本記事は、戦争研究所(ISW)の2023年10月17日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。なお、この記事で用いた地図は、インタラクティブ・マップからの画像も含めて、すべてISW制作のものである。ただし、一部加工した。また、本記事のサムネイル画像は、ウクライナ軍参謀本部のFacebook投稿の写真を使用した。
アウジーウカ方面でのロシア軍攻勢
日本語訳:
ロシア軍は10月17日もアウジーウカ周辺で攻勢作戦を続けたが、裏付けのとれた前進は確認されていない。ウクライナ軍参謀本部は、ロシア軍がアウジーウカ付近とトネンケ(アウジーウカ西方5km)南方で攻撃したが、失敗したと報告した。ウクライナ軍当局者は、アウジーウカ付近におけるロシア軍の攻撃の激しさは低下しつつあると指摘した。ウクライナ内務省自由軍団で任務につくマクシム・モロゾウ少佐は、ロシア軍がアウジーウカ周辺で占領した数少ない陣地に足場を築くことができず、これらの陣地から撤退していると語った。一方で、ロシアの有名軍事ブロガーの一人は、具体的な場所等は示さなかったが、ロシア軍がアウジーウカ方面でいくつかの占領した拠点において、足場を築いているところだと主張した。別の軍事ブロガーは、ロシア軍がアウジーウカ方面の南部において、何らかの戦術的成功をおさめたと主張した。この軍事ブロガーの主張によると、ロシア軍はステポヴェ(アウジーウカ北西7km)付近で前進中で、ヴォディヤネ(アウジーウカ南西7km)付近とオピトネ(アウジーウカ南西3km[*原文の「クリシチーウカ」から修正])付近で前進を試みているとのことだ。また別のロシア軍事ブロガーは、ロシア軍がスパルタク(アウジーウカ南方4km)付近で前進を試みていると主張したが、ロシア軍がアウジーウカの東側で前進できていないことも述べている。有名なロシア軍事ブロガーで上述との別のアカウントは、ロシア軍がアウジーウカへの南側からの接近経路であるシェヴェルネ(アウジーウカ西方5km)方向とペルヴォマイシケ(アウジーウカ南西11km)付近でも攻撃を行ったと主張した。アウジーウカ方面で軍務についていると主張するロシア軍事ブロガーは、ロシア軍がアウジーウカ付近の陣地で「行き詰まって」おり、さらなる進撃に苦慮しているが、それはウクライナ軍の防御力のせいであると、10月16日に主張した。ロシアのニュース・アグリゲーターの一つは、ロシア軍が10月16日にシェヴェルネ付近で攻撃を行ったと主張し、アウジーウカ南方とステポヴェ付近で前進したとも主張した。[ウクライナ人軍事ウォッチャーの]マショヴェツの指摘によると、ロシア軍は追加のDNR部隊をこの方面に移している可能性があるとのことで、その部隊には第1・第9旅団、第10戦車大隊、第13「ソマリア」独立突撃大隊、第80「スパルタ」独立偵察大隊が含まれ、さらに、オピトネ付近かヴォディヤネ〜トネンケ道路沿いの第242自動車化狙撃連隊(ロシア南部軍管区第8諸兵科連合軍第20自動車化狙撃師団)も含まれているとのことだ。
附記
ようやく米国からウクライナにATACMS(陸軍戦術ミサイルシステム)が供与され、実戦投入された模様です。ATACMSによって、ウクライナは短期的にはロシアに大きな脅威を及ぼすことができますが、今後、ロシア側もATACMSの脅威に適応しようとしていくでしょう。
この件に関して、ISWは「ウクライナは限られた数しかATACMSを受け取っていない可能性が高く、[ロシア側に及ぼしている]初期効果を持続・増幅させていこうとするならば、もっと多くの数がウクライナには必要となるだろう」と指摘しています。