以下は、戦争研究所(ISW)の9月20日付ウクライナ情勢評価報告から、その記述の一部を引用し、それに日本語訳をつけたものである。また、記事中で使用した画像は、報告書原文に添付されているものを転載した。
日本語訳:
9月20日、ウクライナ軍はバフムート周辺及びザポリージャ州西部で攻勢行動を続けた。ウクライナ軍参謀本部は、ウクライナ軍が攻勢作戦を続け、メリトポリ方面(ザポリージャ州西部)のロシア軍のマンパワーと装備に、かなりの損失を与えたと発表した。ウクライナ軍参謀本部はまた、ウクライナ軍がバフムート方面でも攻勢行動を続け、新たに確保した戦線を固めているところであるとも報じた。英国国防省は、ウクライナ軍がクリシチーウカ(バフムート南西7km)とアンドリーウカ(バフムート南西10km)の陣地を確保したという評価を示した。また、ロシア軍が空挺軍(VDV)部隊をバフムートからザポリージャ方面へと再配置したことで、バフムート周辺のロシア側防衛力が弱まっているという評価も示した。第83独立空中強襲旅団に属する部隊がザポリージャで活動中であることを、ISWはすでに確認してはいるものの、どれほどの規模でバフムートからの部隊配置転換がなされたのかについては、はっきりと分かっていない。また、ウクライナ軍東部部隊集団報道官イリヤ・イェウラシュ大尉のコメントによると、ロシア軍がクプヤンシク〜リマン方面での攻撃を再開する前に、ウクライナ軍は防御陣地の用意を進めているとのことだ。
日本語訳:
ロシア軍司令部は、バフムート南翼の失地を急ぎ回復するために、自軍将兵に対して「十分な検討もなく支援もない」反撃を実行するように命じているということを、ロシア軍兵士とロシア軍事ブロガーが明らかにした。アルタイ地方の第1442連隊第1大隊(動員兵部隊)隷下部隊が、嘆願動画を公表した。その動画のなかで兵士たちは、突撃部隊を編成してバフムート方面で攻撃を実行せよという命令をロシア軍司令部から受けとったのち、クリシチーウカ(バフムート南西7km)で軍用装備を放棄したことを明らかにした。この兵士たちの発言によると、ロシア軍司令部は様々な出自の兵員を前線に投入し始めており、そこには最近まで後方で休息中だった兵士も含まれているという。また、それらの兵士には、問題なく機能する砲弾が支給されていないということも語っている。その砲弾は発射しても爆発しないと兵士たちは述べており、ロシアの国防産業基盤(DIB)が砲弾製造の加速に取り組み、本来必要な品質保証措置を省略していることの兆候である可能性が高い。この兵士たちがさらに加えて語った内容によると、ウクライナ軍がこの地区において、詳細不明のロシア軍1個連隊の大半を撃破し、後退してきた攻撃部隊のほぼ全戦力も撃破したという報告を知って以降、自分たちの部隊は士気が低下して、どうしようもなくなっているとのことだ。また、自分たちには事前に整えられた陣地がなく、ウクライナ軍は火砲をもっているのに、自分たちが頼るものは小火器しかないという事情も兵士たちは明らかにした。第1442連隊の兵員の親族は、ウラジーミル・プーチン露大統領への嘆願をすでに行っているが、それは9月14日に突撃の遂行を拒否した兵員を指揮官が殴打したことがあったのちのことだった。
ロシア軍事ブロガーの一人はまた、ロシア軍司令部が反撃に適する状況をつくることなしに、ロシア軍将兵にアウジーウカ(バフムート南西10km)とその周辺の奪還を命じたことを非難した。この軍事ブロガーの主張によると、ロシア軍司令部は「劣弱な」反撃を計画し続け、ロシア軍攻撃部隊に正確な情報を提供できずにいるとのことだ。ロシア軍は砲兵支援にも欠いており、その一方で「ヒステリックな」反撃を行うことによって、ロシア軍のリソースと予備戦力は低減していると、この軍事ブロガーはみている。また、この軍事ブロガーは、アウジーウカ地区に隣接する高地上のロシア軍防衛網がすでに崩壊してしまっていると主張し、失地回復を目指すロシア軍司令部の努力が、バフムート南翼におけるロシア軍の新たな防御陣地の準備を妨げ続けているとも主張した。
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