本記事は、戦争研究所(ISW)の2023年12月31日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。
[*記事サムネイル画像:Defense Express記事より]
ウクライナ軍ドローン迎撃成功率の低下
報告書からの引用(英文)
日本語訳
12月29日から30日にかけての夜と12月31日、ロシア軍はウクライナに対して新たな一連のミサイル・ドローン攻撃を行った。注目すべきこととして、ロシア軍のシャヘド136/131ドローンがウクライナ軍防空網を突破する、もしくは防空網を回避する割合が、ここ最近、著しく増加していることがある。ウクライナ空軍の発表によると、12月30日から31日にかけての夜、ロシア軍はS-300ミサイル6発でハルキウ市を攻撃し、シャヘド・ドローン49機を主にウクライナ軍前線拠点に向けて発射したとのことだ。なお、ドローンは、前線拠点のほかに、ハルキウ・ヘルソン・ミコライウ・ザポリージャ各州内の民間施設、軍事施設、インフラ設備にも向けられたと伝えられている。ウクライナ軍関係の情報源は、12月31日にロシア軍がウクライナ国内の目標に向けてミサイル12発を発射し、そのうちの何発かはハルキウ州とドネツィク州の民間施設への攻撃だったと報告した。ウクライナ空軍はシャヘド・ドローン21機を撃墜したと報告しているが、この結果は、これまでISWが確認してきた結果と比較して、著しく低い迎撃成功率を示している。ウクライナ空軍報道官ユーリ・イフナト大佐は、シャヘド・ドローンを用いたウクライナ軍前線拠点へのロシア軍の攻撃は「普通でない」もので、迎撃成功率の低さはロシア軍が前線エリアを狙った結果である可能性があると述べた。前線エリアは後方の人口集中地域よりも防空網が薄い、もしくはドローン迎撃に適した防空網が薄いと、イフナト大佐は指摘している。10月30日にウクライナ軍はシャヘド・ドローンを10機中5機撃墜し、10月29日には36機中27機撃墜しているが、これもまたウクライナ防空網の普段以下の迎撃成功率を示すものになった。ロシア軍がより探知が難しいシャヘド・ドローンを発射したと、複数のロシア軍事ブロガーは主張しており、探知が困難になった理由として、ドローンが黒く塗装されており、部分的に電波を吸収している点をあげている。以前の11月25日にイフナト報道官は、ロシア軍がシャヘド・ドローンの表面を黒く塗装し、炭素繊維で覆うことを始め、ウクライナ軍防空システムの機能に負荷を与えていると述べていた。シャヘド・ドローンの改良がウクライナ軍迎撃成功率を低下させているのか、ウクライナ軍迎撃成功率低下のはっきりとした傾向が今後も続くのかは、いずれも不明である。