Russian Offensive Campaign Assessment, June 8, 2024, ISW ⬇️
ハルキウ州国境周辺地域へのロシア軍の兵力移送
戦争研究所(ISW)報告書の一部日本語訳
報道によると、ロシア軍統帥部はハルキウ州周辺のウクライナ・ロシア国境地域に、数は不明だが、戦力を移送しているとのことだ。ただし、ロシア軍統帥部がこれらの移送戦力を、すぐさま戦闘に投入することを計画しているのか、この戦力によって北方部隊集団を増強し、予定された完全充足戦力とされるものに近づけることを計画しているのかは不明である。チェチェン・アフマト・スペツナズ部隊司令官アプティ・アラウディノフは、ロシア国営メディアRTの6月8日付インタビューのなかで、ロシア当局が2024年5月末にアフマト・スペツナズ部隊の一部を、戦域のどこかの地点からハルキウ方面に移すことに決めたと主張した。アラウディノフは、「カシュタン[Kashtan]」部隊(以前はアフマト「カメルトン[Kamerton]」部隊として知られており、新たな指揮官にちなんで名称が改められた)がハルキウ方面で活動していると主張した。ウクライナ軍ホルティツィア部隊集団報道官ナザール・ヴォロシン中佐の6月8日付発表によると、アフマト部隊は国境地域で督戦隊(許可されていない撤退をする友軍に対して銃撃を行う特別規律管理部隊)としての任務を遂行しているとのことで、ロシア軍統帥部は単にこの目的のためにアフマト部隊をハルキウ方面に移しただけで、攻勢作戦を行わせるためではない可能性があるとのことだ。また、へルソン州内の被占領地域も含む、ハルキウ方面以外の戦線から、具体的な部隊情報は不明だが、複数の連隊・旅団を移送ことで、ロシア軍統帥部が国境周辺の自軍部隊集団の戦力を増加させていることもヴォロシンは指摘している。ヴォロシンによると、ロシア軍統帥部は国境地域のどこかの場所での攻勢作戦に、空挺軍(VDV)所属の何らかの部隊と、第11及び第44軍団(ともにレニングラード軍管区[LMD]所属)からの追加部隊を投入する意図を有しているとのことだ。第11及び第44軍団隷下の部隊はハルキウ州の国境地域において、すでに攻勢作戦を遂行している。また、第98VDV師団からの1個大隊はクルスク州内の国境地域で行動中である模様だ。ウクライナ国民抵抗センターは6月8日に、ロシア軍統帥部が何らかの部隊とドローン操縦士をへルソン方面からハルキウ方面に再配置していることを伝えた。ロシア軍が5月10日に攻勢作戦を開始した際、同軍は北方部隊集団の一部をなす約35,000人の兵力を、国境地域に有していた。その一方で、ウクライナ側情報筋は、ロシア軍が当初、5月上旬時点で国境地域に少なくとも5万人から7万人の兵力を集結させようとしていたことを示してきた。ハルキウ州北部に侵攻する攻勢作戦を5月10日に開始して以降、ロシア軍が北方部隊集団の予定された完全充足戦力を変更しているのかどうかは不明である。ロシア軍事ブロガー・アカウントの一つは6月6日に、ロシア軍統帥部がハルキウ州北部の攻勢作戦に15,000人程度の兵力しか投入していないと主張している。
報告書原文の日本語訳箇所(英文)