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【報告抄訳】ISW ロシアによる攻勢戦役評価 1540 ET 29.07.2023 “ウクライナ軍反攻と北部でのロシア軍攻勢”

以下は、ISW(戦争研究所)の2023年7月29日付ウクライナ情勢報告の一部(添付した文書画像箇所)を、日本語に訳したものになります。


https://www.understandingwar.org/sites/default/files/July%2029%20Russian%20Offensive%20Campaign%20Assessment%20PDF.pdf

ウクライナ軍の反攻:

7月29日、ウクライナ軍は戦線上の少なくとも3箇所で攻勢作戦を実施し、幾つかの地区で前進できた。7月28日投稿の撮影地点が特定できる動画によって、ウクライナ軍がクルディウミウカ(バフムート南西13km)北西端に接近したことが裏付けられている。7月29日に流れた撮影場所が特定できる動画に、ウクライナ軍がドネツィク・ザポリージャ州境地域のプリユトネ(ヴェリカ・ノヴォシルカ南西16km)北端付近の陣地に向かって進んだ様子が映っている。ロシア側情報筋の主張によると、ウクライナ軍はバフムート南方に位置するクリシチーウカ付近、クルディウミウカ付近、アンドリーウカ付近で強襲を仕掛けたとのことだ。

バフムート地区
ドネツィク州方面

ウクライナ側当局者は、ウクライナ軍がドネツィク・ザポリージャ州境地域とザポリージャ州西部で攻勢作戦を実施したと報告した。ロシア側情報筋の主張によると、ドネツィク・ザポリージャ州境地域に位置するリヴノピリ周辺、スタロマヨルシケ周辺、ウロジャイネ周辺でのウクライナ軍の地上攻撃をロシア軍が退けたとのことだ。

ヴェリカ・ノヴォシルカ南方地区

ロシア側情報筋は、ウクライナ軍がザポリージャ州西部のロボチネ付近でウクライナ軍が地上攻撃を行ったが、失敗に終わったと主張した。また、ある軍事ブロガーの主張によると、ウクライナ軍はロボチネ北東の森林を制圧したという。

オリヒウ南方地区

ロシア軍事ブロガーの一人は、ロシア軍陣地に配置する兵力が不十分になるところまでウクライナ軍がロシア軍に大きな損失を与えることになれば、ロシア軍強化防御陣地はその意味を失うと述べた。この軍事ブロガーはまた、ロシア軍防衛網内へのウクライナ軍進撃の深さは、ウクライナ軍反攻の進展のなかで、双方の戦力バランスがどの程度ウクライナ側有利に傾くかということに比べると、それほど大きな問題ではないとも述べた。

7月28日から29日にかけて、ウクライナ軍は占領下クリミアにあるロシア側軍事・兵站アセットを攻撃の目標にした。ウクライナ軍の報告によると、7月29日朝、同軍は占領下クリミアと占領下ヘルソン州の間にあるチョンハル橋を攻撃したとのことだ。ヘルソン州占領当局の長であるウラジーミル・サルドは、ウクライナ軍がチョンハル鉄道橋に向けて12発のストームシャドー・ミサイルを発射したと主張したが、ロシア軍防空網によって、12発すべてが撃墜されたとも主張した。SNS情報のなかには、現地住民によるチョンハル地区での爆発報告を伝えるものもあるが、このISW報告の発表時点において、攻撃を裏付ける映像証拠もしくはその結果に関する主張は、今のところ存在していない。

チョンハル地区(https://storymaps.arcgis.com/stories/36a7f6a6f5a9448496de641cf64bd375)

ウクライナ国防省情報総局(GUR)の報告によると、7月28日、クリミアのセヴァストポリ付近のコザチャ港にあるロシア軍弾薬保管庫に破壊工作者が爆発物を仕掛け、現地住民から一次爆発と二次爆発が伝えられたとのことだ。セヴァストポリ占領当局の長であるミハイル・ラズヴォジャエフは7月28日、コザチャ港での爆発はすべて、ロシア軍の演習によるものだと主張した。

コザチャ港(https://storymaps.arcgis.com/stories/36a7f6a6f5a9448496de641cf64bd375)

https://www.understandingwar.org/sites/default/files/July%2029%20Russian%20Offensive%20Campaign%20Assessment%20PDF.pdf

ルハンシク方面でのロシア軍の動き:

7月29日、ロシア軍はスヴァトヴェ〜クレミンナ戦線沿いで攻勢作戦を続け、幾つかの地区で前進できたことが伝えられている。ウクライナ軍参謀本部の報告によると、ロシア軍はノヴォイェホリウカ(スヴァトヴェ南西16km)付近、クレミンナ南方のセレブリャンシケ森林地区、ビロホリウカ(クレミンナ南方12km)で攻勢作戦を実施したが、失敗に終わったとのことだ。ロシア国防省は、ロシア軍西部部隊集団所属の諸部隊がクゼミウカ(スヴァトヴェ北西15km)付近で攻勢作戦を行ったと主張した。ある有名なロシア軍事ブロガーは、第21自動車化狙撃連隊(中央軍管区第2諸兵科連合軍)に属する部隊がノヴォイェホリウカを占領し、現在、周辺地区を掃討中であると主張している。この軍事ブロガーはまた、ノヴォイェホリウカとナディヤ(スヴァトヴェ西方15km)の間にある高地からロシア軍がウクライナ軍を押し出したとも主張した。別のもう一人のロシア軍事ブロガーは、ロシア軍がナディヤ付近で強襲攻撃を実施したと主張したが、その結果に関する詳細は述べていない。スヴァトヴェ〜クレミンナ沿いでの広範囲なロシア軍進撃を最近ロシア側は主張しているが、それを裏付ける映像をISWは確認できていないままで、ロシア国防省と一部のロシア軍事ブロガーが、他地域でのウクライナ軍反攻から注意を逸らす目的で、進撃の主張を誇張して伝えている可能性がある。

ルハンシク州方面

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