本記事は、戦争研究所(ISW)の2023年11月24日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。
アウジーウカ情勢
報告書原文の一部引用(英文)
日本語訳
ウクライナ当局者の報告によると、ロシア軍は11月22日にアウジーウカへの攻勢企図を再開したとのことであるが、10月に遂行した以前の大攻勢のときと比べて、機械化戦力の関与は弱まっている可能性が高い。11月23日、ウクライナ軍タヴリーシク部隊集団司令官オレクサンドル・タルナウシキー准将は、ロシア軍がアウジーウカ方面攻勢作戦の一環として、「第3波」攻撃を発動したと報告した。また、タヴリーシク部隊集団報道官オレクサンドル・シュトゥプン大佐は、今回の「第3波」が11月22日に始まったと述べた。シュトゥプンは、11月22日のアウジーウカ周辺におけるロシア軍地上攻撃が25〜30%増になっていることを報告し、ウクライナ軍はこれらのロシア軍強襲攻撃全体において、複数のロシア軍隊列を退けたと語ったが、これらの隊列に含まれていたのは概ね10数両の装甲車両だったとのことだ。ウクライナ軍参謀本部は、ウクライナ軍が11月23日と24日にアウジーウカ方面で少なくとも50回のロシア軍強襲攻撃を撃退したと報じた。ロシア側情報筋は、ロシア軍がアウジーウカの南北両側面で攻勢作戦を続けたと主張したが、ロシア軍攻撃の特徴が高度に機械化されているとは説明しなかった。ロシア軍情報筋の主張によると、ロシア軍はアウジーウカの北に位置する地点で前進し続け、アウジーウカの南東にある工業地区内でさらに戦果をあげたとのことだ。だが、大規模なロシア軍攻勢前進が上手く再開したことに合致するような領土的戦果の主張は、ロシア側情報筋から出ていない。
11月22日にウクライナ軍がロシア軍戦車3両と装甲戦闘車両7両を撃破したとシュトゥプンは述べたが、ロシア軍が現在、10月のときよりも機械化部隊による強襲攻撃回数を少なくしていることを、この発言は示唆している。ウクライナ当局者の報告によると、10月19日にロシア軍がアウジーウカでの攻撃を再開した際、同軍は戦車50両と装甲車両100両を失ったということで、10月10日の第1波大規模機械化攻撃の際には、戦車15両と装甲車両33両を失ったということだ。10月9日以降、アウジーウカ周辺でのロシア軍攻勢作戦において、確認されただけで197両の車両が損傷している、もしくは破壊されており、その結果、ロシア軍はそれらの車両を失ってしまっている。そして、10月末から11月にかけての期間を費やして、ロシア軍はこのような重装備の損失を埋め合わせる目的の、歩兵主体の極度に消耗度の大きい新たな地上攻撃の準備を進めていたように思われる。大規模な歩兵主体の地上強襲攻撃は、アウジーウカ方面で防衛にあたるウクライナ軍にかなりの脅威を与えることになる可能性が高いけれども、この種の攻撃が、ここの地区でのロシア軍の迅速な進撃に結びつくことになる可能性は低い。