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【報告抄訳】ISW ロシアによる攻勢戦役評価 1645 ET 30.07.2023 “ロシア軍事ブロガーの報道姿勢の変化”

以下は、ISW(戦争研究所)の2023年7月30日付ウクライナ情勢報告の一部(添付した文書画像箇所)を、日本語に訳したものになります。


https://www.understandingwar.org/sites/default/files/Russian%20Offensive%20Campaign%20Assessment%2C%20July%2030%2C%202023%20%28PDF%29.pdf

ウクライナ軍のチョンハル橋への攻撃に対してロシア軍事ブロガーが無反応なのは、ウクライナでの戦争に関するロシア側報道の注目すべき変化点を示しており、ある種の話題の報道を控えるよう、クレムリンがロシア軍事ブロガーに指示していることを示している可能性がある。7月29日、ウクライナ軍は、占領下クリミアと占領下ヘルソン州を結ぶM-18(ジャンコイ〜メリトポリ)高速道路上のチョンハル橋に対する攻撃に成功したと発表した。このウクライナ軍の攻撃に関するロシア軍事ブロガーの意見表明、もしくは、この橋を狙ったウクライナ軍のストームシャドー・ミサイル12発をすべてロシア軍が迎撃できたというヘルソン州占領当局の長ウラジーミル・サルドの主張を盛り上げるロシア軍事ブロガーを、ISWは確認できていない。この攻撃にコメントした唯一例外的なロシア側情報は、現地のロシア報道テレグラム・チャンネルだけで、そのチャンネルはこの地域にいるロシア人観光客が述べた橋の交通規制という具体的な証拠のない主張を大きく伝えた。6月22日のウクライナ軍のチョンハル橋攻撃については、ロシア軍事ブロガーは怒りと懸念を拡散させながら、それに反応した。また、ロシア軍事ブロガーはロシア軍兵站へのウクライナ軍攻撃に関して、それが成功しても失敗に終わったとされた場合でも、そのことにコメントするのが常であった。チョンハル橋は、ロシア軍の極めて重要な地上連絡線(GLOC)上に存在する、注目すべきボトルネックであり、ロシア軍事ブロガーがこの橋に対するウクライナ軍の攻撃を、それが成功しようが失敗しようが、自発的に無視することはほとんどあり得ないといってよい。ISWは以前、ロシア軍事ブロガーについて、次のような評価分析を示した。それは、一部のロシア軍事ブロガーはウクライナにおける戦争の報道を、クレムリンが提示するナラティヴにもっと寄り添う方向で形づくっている可能性があり、その姿勢の変化は、戦争支持派だが批判的なロシア情報空間内の有名発言者が排除されたのちに、クレムリンの処罰への恐怖が生じたことに起因していると考えられるというものだ。なお、批判的発言者の排除でとりわけ注目されるのは、批判的戦争支持派のイーゴリ・ギルキンと、ワグネル・グループ資金提供者エフゲニー・プリゴジンの両名の排除である。そうはいっても、クレムリンが科す処罰に対する全般的な恐怖心が引き金となり、劇的な出来事が今回のようにほとんど報じられなくなったという可能性は低いだろう。そして、可能性が高いと考えられるのは、死活的重要性をもつGLOCの混乱を報じるなというクレムリンの明確な指示が、今回の報道の欠如を引き起こしたというものだ。

https://storymaps.arcgis.com/stories/36a7f6a6f5a9448496de641cf64bd375

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