見出し画像

【記事紹介】“ウクライナ反攻開始: レオパルドは解き放たれるのか?”(Ukraine’s Counteroffensive Begins: Shall the Leopards Break Free?,by Jack Watling, RUSI, 14.06.2023)

以下は、上記英文記事の日本語での要約になります。

ウクライナ軍の反攻が始まった。同軍は戦線の第一線を突破しているが、ロシア軍主防衛線には至っていない。そして、ウクライナ軍第一波部隊が突破のための条件をつくろうとするなか、キーウはその主戦力を保持している。

接触線にあるロシア軍防御陣地と異なり、ウクライナ軍の現展開地から15〜20km先にあるロシア軍主防衛線は頑強にできている。さらにその背後には後退用陣地も存在する。

戦いは今後厳しさを増してくる。ロシア軍主防衛線に近づくことは、ロシア軍砲兵の射程範囲内により深く入るということだ。反対にウクライナ側の対砲兵射撃は困難になる。また、地雷原の処理済みの一画を進むため、ウクライナ軍進撃路の把握は容易になる。さらに防空カバーも薄くなり、ロシア軍機の攻撃にさらされる可能性も高くなる。

これらの脅威を踏まえ、ウクライナ軍は次の3つのことを成し遂げようと努めている。

  1. 激しい対砲兵戦+兵站・指揮統制・偵察・砲兵システムへの攻撃

  2. ロシア軍に予備部隊投入を迫る状況づくり(ロシア側の弱点特定を容易にし、ウクライナ軍突破後のロシア軍予備投入を妨げる)

  3. 戦線上、できるだけ広く圧力をかける(主防衛線突破時の選択肢を増やす+ロシア軍部隊を横に広く展開させ、ロシア軍部隊の縦深配置を制限する)

ある時点でウクライナ側は主力攻撃部隊の投入地点を決めねばならなくなるが、その時点で攻勢作戦は、成否を決するファイズに突入することになる。

突破後の成果の程度は、ウクライナ軍がどれほどの部隊を突破口に注ぎ込み、戦果を拡張できるかで決まる。現状の作戦進捗は漸進的なものだが、一度突破口が開けば、重要なのはスピードになる。

変動要素として、ロシア軍の士気がある。今のロシア軍は用意された拠点で戦っており、その指揮統制も概ね機能しているが、もし現位置からの移動を迫られた場合、ロシア軍の規律の低さと不十分な訓練が、協同行動を阻害し、組織崩壊の広がりを導くこともありうる。ウクライナ軍がその状況をもたらそうと試みることは可能だが、それに頼ることはできない。

ウクライナ支援国にとって、この夏はかなり心地のよくない季節になるだろう。損失は増すのに、成功には時間がかかるからだ。重要なのは、ウクライナ軍への訓練プログラムを欠かさないことだ。訓練が続けば、ウクライナは新部隊を作り出せる。また、国防産業を動員し、ウクライナへの持続的な支援を行うことも重要である。

そして、重要な変数は、クレムリンに対して、敗北は段階的かもしれないが、それは必ずやって来ると納得させることだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?