Russian Offensive Campaign Assessment, September 7, 2024, ISW ⬇️
※記事サムネイル画像は、キリロ・ブダーノウ氏へのインタビュー動画の一部を使用しています。
ウクライナ国防省情報総局ブダーノウ局長が語る今後の戦況展望
◆ 戦争研究所(ISW)報告書の一部日本語訳
ウクライナ国防省情報総局(GUR)の局長であるキリロ・ブダーノウ中将は、ウクライナのクルスク州進攻がウクライナ領内でのロシア軍攻勢作戦に対して、現在も戦域レベルで影響を及ぼしていることを指摘した。同氏はまた、2024~2025年冬季になってもロシア軍攻勢作戦が継続されるという見通しも示した。9月7日に公開されたインタビューのなかで、ブダーノウは、ウクライナ軍のクルスク州進攻が2024年8月とそれに続く秋季のロシア側攻勢作戦計画を複雑なものにしたと述べた。ロシア軍統帥部が自国の「主方面」において目標を達成しようと、投入できる限りのマンパワーと装備を注ぎ込み続けていると、ブダーノウは指摘している。なお、ロシア側の「主方面」という言葉は、ポクロウシク[Pokrovsk]占領のことを指しているものと思われる。また、ロシア軍はこのポクロウシク方面を注視しているともブダーノウは語った。ロシア軍は最近、ポクロウシク周辺とドネツィク市から西と南西の方向で攻勢作戦を激化させ、さらなる前進に成功しているが、ウクライナ領内のこれら以外の地域において、ロシア軍が攻勢作戦を激化させている様子を、ISWは確認していない。ロシア軍統帥部がポクロウシク周辺でのロシア軍の進撃を最優先にしようと以前から決心しているのはほぼ確実であり、現在、ここ以外の方面での攻勢作戦を犠牲にして、この地域に利用可能なマンパワーと装備を投入しているのもほぼ間違いない。ロシア軍事ブロガー・アカウントの一つは、マンパワー面での制約によって、ロシア軍統帥部はドネツィクとクルスクでの作戦計画の修正を余儀なくされていると主張し、ウクライナ領内での攻勢作戦を強化し、クルスク州へのウクライナ軍進攻を撃退するのに必要な戦力を捻出する「システマティックな解決策」を、ロシア当局はもっていないという見解を示した。この軍事ブロガー・アカウントによると、ポクロウシク方面におけるロシア軍の進撃は、人的損失を被り続け、ますます人的充足率が低くなるなか、ペースダウンし始めているとのことで、ロシア軍は「消耗」しているにもかかわらず、この地域での攻勢作戦を継続しているということだ。ロシア軍統帥部が今後、現在進行中の攻勢作戦を続けるのに十分な、そして、最終的にポクロウシクを制圧してしまう可能性を生じさせるのに十分な戦力を、この地域に注ぎ込める可能性は高い。だが一方で、ポクロウシクという都市を占領する前に、ロシア軍が攻勢限界に達する可能性もある。
インタビューのなかでブダーノウは、冬の気象状況がこれから数カ月間のロシア軍攻勢作戦の遂行を面倒なものにしていく可能性はあるが、だからといって、ロシア軍がウクライナ軍拠点への攻撃を完全に中止することにはならないと述べた。秋の泥濘期と呼ばれる季節は、開戦以来ずっとロシア・ウクライナ両軍の陸上移動を妨げるものであった。しかし、通常なら12月末から始まる、長い時間、気温が氷点下になる期間には、大地は凍結し、装甲車両は秋や春の時期よりも容易に移動できるようになる。そうであるにもかかわらず、2023年にロシア軍が、気象状況が改善する2023~2024年の冬季を待たずに、最も困難な気象状況である秋に、主導権を奪おうとして戦い、攻勢作戦の遂行を進めたのは明白な事実だ。秋と冬の気象条件がロシア・ウクライナ両軍の戦場での行動を難しくしていく可能性は高いが、これによって、前線での活動が完全に停滞してしまうことになる可能性はかなり低い。
※ISWが参照している情報源を確認したい場合は、報告書原文の後注[1]~[9]に記載されたURLにアクセスしてください。
◆ 報告書原文の日本語訳箇所(英文)
戦争研究所:ウクライナ戦況インタラクティブ地図