本記事は、戦争研究所(ISW)の2024年5月15日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。
ウクライナ戦況:ハルキウ州北部情勢
報告書の一部日本語訳
ハルキウ州北部でのロシア軍攻勢作戦のテンポであるが、ウクライナ当局者が今やあまり防護されていなかったことを認めている地域をロシア軍が初期段階に奪取したのち、その攻勢のテンポは下がり続けている。ウクライナ大統領ウォロディミル・ゼレンシキーとウクライナ軍当局者からの話によると、ロシアと国境を接するハルキウ州北部の情勢を、ウクライナ軍は部分的に安定化させているとのことだ。ウクライナ軍ホルティツィア部隊集団報道官ナザール・ヴォロシン中佐は、ロシア軍がさらなる前進のための足場を築こうと、ルキャンツィ[Lukyantsi]周辺とヴォウチャンシク[Vovchansk]周辺において戦術規模で領土を広げようと試みていると述べた。だが、ウクライナ軍の反撃や砲撃、ドローン攻撃がこれらの地区でロシア軍が足場を築くことを阻止していると、同中佐は指摘した。5月15日のハルキウ州行政当局者の話によると、ロシア軍が継続的に砲撃を行っていることによって、ウクライナ軍はハルキウ州内の国境から3~5km圏内で防御施設を構築することができないとのことで、同軍は国境から12~13km離れた地点に第一防衛線を、20km離れた地点に第二防衛線をそれぞれ構築したとのことだ。なお、ISWは現在、ロシア軍が国境から8kmしかハルキウ州北部内に進入できていないと判断している。また、ロシア軍が自国領内で行動する場合、同軍は国境に近い位置のウクライナ軍防御陣地に対して容易に砲撃することができ、西側供与の兵器システムを使ってロシア領内の後方地域を国境越しに攻撃することが禁じられていることにより、国境近くに設置されていると思われるウクライナ軍防御陣地は脆弱な状況になっており、防御できない状態になっている可能性もある。ハルキウ州北部でウクライナ軍が意図的に大規模な防衛線を設けなかった地域において、5月10日以降、ロシア軍は戦術レベルの前進ができている。そして、同軍は現在、ハルキウ州内奥へと突破進入を行うよりも、「緩衝地帯」の構築を優先しているようにみえる。
※参考:戦争研究所制作 ウクライナ領土支配状況評価 インタラクティブ地図 ⬇️
報告書原文(英文)の日本語訳箇所