本記事は、戦争研究所(ISW)の2024年3月10日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。
ロシア軍の能力向上型誘導式滑空爆弾
報告書原文の引用(英文)
日本語訳
能力向上型滑空爆弾を用いたウクライナへの爆撃をロシア軍が遂行していることを、ウクライナ軍当局者が確認し、報告した。ウクライナ軍タヴリーシク[タヴリヤ]部隊集団報道官ドミトロ・リホヴィー大尉は3月10日、ロシア軍がドネツィク州ミルノハラードを攻撃したことを伝えた。この攻撃に関してリホヴィー報道官は、S-300ミサイルによる攻撃だとウクライナ軍が当初は評価判断していたが、実際には3発の汎用諸種対応滑空弾(UMPB)D-30SNによる攻撃だったと述べた。また、能力向上型誘導式滑空弾であるD-30SNが、基本的にはソ連時代のFAB無誘導投下型爆弾を、誘導式滑空爆弾に転換したものであるとリホヴィーは説明した。以前のことになるが、ロシア軍はつい最近の2024年1月まで無誘導滑空爆弾を使っていた。そして、詳細不明のウクライナ領内でロシア軍が、汎用計画・修正モジュール(UMPC)付無誘導滑空爆弾を使わずに、FAB UMPB誘導式滑空爆弾による爆撃を行い始めたというロシア軍事ブロガーの主張を、ISWは近ごろ目にしている。あるロシア軍事ブロガー・アカウントの主張によると、UMPB誘導式滑空爆弾は、通信妨害対抗機能付グロナス/GPS信号受信機“Comet”を含む誘導システムを有しており、Kh-101巡航ミサイルと似た折りたたみ翼が付いているとのことだ。ロシア軍のUMPB誘導式滑空爆弾は、航空機と、タルナードSやスメルチのような地上配置の多連装ロケット砲システム(MLRS)から発射可能だと、ロシア軍事ブロガーは主張した。ロシア・メディアの一つは、ロシア軍機は現在、ジェット・エンジン無しのUMPBを投下しているが、ロシアは将来的にジェット・エンジン付きのUMPBの投入を予定していると主張した。ロシア軍事ブロガーの主張によると、現在、UMPC付航空機搭載滑空爆弾を欠いているなか、ジェット・エンジンと燃料タンクが付いたUMPB誘導式滑空爆弾は、「空対地巡航ミサイルと同じ」低高度から誘導式滑空爆弾をロシア軍機が投下することを可能にし、最大攻撃射程を80〜90kmに延ばすことを可能にするとのことだ。UMPB誘導式滑空爆弾による射程の延伸によって、ロシア航空宇宙軍(VKS)は、より前線の後方からウクライナ軍拠点を攻撃することができるようになり、その結果、ウクライナ空軍による探知、もしくは、ロシア軍固定翼機の撃墜というリスクを伴わずに済むようになると、ロシア軍事ブロガーは主張している。また、ロシアの国防産業基盤(DIB)がUMPB誘導式滑空爆弾を大量生産しようと現在、試みているところだと、ロシア軍事ブロガーは主張した。ロシア軍が今後、UMPBの生産を途切れることなく行おうとする可能性は高く、前線各所でのUMPBの使用を増やしていこうとする可能性も高い。