本記事は、戦争研究所(ISW)の2024年4月7日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。
ロシア軍攻勢の今後に関するウクライナ側の見解
報告書原文の引用(英文)
日本語訳
ウクライナ国防省情報総局の局長キリロ・ブダーノウ中将は、ウクライナが晩春から初夏にかけてのロシア軍攻勢の激化を予期していることを伝えた。ロシア軍攻勢作戦が今後、とりわけドンバス地方において激化していくことをウクライナは予想していると、ブダーノウは、ドイツの放送局ARDが4月7日に公開したインタビューのなかで語った。また、ブダーノウによると、ロシア軍は今後、チャシウ・ヤール(バフムートの西方)へ向かう前進とポクロウシク(アウジーウカから約43km北西に位置)方向での前進を試みていく可能性が高いとのことだ。ウクライナのウォロディミル・ゼレンシキー大統領は、ロシア軍の大規模攻勢の取り組みが5月後半か6月に始まる可能性があるという見解を、3月28日公開のCBSニュースのインタビューにおいて、すでに示している。4月4日におおむね1個増強中隊規模の機械化部隊攻撃を実施した程度のことも含め、ロシア軍が戦域の各所で攻勢作戦のテンポを上げたことを、ISWはここ最近、確認している。また、増加した可能性の高い人的・物資的損失の緩和にロシア軍が成功している模様であると、ISWは引き続き考えている。ゼレンシキーとウクライナ軍高官は最近、ウクライナへの安全保障支援の遅れに関して警鐘を鳴らし続けている。それによると、安全保障支援の遅延が原因で、ウクライナはロシアに戦場での主導権を譲り渡すことを強いられており、また、ウクライナがどのような内容の支援を、いつ受け取れるのかが分からないなか、ウクライナ軍は成功の見込みのある反転攻勢もしくは防衛作戦を立案することができないとのことだ。ISWはこれまで同様、西側の軍事支援の遅延がウクライナに物資節約を強いていると判断している。また、ウクライナ支援に関する米国内の議論が長く続くなか、ウクライナ軍は、ロシア軍の能力を抑え込むのに必要な、もしくは、将来の反転攻勢作戦の準備を進めていくのに必要な主導権争いを犠牲にして、防衛全般のなかである特定の領域を優先するという難しい決断を迫られている可能性が高いという評価判断も、ISWは変えていない。