【抄訳】ウクライナ・シンクタンク"防衛戦略センター(CDS)"報告書「ウクライナにおけるロシアの戦争 2024.09.12 作戦情勢」 - 総括(General Conclusion)
Russia's war on Ukraine. 12.09.24 Operational situation, CDS ⬇️
以下は、ウクライナのシンクタンク「防衛戦略センター(CDS)」の9月12日付ウクライナ戦況報告書から、「総括(General Conclusion)」の箇所を日本語に翻訳したものです。なお、翻訳文中の[ ]内記述は、訳者による補足説明になります。
また、原文はテキストのみですので、内容理解に役立つようDEEP STATE制作地図の画像を添付しました。画像キャプション中のURLをクリック/タップすると地図ページにアクセスできます。
「総括」の日本語訳
クルスク州に展開する[ウクライナ軍]「シヴェルシク」作戦部隊集団[OTG]の西側面に対して、ロシア軍は反撃を行い、コレネヴォ[Korenevo]から北東方向と南方向に位置するいくつかの集落を奪取した。このロシア軍反撃の規模・範囲・想定されうる今後の進展は不明瞭なままであるが、全般的な情勢は落ち着いている。
「シヴェルシク」OTGは、スナゴスト[Snagost]から西の方向とクルスク州内ウクライナ側突出部全域で新たな攻撃を開始した。
クラマトルシク方面のウクライナ軍防衛部隊は、敵軍[=ロシア軍]爆撃機とUMPK[*注:汎用滑空修正モジュール(既存の無誘導爆弾を滑空爆弾に変える追加装備)]を付けた滑空爆弾の双方に対抗するに足るだけの防空システムを保有していない。
ポクロウシク方面で攻撃中のロシア軍戦力が消耗することによって、ロシア軍はこの方面での攻勢行動を、目的達成以前に中止せざるを得なくなる可能性がある。
敵軍の作戦戦域総司令部は、ロシア軍「中央」作戦集団と「南部」作戦集団の各担当地域が隣接する地点に、投入可能な戦力を最大限、展開させているところだ。「中央」作戦集団(第2諸兵科連合軍+第41諸兵科連合軍から分遣された第90戦車師団)は、第1・第9・第114独立自動車化狙撃旅団に、第51諸兵科連合軍所属第110独立自動車化狙撃旅団からの分遣部隊及び第428自動車化狙撃連隊を加えた戦力によって、増強された。また、「南部」作戦集団は、第5独立自動車化狙撃旅団、第110独立自動車化狙撃旅団の主力部隊、第51諸兵科連合軍から分遣された第114独立自動車化狙撃旅団の1個大隊によって増強された。
敵軍は、セリドヴェ[Selidove]へ向かう前進も、ミハイリウカ[Mykhailivka]方面からのセリドヴェへの進入もできていない。しかし、セリドヴェから南の方向での[ロシア軍の]突破によって、セリドヴェの防衛はかなり難しいものになりつつある。
今後の敵軍の進撃軸で最も脅威となるのは、ノヴォフロディウカ[Novohrodivka]~スヒー・ヤル[Sukhyi Yar]軸線であるようにみえる。この進撃軸において敵軍は、リシウカ[Lisivka]に向かって何とか押し進むとともに、ソロナ[Solona]川沿いでも前進している。
[ロシア軍]「中央」作戦集団司令部は、ポクロウシク周辺において、古典的な包囲作戦を遂行することができていない。その原因は、[ウクライナ軍]「タウリヤ」作戦戦略部隊集団[OSG]による強固なセリドヴェ防衛にあることに加え、シェウチェンコ[Shevchenko]~チュニシネ[Chunyshyne]~ダチンシケ[Dachynske]~ノヴィー・トルド[Novyi Trud]地域における強力な防衛にもある。また、「タウリヤ」OSGがカゼンニー・トレツ[Kazennyi Torets]川という障害線上に堅固な防衛線を築いた結果、ミルノフラード[Myrnohrad]~マリニウカ[Malynivka]防衛線に敵が到達できていないことも、その理由の一つである。
ロシア軍は戦術レベルと作戦-戦略レベルの予備部隊を編成しているところだ。2023年10月から2024年6月の間に、敵軍は作戦レベルと戦略レベルの予備戦力として、最大で6万人の兵力を集めているが、これは限定的な予備部隊をつくるという点においては十分な数である。
ロシア軍は2022年中頃以降、大隊戦術群(BTG)という編制を大規模なかたちで用いてこなかった。ロシア軍がBTGを用いなくなった理由は、BTGがこの戦争の初期時点で戦闘目標の達成に失敗したことと、キーウやシェヴェロドネツィク、マリウポリ、リシチャンシクを巡る攻勢作戦の際、BTGに甚大な損害が生じたことにある。この2年間、ロシア軍は制度的な編制としてBTGを用いることを放棄してきたが、クルスク州でBTGが再登場したということが事実ならば、それは大きな転換を意味することになる。
「総括」原文(英文)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?