということだ。

この新たな防御陣地群は150~400メートルの長さをもつ複数の塹壕陣地で、ヴォウチャンシクの北方と西方で構築されている。

衛星画像の解像度がかなり低いため、私はこれらの陣地の一部を高解像度画像でダブルチェックした。なお、残念なことだが、高解像度画像をここで公開することはできない。

新たな要塞化地帯は、おおむね2.5km程度の縦深があり、約6kmの幅をもつ。これは、ウクライナ軍のベルゴロドに向けた作戦行動に対して、あまり効果的とはいえない。

とはいえ、この作業はつい最近から始まったもので、今後の数週間の間で新たに防御陣地が増えていくことになる可能性はかなりある。

ロシア軍がほんの少しとはいえ、すでに得たものを失いたくないと考えているのは明白だ。ただ、ロシア軍の成果というものはそもそも大きなものではない。ロシア軍は多くのショベルカーをこの地域に移送しているが、ウクライナ軍はそのうち15両超の車両を損傷させるか、破壊してしまっている。工兵装備の損失としてはかなり多い。

このような損失にもかかわらず、ロシアは現在、要塞化を進める決意を固めている。このプロジェクトは政治的な動機に基づいているもののように思われる。なぜなら、国境沿いのロシア側にはすでに適切に整えられた防衛線が存在するからだ。このロシア領内の陣地は今のところ、試されてさえいない。というのも、国境越え急襲が、国境のすぐ近くに位置する最初の村落群を越えて進んでいくことは、通常の場合、ないからだ。

西側諸国において、ハルキウ方面の情勢は、ウクライナに関する言説上の変化を引き起こした。ウクライナ支援の緊急性が差し迫った問題になり、ウクライナは西側製長射程兵器を用いたロシア領内への攻撃が許されるようになった。ここで次の疑問を抱く人がいるかもしれない。ロシアが実際に得た戦果は、本当にロシアにとって価値のあるものだったのだろうか?

同様の作戦を今後行うことは難しいようにみえる。ロシア軍はほかの方面で新たな攻撃を仕掛けようとするかもしれない。しかし、ウクライナ軍にはこの種の試みに対応するチャンスが、今やもっと多くある。次の攻勢を行うとして、それがハルキウ方面と同じ結果をもたらすことは、ハルキウ方面と比べて難しい。

変数的要素はいくつかある。ウクライナ側の損失は不明で、その結果、ロシアに奪われた国境付近の小集落群を取り戻すのに、ウクライナ軍が払っている犠牲は把握できていない。ヴォウチャンシク方面で特にそうだが、ロシア軍を集落から追い払うことは、情勢全般を大きく変えるものではない。

「ブラック・バード・グループ」の私たちのチームは、より視覚的で事実に基づいた分析を提供するために、高解像度衛星画像を、ただチーム内で使うだけでなく、公に提供し続けることができるような解決策を模索しています。

以下、ブラック・バード・グループのインタラクティブ地図。

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