本記事は、戦争研究所(ISW)の2023年9月25日付ウクライナ情勢評価報告の一部を引用し、日本語に翻訳したものである。なお、本記事のサムネイル画像は、現代戦争研究所(MWI)の“市街戦プロジェクト”ウェブサイトに掲載されているものを使用した。
日本語訳:
ウクライナで戦うロシア軍のニーズに沿って戦力を増強する取り組みを、ロシア軍当局者は続けている。ロシア報道メディア「イズベスチア」は、ロシア軍内の情報を引用するかたちで、ロシア軍が諸兵科連合軍と新設の軍団内に偵察・突撃旅団を編成していると9月25日に主張した。また、これらの旅団は、すでに募兵作業を熱心に行っていることも報じた。イズベスチア報道によると、この新部隊は重層防御陣地の突破を目的とした突撃部隊と、「戦術規模の縦深」への偵察を遂行することになる偵察部隊で構成される予定で、各旅団は戦車・軽装甲車両・火砲・各種ドローンを装備する予定だとのことだ。イズベスチアが強調して伝えているのは、この新旅団は、ウクライナ軍がすでに構築した防御陣地に打ち勝つことを意図しており、とりわけドンバス地域のウクライナ軍陣地の打破を意図しているとのことだ。なお、2014年の第一次ロシア侵攻以来、ウクライナ軍はドンバスにおいて、強化防御陣地の拡張と整備を続けている。ロシア空挺部隊連合会長のワレリー・ユリエフ大佐はイズベスチアに対して、この戦争がはっきりと示したのは、「要塞化地区への突撃に特化した部隊をもつ必要性」であり、「独立した突撃部隊編制の存在が不可欠である」ということだと語った。
ロシア軍は以前から、今回同様、強襲任務に重点を置いた中隊規模の部隊をつくることによって、ウクライナの戦場で得た教訓に適応しようと試みてきた。この中隊規模の部隊は「シュトルムZ」中隊という編制で、市街地と要塞化地区での攻撃を意図したものだった。シュトルムZはドネツィク市〜アウジーウカ戦線沿いとルハンシク州〜ハルキウ州戦線において、主に任務を行ったが、ほとんど成果があがらなかった。ISWはこれまでもロシア軍改革、新たな諸兵科連合軍及び軍団規模部隊の設立を報告してきた。だが、ロシア軍が現在も直面している根深い戦力動員上の問題の大きさを考えると、戦力構築に関わるロシア軍内の組織が、旅団、軍や軍団といった規模の部隊に関する募兵・訓練・人員配置を、どれほど行えるのかどうかは不明なままである。