【抄訳】戦争研究所「ロシアによる攻勢戦役評価」1800 ET 01.06.2024 《6月1日付報告書の要点》
Russian Offensive Campaign Assessment, June 1, 2024, ISW ⬇️
要点(Key Takeways)の日本語訳
5月31日から6月1日にかけての夜にロシア軍は、主にウクライナ側エネルギー・インフラを目標にしたドローン・ミサイル攻撃を大規模に実施した。
※補足:ウクライナ側発表によると、ロシア軍が発射したのは、シャヘド型ドローン53機、Kh-101/555巡航ミサイル35発、イスカンデルM弾道ミサイル4発、イスカンデルK巡航ミサイル1発、カリブル巡航ミサイル10発、Kh-59/69巡航ミサイル3発であるとのこと。このうち、シャヘド型ドローン46機、Kh-101/555巡航ミサイル30発、イスカンデルK巡航ミサイル1発、カリブル巡航ミサイル4発の撃墜に成功したと、ウクライナ側は主張した。
ロシア領内の軍事目標に対する攻撃に米国供与の兵器をウクライナが使用することに関して米国が課した制約が、現状、不明瞭であることが、ウクライナ北部へのさらなるロシア軍越境攻勢の遂行を抑止する機会を失わせてしまっている。
※補足:米国供与兵器を使用したロシア領内への攻撃が、ウクライナ領ハルキウ州と接する国境周辺のロシア領内に限定されているのか、それとも、ハルキウ州以外の国境周辺のロシア領内も攻撃できるのかが曖昧であることがもたらす問題を、戦争研究所は指摘している。5月31日付のボイス・オブ・アメリカのインタビューのなかで、米国国家安全保障会議欧州担当部長のマイケル・カーペンターは、ウクライナが米国供与兵器を用いてスーミ州からロシア領内を攻撃できるかと問われた際に、「ええ、ロシア軍が国境を越えてくるのなら、その国境の向こう側に対して可能です。そうでないと、ロシア軍は比較的安全な聖域を享受することになってしまう」と「曖昧な」返答をしている。一方で、5月31日付のポリティコ報道によると、ウクライナ側は、米国供与兵器によるロシア領内攻撃が「ハルキウ州で接する国境地帯に制限されている」ことに不満を感じているとのことだ。
西側諸国が提供するF-16ジェット戦闘機をウクライナが今後使用することに関する条件が、国によって異なっている状況が続いている。
※補足:5月28日のベルギー首相発言によると、ベルギーがウクライナに供与するF-16は、ウクライナ領内でのみで使用できるとのことだ。ただし、ウクライナ領空からロシア領内に向けて攻撃することが許されるのかどうかは、ベルギー首相の発言からは分からない。一方でオランダの国防相は5月31日に、ウクライナが国連憲章第51条と国際人道法に従う限りにおいて、ウクライナはオランダ供与のF-16を「ロシア領空もしくはロシア領土内で(に対して)」使用することができると述べた。なお、オランダ国防相が指摘した国連憲章第51条の規定は「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない」という内容であり、戦争研究所は「ロシアによる侵略という文脈のもとでのウクライナによるロシア領内攻撃は、ウクライナが有する個別的自衛の固有の権利の一部をなす」と指摘している。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンシキー大統領は、ウクライナ軍予備旅団の一部が依然として戦力不足の状態であることを認めたうえで、米国からの支援の到着が遅れていることが、現在行われている防衛作戦に予備戦力を効果的に投入するというウクライナ軍の取り組みを難しいものにしていると指摘した。
クプヤンシク、チャシウ・ヤール、アウジーウカの各周辺において、ロシア軍は最近、わずかながら前進した。
ロシア司法省は6月1日、「Way Home」という社会運動を「外国の代理人」に指定した。「Way Home」は動員されたロシア軍兵士の親族による運動であり、これら兵士の動員解除を要求している。
要点(Key Takeaways)の原文
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