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【SNS投稿和訳】エミール・カステヘルミ氏:ウクライナ東部ポクロウシク方面の情勢分析(日本時間2024.09.01 11:27投稿)

上記リンク先から始まる一連のX投稿で、フィンランドの軍事史家・OSINTアナリストであるエミール・カステヘルミ氏が、ウクライナ東部ポクロウシク方面に関する戦況分析を行っています。

以下は、このカステヘルミ氏の連続投稿を日本語に翻訳したものです。なお、記事中の画像は、カステヘルミ氏の投稿に添付されているものを使用しています。また、[  ]内は、訳者による補足記述になります。

日本語訳:カステヘルミ氏のX連続投稿

[ウクライナ]東部戦線での最近の展開は、ロシア軍攻勢をウクライナ軍が抑え込めるかどうかに関して、深刻な問題が存在していることを示している。ポクロウシク[Pokrovsk]戦線はさらに大きな危機へと発展していく可能性がある。

この連続投稿で私は情勢を分析し、その背景にある原因も分析していくつもりだ。

ロシアはウクライナ東部の2方面での攻撃に注力している。それはポクロウシクとトレツィク[Toretsk]だ。ロシア軍はこの両地域で前進を続けており、とりわけポクロウシクでそれが顕著だ。

ここ2~3週間、状況は悪化の一途をたどっている。

ポクロウシクは約6万人の人口を抱える中規模の都市で、この戦争の全期間、極めて重要な兵站拠点になっている。というのも、この都市は鉄道網と道路網が合流・交差する地点に位置しているからだ。ポクロウシクは、隣接する小都市ミルノフラード[Myrnohrad]とともに、戦前人口で10万人を超える都市圏を形成している。

現在、ポクロウシクは深刻な脅威にさらされている。ロシア軍は10kmの地点に迫っており、主要道路の一部は閉鎖に追い込まれ、市民の脱出も行われている。ロシア軍の野砲とドローンが近づくにつれ、この都市でウクライナ軍が行動するのは、ますます困難になっている。

この狭い[ロシア軍の]突出部は夏の間、危険なほどに広がっていった。特に8月、それが進んだ。今や複数の村落が、ほぼ毎日、陥落している。

最近、ロシアは最大で14,000人の町であるノヴォフロディウカ[Novohrodivka]を奪取したが、それに要した期間は1週間に満たなかった。これまで通りなら、この規模の町を奪うには数カ月、もしかすると数年間という時間が必要だった。

はっきり述べると、ウクライナ軍守備隊は状況を完全にコントロールできていないようにみえる。ウクライナ側情報筋は複数の問題が同時並行的に生じていることを指摘し続けている。具体的には、マンパワーと砲弾の不足、連携に関する問題、部隊ローテーションがうまくできないこと、指揮能力の低さなどという問題である。

最近、メディアがクルスクにおけるウクライナの成功を大きくとりあげたことを考えると、上述した情勢は多くの人々にとって不思議なものに思えるかもしれない。

[ウクライナ軍総司令官]シルシキーによると、クルスク攻勢の目標の一つは、ロシア軍をウクライナ領内から、特にポクロウシク方面とクラホヴェ[Kurakhove]方面から引き離すことにあったということだ。

だが、この希望した結果は起こらなかった。ロシアはウクライナ領内からクルスクに部隊を送り込んではいるものの、あまり重要でない地域から送り込んでいる。クルスク攻勢があげた戦果は、ロシアがかなり大規模に戦場をロシア領内の大地へと移行せざるを得なくなるほど、大きな戦果ではなかった。

ウクライナ軍の攻勢を封じ込めることができたため、最も危機的脅威シナリオと、かなり大規模な突破は回避できた。国境付近の村落の一部がウクライナ側支配下のままになっているとしても、それをロシア軍が気にすべき理由は?  また、クルスクで反撃を行うためにロシア軍がほかの目標を犠牲にする理由は?

現時点で私たちが目にしているのは、全般的状況に対する、ロシア軍のかなり教義に沿ったアプローチである。ロシア軍は成功を強化していくことを進めており、大進撃できる可能性のあるエリアで戦果をあげることに重点を置いている。一方で、クルスクという問題はあるが副次的な方面は、安定化のみにとどめている。

ロシア軍の観点でいえば、クルスクに大戦力を送るためにポクロウシクでの作戦を中断したならば、それは非合理的なものであっただろう。ロシア軍が現在、ドネツィク州内で占領しているものすべては、クルスクで実際に失う可能性のあるもの以上に、ロシア側の政治的目標との関連でみると、価値あるものなのだ。

ウクライナにとって、ほかの方面を優先することによる機会コスト[*注:ある選択を選ぶことで失われた(選択しなかった)ものの価値]は、日に日に増大している。クルスク攻勢は停滞しつつあるが、かなり多くの数のウクライナ軍部隊が今でもクルスクに縛られている可能性は高い。現時点におけるウクライナ側プランがどのようなものなのかを把握することは難しい。

これまでのところ、野戦防御陣地によってロシア軍の前進を食い止めることはできていない。ロシアは現在、ポクロウシクとミルノフラードを守る主防衛線の突破を試みているところだ。この主防衛線は、戦術的に良好な地形に設けられた塹壕・対戦車障害物・強化防御拠点のネットワークで構成されている。

ロシア軍が接近し続けるなか、ウクライナはさまざまな地点で新たな野戦防御陣地の構築に取り掛かっている。だが、必要とされる、満足な数のマンパワーと支援部隊が存在しなければ、野戦防御陣地それ自体だけでは不十分なのだ。

ポクロウシクへの進撃と並行して、ロシア軍はクラホヴェ[Kurakhove]方向でも前進している。ここの高台の尾根に沿って前進することによって、ネヴェリシケ[Nevelske]とクラスノホリウカ[Krasnohorivka]の背後に広がる地域からのウクライナ軍の撤退を強要できる可能性がある。これは近々に起こるかもしれない。

ロシア軍ができる限り攻撃的かつ積極的に突進してくる可能性は高い。というのも、これまでドネツィクで大きな戦果を迅速に達成することは、極めて難しいことだったからだ。チャンスの窓は開いており、ロシア軍はウクライナ軍防衛網に最近生じたようにみえる亀裂につけ込もうと試みていくことになる。

だが、ウクライナ軍はまだ破局を避けることができる。局地的な過失が続いたとはいえ、ロシア軍が突破を達成することをウクライナ軍は許していない。さらに多くの予備戦力がポクロウシクへ送られつつあるという噂話も耳にする。これが事実なら、状況安定化の一助になりうるだろう。

ご一読、ありがとうございました。ウクライナ軍ができるだけ迅速に、この懸念される状況を解決できることを願っています。

私たち「ブラック・バード・グループ」のチームは、継続的に情勢のモニターを行っています。以下リンク先は、ブラック・バード・グループのインタラクティブ地図です。

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