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【SNS投稿和訳】ウクライナ戦況概説 2023.07.27(Emil Kastehelmi氏)

以下は、フィンランドのOSINTアナリスト・軍事史家Emil Kastehelmi氏がTwitterに投稿した現時点(投稿日時:日本時間2023年7月28日1時32分)でのウクライナ戦況の解説を、日本語に翻訳したものになります。原文(英文)は以下リンク先を参照してください。

ウクライナ東部及び南部において、ウクライナ軍反転攻勢の新たなフェイズが進行中のようであり、一方で北部ではロシアが攻撃を進めている。

このスレッド[*原文はTwitter]では、鍵となる出来事と動向を確認し、戦場の全体像のなかでの現況の意味を説明していく。

ウクライナ軍は今までと同じ方面で反撃を進めている。最も中心的な動きは、ロボチネとスタロマヨルシケで見られる。またバフムート地区では強力な突進が進行中だ。同時期にロシアは、ルハンシク〜ハルキウ戦線上の複数箇所で攻撃を仕掛けている。

ウクライナは南部である程度成功している。ウクライナ軍はロボチネの東方で前進中で、スタロマヨルシケの集落内北側へと進入している。ロシア側情報によると、ウクライナ軍はウロジャイネにも突入したとのことだ。

これはよいニュースではあるが、そうであったとしても、私たちが語っているのは、戦域全体のなかのかなり限定的な戦果についてである。

バフムート南方の情勢は、ウクライナ軍にとって好ましいものだ。おそらくウクライナ軍はクリシチーウカに突入した。だが、ロシア軍が依然としてこの集落の北部を保持している可能性は高い。この地区の最大進出線が現在どこに位置するのかは、少々はっきりしない。

ロシアはまた、ルハンシク〜ハルキウ戦線で進撃しようとしている。クレミンナ地区にある森林地帯で、ロシアは何らかの戦果をあげている。セレブリャンカ森林地帯での戦闘は、昨秋以降続いており、ウクライナ軍は今でもこの地域の地歩を概ね保持し続けている。

スヴァトヴェ東方[*原文ママ、実際は「西方」と思われる]で、ロシア軍がジェレベツ川を渡河している可能性は高い。幾つかある集落の状況は不明で、相反する情報が存在している。

親露派チャンネルが様々な主張をしているにも関わらず、この地域における、ロシア軍のかなり大規模な前進を示す証拠資料はまだ出てきていない。

ある程度、小規模な進撃をロシアができているとはいえ、ロシアは突破前進を上手く達成する能力に欠いている模様だ。ロシア軍がこのような能力を、突然、何とか身につけてしまうという兆候はない。この問題は、ロシア軍にずっと付きまとっている問題である。

もちろんロシアは局地的な兵力・火力優勢を生み出すことができる。しかし、このことは、ロシア軍が戦場で何か戦略的意味合いを含む戦果を達成できることを、意味するものではない。ルハンシク〜ハルキウ戦線のほとんどの地区で、少しでも現実味のある戦略的な目標を見つけることでさえ、私には難しいことだ。

北部でのロシア軍の行動は当然のことながら、ウクライナ軍部隊をそこに縛りつける。そして、ウクライナは攻撃を撃退するために貴重なリソースを費やさねばならない。だが一方で、攻撃することは、ロシアにとっても損失が生じることになる。そう考えると、この行動がロシア軍予備の使い方として適切なのかどうかという疑問が湧く。

ウクライナ軍も前に進もうと苦闘している。何らかの成功の兆しは存在するが、それを阻害する主要素もいまだに意味をもっている。ロシア軍の準備は整っており、広域な防御陣地が存在する。また、ロシア軍防衛作戦を脅かすマンパワー不足が即座にみられる様子もない。

ウクライナは最近、他の行動とともに、ロシア軍野砲、多連装ロケット砲、その他後方目標に対する攻撃を集中的に実施している。適切に代替するのが困難な能力を防御側が急速に失い始めた場合、このような攻撃の結果として、ウクライナ軍にとって好ましい進展が今後数週間で生じる可能性がある。

幾つかの好ましい兆候はあるものの、ほぼ2カ月間の戦闘を経ても、ウクライナはロシア軍第一防衛線あたりで、今でもほとんど動けていない。だが、状況は進展しており、最終的な結論を導き出すのは時期尚早だ。とりわけロボチネでの突進は、何かが起こり得る可能性をもっているのかもしれない。

両陣営ともに突破達成への競争の最中にあり、突破に成功すれば、相手に重点転換を強要できるようになる。もしウクライナ軍が現地戦力でロシア軍を食い止められず、西側製装備で武装した未損耗の旅団の多くを北方へ移さざるを得なくなった場合、必然的にほかの地区でのウクライナ軍の取り組みは弱体化することになるだろう。

同じリスクはロシアにも当てはまる。もしロシアが北部での行動に集中することにこだわり、その間に南部方面で予備戦力と装備が減じていくことになれば、ウクライナ軍は最終的に重要な成功をおさめることができるし、現にこの状況を自らが有利になるように活用できている。

さて、私はあまり頻繁に投稿できないかもしれません。どうなるかは分かりませんが。なぜかというと、私は今、ラップランドにいて軍事史に関するドキュメンタリーの仕事をしたり、刊行予定の本のための史料(資料)を集めたりしているからです。

今でも、私と@Black_BirdGroupの私たちのチームは、最新情勢のマッピングを続けています。

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