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【記事和訳】戦線の動向:緊迫するアウジーウカと北朝鮮の砲弾供与に関するさらなる洞察 2023.11.06(FRONTELLIGENCE INSIGHT)

本記事は、ウクライナ軍予備役将校が立ち上げた戦争・紛争分析チームFRONTELLIGENCE INSIGHTによるウクライナ戦争分析記事(上記リンク)の日本語訳になります。なお、記事中の画像は、原文からの転載して使用した。


アウジーウカ最新情勢

私たちのチームはアウジーウカ地区での進展を注意深く見守っており、各種情報源を用いた入念な分析を行っている。ここでいう情報源には、衛星画像、現地報告、オープンソース情報分析(OSINT)、非公開情報が含まれている。以下に、アウジーウカ方面の現状評価を示す。

  • ロシア軍は鉄道線を越えた地点に足場となる拠点を築く試みを続けている。同軍は苦戦しつつも、複数箇所で鉄道線を越えることができた。だが、確固とした拠点を築くことの難しさに直面している。

  • 10月末の数日間、ウクライナ軍はスヴァトヴェ地区で反撃を試み、機械化部隊を投入した。この試みは部分的成功を収めたが、ウクライナ側の車両損失が確認されるという結果も伴った。

  • 激しく砲撃された結果、建築物がかなり損壊してしまい、ステポヴェの防衛はもはや容易ではない。ロシア軍が最終的にステポヴェを占領してしまうかもしれないという可能性は存在するが、ロシア軍が支配権を維持できるかどうか、また、ステポヴェを進発点として用いて、さらなる前進ができるかどうかは確かではない。

  • 現時点でロシア軍は、第一に二つの目標に重点をおいている可能性が高い。一つはベルディチというステポヴェの西に位置する小さな町だ。この町は死活的重要性をもつ1本の兵站ルートを守っている。二つ目は、アウジーウカ・コークス化学工場(AKHZ)だ。ここは広大な工業施設区域であり、周到に防御措置が取られた建築物群、分厚い壁、トンネルが備わっており、アウジーウカ市防衛において、極めて重要な役割を担っている。この二つの目標をロシア軍が手に入れるためには、かなりの規模のリソースを割り当てる必要があるだろう。

  • ロシア軍は戦線の他の地区からさらに2個の部隊を引き抜いて割り当て、アウジーウカ方面の既存展開戦力を増強しつつある。このことは、ロシア軍設定目標の達成には初期リソースだけでは不十分であったことを示唆しており、計画の際の計算ミスを示している。

  • これからの2週間以内にアウジーウカを巡る戦いの帰趨がより明確になっていくというのが、私たちのチームの評価分析だ。到着した増援部隊は、上述の目標の片方もしくは両方を達成するために用いられる可能性がある。これらの目標が達成できない場合、ロシア軍が小規模戦術グループの投入を含む戦術を用いることになる可能性があり、そうなるとこの戦いは冬まで延び、ヴフレダル戦と似たような状況になっていくだろう。ヴフレダルでは、大規模な機械化部隊による攻撃で始まったが、その後、小隊・分隊規模の小型戦術部隊による戦いへと変動していった。

  • アウジーウカの喪失が現実化した場合、バフムート以上に幅広い影響が及ぶ結果がウクライナにもたらされることになり、軍事的全般情勢に深刻な影響が加わる。アウジーウカ防衛の崩壊は、機動を可能にする大きな作戦空間をロシア軍に提示することになるだろうし、その場合、ロシア軍に複数方向への前進を許すことになり、ウクライナ軍をドネツィク州から追い出すという政治的目標を達成させてしまうことにもつながりかねない。


反対にロシア側の失敗に終わった場合、ここでの戦いはロシア地上軍にとって、この戦争における最も屈辱的な戦いの一つになるだろうし、それはヴフレダルでの失策を上回るものになるだろう。私たちの判断では、ロシア軍統帥部はこのことをしっかりと理解している。また、バランスよく物事をみるタイプの戦況ウォッチャーが想定しうる以上の多くの死傷者を出すことに耐える覚悟が、ロシア軍統帥部にはあるようにみえる。

全般的にみて、両軍にとって現在の情勢が極めて重要であることは否定できない。


  • ロシア軍は戦力を投入し、増援を送り込む意志を示している。だが、ロシア軍がベルディチ内において、もしくはAKHZにおいて足場を確保することに失敗した場合、これからの1カ月でアウジーウカを奪取することは、かなり気の進まない任務になる。何千人もの受刑者兵を大規模に投入するという特徴をもつバフムートの戦いのような戦闘を、新たに持続させる力がロシアにあるのかどうかに関して、私たちのチームは疑念を抱いている。

  • それと同時に、ウクライナ軍の防衛上の過失、もしくは反撃の失敗は、ロシア軍が足場となる拠点を確立し、その拠点を徐々に拡張していく機会を、同軍に与えることになりかねない。このシナリオが現実化する場合、ウクライナ軍が最終的にアウジーウカを放棄せざるを得なくなる可能性が生じる。


北朝鮮からの輸送物資

北朝鮮の輸送物資に関する重要な最新情報をここでいくつか共有できることを、私たちのチームは喜ばしく感じている。以前、私たちは2023年10月の相当な規模のコンテナ積荷を確認したことを報告したが、これは、私たちの情報源が示した、10月に1,000個のコンテナが加わったという主張に対して私たちが抱く信頼感を高めるものだ。私たちが入手した最新の衛星画像によって、ホワイトハウスの報道発表後に、少なくとも5回の輸送の行き来が北朝鮮とロシアの間で行われていたことが、視覚的な証拠として示されている。

1隻の船が輸送した正確なコンテナ数を判定することはできていないものの、私たちの試算では、最低でも106個(10月27日の画像を、二段重ねコンテナの存在を考慮しない形で控えめに分析したものに基づく数値)、最大で300個(ホワイトハウス報告と同様)という範囲になる。2国間を行き来した少なくとも5回の輸送が確認されたことが伴うと、全体の試算数字として1,000個のコンテナというのは、まったく現実的な数値といえる。

AP通信の報道によると、韓国軍は国内記者向けの情勢発表の際に、北朝鮮が数量不明の短距離弾道ミサイル(SRBM)を輸送しているという疑念を示したとのことだ。私たちのチームは積荷を詳しく調べる作業を入念に行っており、それにはコンテナから降ろされた荷物のサイズの検証も含まれている。その結果、SRBM用コンテナと想定されるサイズに合致するように思われるものは見つからなかった。私たちがSRBM輸送に用いられた特別なコンテナを見落とした、もしくはその輸送用の別ルートを見落としたかもしれないという可能性はあるが、北朝鮮からロシアへのSRBM供与に関する報告に関しては、どこかしら疑念を抱いたままでいる。だが、この報告が事実である可能性を完全に見過ごすことはできない。

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