本記事は、戦争研究所(ISW)の2024年5月4日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。
ウクライナ戦況:ロシア軍、アルハンヘリシケ(アウジーウカから北西)を占領
報告書原文からの引用(英文)
日本語訳
アウジーウカ[Avdiivka]から北西の方向に位置するアルハンヘリシケ[Arkhanhelske]の周辺において、ウクライナ軍がこの地域から後退することを決心したことに続いて、ロシア軍が5月3日から4日にかけての夜に戦術レベルで前進したが、このロシア軍の前進は注目に値する。ロシア軍事ブロガー・アカウントの一つは5月4日に動画を投稿した。そこには第132自動車化狙撃旅団(ドネツク人民共和国[DNR]第1軍団)のロシア軍「ラヴィーナ[Lavina]」大隊隷下部隊がアルハンヘリシケで旗を掲げている様子が映っており、ISWはこの動画がアルハンヘリシケ北部区画で撮られたものであることを特定した。5月4日公開の別の動画で撮影地点特定可能なものによって、アルハンヘリシケ東側外周部でロシア軍が前進したことが分かる。ロシア軍によるアルハンヘリシケ占領は、ケラミク[Keramik]とノヴォカリノヴェ[Novokalynove](双方ともにアルハンヘリシケから南東方向に位置)もロシア軍制圧下に置かれている可能性が高いことを示していると、ISWは評価判断している。5月3日公開の撮影地点特定可能な動画には、ウクライナ軍がアルハンヘリシケ北部区画から撤退する様子が映っており、ロシア軍事ブロガーの主張によると、ウクライナ軍撤退後、ロシア軍は5月3日から4日の一晩の間でこの集落内に進んだとのことだ。有名ロシア軍事ブロガー・アカウントの一つは、ロシア軍がいくつかの段階を踏んでアルハンヘリシケ占領を目指す攻勢作戦を遂行したと主張した。その主張によると、まず一週間前にロシア軍はオチェレティネ[Ocheretyne](アウジーウカから北西方向、アルハンヘリシケから南西)から進み、次いでケラミク(オチェレティネの東方)から前進したロシア軍が5月3日にアルハンヘリシケを奪取したとのことだ。今後数週間のうちに米国からの支援が大々的に前線に到着するのを待つなか、ウクライナ軍が土地を犠牲にして時間を稼ぐ決断をした可能性がある。この決断は、背後を突かれるリスクを抱えたリソース不足の戦力にとって、適切な決心である。ロシア軍が、西側からの支援物資到着までの限られた時間という好機を、攻勢作戦の激化によって活用しようと目下、試みている可能性は高いと、ISWは以前から分析している。また、近いうちにロシア軍がさらなる戦術レベルの前進に成功する可能性があると、ISWはこれまで同様に分析している。
ロシア軍はアウジーウカから北西方向における戦術状況につけ込むことを選択しつつある模様だが、これは軍事的にみて適切な行動といえる。しかし、ここの戦線地域におけるロシア側の最終的な目標は依然としてはっきりしないままだ。今後の近いうちで戦術レベルでの戦果が最も達成できそうな地点につけ込んでいくことを、ロシア軍は選びつつあるようにみえるが、ロシア軍がトレツィクに向かって北進し続けることになるのか、それともこれまでの目標であるポクロウシク[Pokrovsk]に重点を置くことになるのかは不明瞭だ。ロシア軍はすでにおおむね1個師団相当の戦力(主に中央軍管区[CMD]に所属する複数個旅団で構成されている)をアウジーウカから北西の地点に投入しており、この地域全体へとさらなる追加戦力を呼び寄せつつあったことも報じられている。ロシアが第55自動車化狙撃旅団(CMD隷下第41諸兵科連合軍)隷下部隊をノヴォバフムティウカ[Novobakhmutivka]地区に投入したと、ウクライナ側情報筋は最近、報じている。アウジーウカから北西の地点での戦術状況につけ込める好機が存在した限りにおいて、ロシア軍がこの地区での突進を続けた可能性は高い。