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【SNS投稿和訳】評価分析:アウジーウカの戦い(by Emil Kastehelmi氏)

はじめに

本記事は、フィンランドの軍事史家・OSINTアナリストであるエミール・カステヘルミ氏のX連続投稿(日本時間2023年10月19日03:51投稿)の日本語訳である。なお、この記事中の画像は、カステヘルミ氏の投稿から転載した。


日本語訳

ロシア軍は1週間にわたってアウジーウカ方面で攻撃を続けている。

攻勢の激しさはおさまりつつあり、ロシア軍は多くの装備損失を被った挙句、ごくわずかしか進めていないとはいえ、ウクライナは依然として、潜在的に危険な状況に置かれている。

アウジーウカの全般的状況は明白だ。ロシア軍は2方向からの同市包囲を試みている。この試みを進めるために、ロシア軍は複数の村落や野外地域を通過して進撃する必要があった。1週間の戦いののち、ウクライナはロシア軍の両翼から刃の間に、7〜8kmの隙間を今でも維持している。

これまでの約1年間、ここの前線はほとんど動きがないままであり、ウクライナ軍には準備期間があった。地形は概ね防御側有利で、進撃が想定される方向で奇襲されそうな箇所は多くない。ロシア軍も過去1年間、このことに気づいていた可能性は高い。

次に、この都市の両側面におけるロシア軍の取り組みを、もっと細かく見ていこう。結論としては、ロシア軍は占領面積の点で多くを成し遂げられなかった。その一方で、兵力と車両の点で、多大な損失を被った。

北部地区:

当初、ロシア軍部隊のなかには、アウジーウカの北にある鉄道線と石炭屑集積場まで何とか到達した部隊もあった。ウクライナは進撃してくる敵部隊に大きな損害を与えた。ロシア軍はこの両地点で、しっかりとした足場を築くことに失敗した模様だ。

南部地区:

ロシアはヴォディヤネからシェヴェルネ及びトネンケに向かう攻撃を試みた。いくつかの樹木線では、わずかな前進が見られたとはいえ、攻撃の大半は撃退された。ウクライナ軍がこの地区で村落もしくは重要拠点を失ったことを示すものは、存在していない。

アウジーウカが有する戦略的な意味合いというものは、極めて限られている。仮にロシア軍がここを占領しても、攻勢を継続させていくうえでの好ましい選択肢は何ら得られない。アウジーウカの背後の地域は、さらなる作戦展開に直接寄与するものではない。アウジーウカを占領できた場合、戦線が直線的になるということだけが生じる。

ロシア側の目標は、多分に政治的色合いが濃いように思われる。ロシア軍は何カ月も勝利から遠ざかっており、バフムート占領も勝利と呼べるかどうか難しい。アウジーウカ突出部は、机上の考えでは、より迅速な成功の可能性を与えられるものだった。だが、ロシア軍は未だにこの可能性を活かすことができていない。

初期攻撃は撃退されたとはいえ、ロシアは今後、この方面で再び攻撃を仕掛けてくることが予想される。戦域のほかの地区に、ここと同じような目標は多く存在しない。進捗はおそらくゆっくりとしたものになるだろうが、当然ながら、そのペースは、アウジーウカ占領のためにロシアがどれだけのリソースを振り向けるか次第で決まる。

バフムートのとき、ロシア軍は積極的な側面からの包囲機動から、一区画ずつ都市を占領する方向へと、最終的に方針転換した。もしロシア軍がアウジーウカ占領にこだわる場合、まさにウクライナ軍も同じようにこの都市を保持する決意を固めているために、今後の戦いは長く、厳しいものになるだろう。

長期的にみて、ウクライナは反撃によって被包囲の脅威を排除する必要があるかもしれない。特に北部地区は、現実的な問題に進展していく可能性がある。ウクライナ軍の状況をさらに悪くする点でいえば、ロシア軍がさらに前進する必要はない。間隙は短いからだ。

現状、ウクライナがロシア軍を何とか跳ね除けられているとはいえ、懸念材料がいくつか存在する。

また、ロシアが証明したことが2つある。まず、比較的注目を浴びてこなかった方面で、ロシアがイニシアティヴを取りにきたことだ。次に、ロシアが依然として、そうするために必要な予備戦力を持っているということだ。それとは反対の主張が多くあったにも関わらず、そうなのだ。

ロシア軍は、例えばヴフレダルの戦いのような過去の攻勢から得た何らかの教訓を活かそうとしているようではあるが、アウジーウカ攻勢の戦術的結果は、それでもなお失敗であった。だが、このことは、ロシア軍が積極的に学習と適応を進めようとしていることを示している。

アウジーウカの戦いがこれからどう進んでいくかに関しては、多くの不確実性と可能性が存在する。Black Bird Groupの私たちのチームは、今後も状況を見守っていく。

[中略]

以下、私たちチームのインタラクティブ・マップ。

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