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【SNS投稿和訳】ウクライナ軍元将校によるドネツィク州戦線情勢報告(2024.05.01時点)

このnote記事は、ウクライナ軍元将校Tatarigami氏(ハンドル名)がXに投稿したウクライナ東部ドネツィク州方面の情勢報告(日本時間2024年5月2日05:14投稿)を、日本語に翻訳したものです。なお、この記事で使用した画像は、すべてTatarigami氏のX投稿に添付されているものを使用しています。

日本語訳

情勢報告(2024年5月1日):チャシウ・ヤール、オチェレティネ、シヴェルシク

ロシア軍はオチェレティネ[Ocheretyne]付近とチャシウ・ヤール[Chasiv Yar]付近で戦術的な戦果を重ねつつある。また、シヴェルシク[Sivers'k]に向かう大規模な攻撃も試みている。フロンテリジェンス・インサイト[*注:Tatarigami氏が設立した戦争分析プロジェクト]は、この連続投稿で現在の情勢に関する簡潔な分析を提供する。

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現地からの報告によると、ロシア軍の集団が散発的にチャシウ・ヤールの運河を越えているとのことだ。だが、一時的なものであって、ロシア軍が橋頭堡を確立したわけではない。@giK1893が示した撮影地点特定可能な動画によって、チャシウ・ヤールから南方の陸橋が交わる地点で、ロシア軍が拠点を築こうとしている様子が確認できる。

この地域にロシア軍が優越した手段と戦力を集めたことを踏まえると、これは懸念材料だ。この地点は運河から西側にある森林内に進入する機会を与えている。うまくいけば、ロシア軍はさらに攻撃を進める方向を、複数の選択肢のなかから選ぶことができるようになるだろう。

チャシウ・ヤールの南部区画を失ってしまうことは、好ましくない結果を招くことになり、コスチャンティニウカ[Kostiantynivka]に続く道がロシア側に開かれてしまうことになる。コスチャンティニウカに向かう途上にある唯一の障害は、ストゥポチキー[Stupochky]という小さな村だけだ。とはいえ、現状、このような状況が差し迫っているわけではない。

オチェレティネ地区において、ロシア軍は戦術的な戦果を重ねている。そして、ロシア軍の前進方向から目標が推測できる。同軍はまずノヴォオレクサンドリウカ[Novooleksandrivka]への到達を目指し、次にヴォズドヴィジェンカ[Vozdvyzhenka]を目指している。これが達成された場合、ポクロウシク[Pokrovsk]とコスチャンティニウカ[Kostiantynivka]という超重要都市を結ぶ道路を、ロシア軍が遮断できるようになる可能性が生じる。

@Deepstate_UAの地図で示されている領土占領状況が正確な場合、この状況はロシア軍が強化陣地をすでに占領してしまっていることを示している。

なお、読者の皆さんでこの地域のウクライナ軍を支援したいと考えている方がいるなら、Xアカウント"@jana_skhidna"をチェックすることをおすすめする。@jana_skhidnaはボランティアとして、この地区の前線部隊に援助物資を継続的に届けている人物だ。

ビロホリウカ[Bilohorivka]~シヴェルシク方面において、過去48時間、敵軍はさまざまな方向から、複数の攻撃を仕掛けてきた。そして、これらの攻撃はKAB爆弾[*注:ロシア軍の空中投下型滑空爆弾]による一連の爆撃によって支援されている。現地からの情報によって、30分の間にだいたい8回のKAB爆弾による爆撃があったことが分かる。だが、これらの攻撃は撃退されている。

前線の状況は依然として厳しいままだが、安定化を目指す努力が進行中だ。西側から砲弾が届くことは、状況を改善するものとして期待されている。ロシア軍は戦果を重ねているけれども、戦線崩壊の予兆はない。

上述のロシア軍の戦術的戦果は小さなもののようにみえる。しかし、これらが累積することで、作戦レベルでの成功を引き起こす可能性がある。ロシア軍の最終目標は、複数梯形による二重の両翼包囲運動だ。小さな両翼包囲はバフムートの南方に展開する戦力の孤立化を狙っている。一方、さらに大きな両翼包囲運動は、ここの戦力全体を包囲することを目指している。

ウクライナはロシア軍の前進を遅らせることができるし、それを止めることさえできる。だが、いくつかの集落を失わずにそれを行うことはできない。戦略レベルと作戦レベルでの計画に欠落があるにもかかわらず、戦術レベルにおいて、将校と兵士たちは、状況を立て直すため、個人的にイニシアチブを発揮している。

たとえば、将校や兵士たちは個々に積極的に動くことで、防衛網を構築するのに必要な機械類を、寄付によって、また有志者から入手している。また、公式の訓練施設で適切な訓練を受けなかった新兵のために、即席の訓練も行っている。

ロシア軍の攻撃のほとんどに対しては、FPV[一人称視点]ドローンに支援された歩兵のおかげで対抗できている。これらドローン用の弾薬は即席の製造施設で今でも生産されている。EW[電子戦]による被害を避ける、もしくはFPVドローンの飛行距離を伸ばすための創造的な方法は、常に発展し続けており、個々人のレベルで取り組まれている。

全般的にみると、旅団に配属された将校や下士官兵の個人的な自発性によって進められている現場レベルの取り組みによって、そして、その取り組みに西側からの援助と、公表が許されていない情勢安定化のための措置が伴うことによって、現在の状況が改善していく可能性は存在する。

伝えるのを忘れていた重要な情報が一つある。ロシア軍がオチェレティネを制圧したことで、あるリスクが生じている。ロシア軍のオチェレティネ制圧は、ノヴォオレクサンドリウカに向かう以外のチャンスをロシア軍に示している。なぜなら、この集落を押さえたことで、コスチャンティニウカ地区の南方に向かって北進する道路に、ロシア軍はアクセスできるからだ。

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