本記事は、戦争研究所(ISW)の2024年3月15日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。
ウクライナ支援が滞るなか増大するロシアの脅威
報告書原文の引用(英文)
日本語訳
ロシア軍は、2024年春にウクライナ側防衛線の不安定化を目的として現在進行中の攻撃を続け、その間、2024年夏季に発動が予測される新攻勢の準備を進めるつもりである可能性が高い。ウクライナが現時点で領土を保持し、これからの数カ月間にロシア軍が起こす攻勢を撃退できるかどうかに関して、死活的に重要な役割を演じることになるのが、西側の安全保障支援になる可能性は高い。(. . .)
(. . .)十分に物資が供与されたウクライナ軍が、ロシア軍による大規模な攻勢遂行に直面した際、わずかな戦果でさえロシア軍に与えずにいることができたことを、ウクライナ軍は今まで示してきた。そして、物資不足が緩和されれば、ウクライナが戦線をさらに安定化させることができ、伝えられているロシア軍の夏季攻勢を撃退する準備を行うことができることを疑う理由はまったくない。
今後数カ月間にロシア軍が大きな戦果をあげることは脅威であるが、そのことは、この春の攻勢作戦を通してロシアがこのような戦果をあげてしまうことへの脅威がないことを意味していない。この春にロシア軍が達成した、これまでと比較すると成功といえるものは、戦術レベルでの成功かもしれない。しかし、この成功は、ロシア軍がこの夏に作戦レベルでの大戦果を目指すための条件を整えることになる可能性がある。十分に物資が与えられたウクライナ軍は、2024年の春も夏もロシア軍の大進撃を阻止できる可能性が高い。ただし、それは十分な規模の西側からの安全保障支援が、今後数カ月のうちに届く場合に限ってのことであり、また、ウクライナ軍が現在の物資不足に対処でき、さらに、これからの防衛作戦を準備して持続させることができるかたちの支援である場合に限ってのことだ。
切迫する防空システムとミサイルの不足は、これがすみやかに対処されない場合、今後の数週間のうちに、後方地域と前線地域の双方で、ロシア軍のミサイル等による爆撃に対するウクライナ側防御能力を劇的に低下させる可能性が高い。(. . .)
ロシア軍はウクライナにおける戦闘に順応する能力を示し続けている。また、NATOとの長期にわたる対峙の可能性に備える目的で現在行っているロシア軍の取り組みの基準として、ウクライナでの戦争で学んだ教訓を、ロシア軍が利用するつもりでいる可能性も高い。(. . .)
ヨーロッパの複数の高官が強調しているのは、ウクライナでロシアが勝利した場合、NATOの安全保障への戦略的な脅威を、ロシアがもたらす結果になるということだ。(. . .)