【抄訳】戦争研究所「ロシアによる攻勢戦役評価」2035 ET 06.06.2024 《6月6日付報告書の要点》
Russian Offensive Campaign Assessment, June 6, 2024, ISW ⬇️
要点(Key Takeways)の日本語訳
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、西側との直接的な対立に関する、以前から飽きるほど繰り返されてきた脅威をあらためて加えようと試みた。今回の手法は、具体的な名指しは避けた勢力に、西側を攻撃する目的の長射程攻撃能力を、ロシアが提供すると主張するものだった。プーチンが脅す目的は、ウクライナが西側供与兵器を使ったロシア領内の軍事目標を攻撃できることに関する西側の意思決定に影響を及ぼすことにあるが、その脅しが、ウクライナにおけるエスカレーション、あるいは、直接的な対立を通してのエスカレーションの兆候を示していないことは注目に値する。このことが示唆しているのは、ロシアが、このようなロシアの脅威の信憑性に関する西側の認識を選択して調整している可能性があるということだ。
ロシア海軍の艦艇が6月12日から17日にかけて、キューバに寄港する見込みだ。これは、米国に自己抑制させようとする反射制御工作の一環としてキューバ・ミサイル危機という歴史的記憶を思い起こさせようとする、ロシアの広範な取り組みの一部である可能性が高い。
※補足:反射制御とは、自身が望む所定の決定を自発的に行うように相手を仕向けるべく、パートナー又は敵対者に特別に準備された情報を伝達する手段のこと。
(参考:長沼加寿巳「ロシアにとっての『認知領域の戦い』 —『反射制御」理論の誕生とその展開 —」⬇️)
https://www.mod.go.jp/asdf/meguro/center/aspw10/aspw07.pdf
ロシア軍がウクライナにおいて月あたり約2万人の死傷者を出している可能性があることを、6月5日にプーチンは意図せず示した。この数値は、これが正確であるならば、ロシアがひと月に集めているとされる新兵の人数とほぼ等しい、もしくはそれよりも若干下回る人数になる。
※補足:プーチンが意図せず示した数値は死者数のみで、月あたり約5,000人という人数を示した。戦争研究所(ISW)は戦死者と負傷者の比率が1対3になるという基準を用いて、負傷者約15,000人という人数を算出している。
支援相手国のパイロットにF-16ジェット戦闘機の訓練を提供する西側の能力に限りがあることが、ボトルネックを生じさせていると報じられており、このことは、ウクライナが今後、F-16を効果的に配備する能力に影響を及ぼすことになるだろう。
ウクライナ支援を弱める目的での、フランスを含むNATO諸国に対するロシアのハイブリッド戦争工作が続くなか、フランス当局は、親ロシア派によってフランス国内で最近行われた破壊工作と社会影響工作に関する捜査活動を進めている。
6月初めにフランス国内で逮捕事案があったことに続くかたちで、ロシア連邦捜査委員会は6月6日にフランス国籍者1名の逮捕を発表した。
6月5日から6日にかけての夜、ウクライナ軍はロストフ州内の石油精製施設を攻撃した。また、ベルゴロド州内の石油貯蔵庫も攻撃した模様だ。
ウクライナ最高会議の人権・脱占領・再統合委員会の副委員長であるルスラン・ホルベンコは、2024年にウクライナ軍が約12万人の兵員を集める見込みであると試算しているが、西側からの安全保障支援の到着が明らかに遅れていることによって、ウクライナがこれらの戦力に、装備や必需品を大規模かつ十分に支給する能力は、当面の間、制限されることになる可能性が高い。
ロシアとタリバンの双方の当局者が、二国間協力についての関心を表明した。このことは、ロシアが近々にタリバンをロシア国内での禁止組織団体リストから外す可能性が高いことを示している。
ロシア軍は最近、ヴォウチャンシク[Vovchansk]市内、クプヤンシク[Kupyansk]から南東の地点、シヴェルシク[Siversk]から北東の地点、アウジーウカ[Avdiivka]から北西の地点、ヴェリカ・ノヴォシルカ[Velyka Novosilka]の南方、クリンキ―付近で前進した。
※補足:前線の領土支配状況の詳細は、以下のインタラクティブ地図で確認できる。⬇️
ロシア国内で続く人口動態上の危機は、同国内の人的資本に対する長期的な制約になるだろう。
要点(Key Takeaways)の原文
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