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新マリッタ馬宿はなぜ移転したのか - ゼルダTotK

  • 『ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム』クリア済の方が対象

  • 前作『ブレスオブザワイルド』もクリアしている前提で進める

  • ゲームの攻略方法自体を示すのが目的ではない

  • 読了時間 約62分(約31,000字)


この記事の目的

「新マリッタ馬宿ってどこだっけ?」という方のために確認しておくと、それは監視砦からリトの村への道中にある馬宿であり、インパと最初に出会う場所である。しかし実はマリッタ馬宿は前作ブレワイではもう少し北にあったのだ。移転したので「新」マリッタ馬宿ということだが、なぜ移転したのだろう?

新マリッタ馬宿にいる彼の話によると移転の理由は「ヘブラの寒波の影響」と「地上絵で客を呼び込むため」の二点。しかしこの記事で求める答えはそういう答えではない。シナリオ的な理由ではなく、ゲームとしての理由があるはずだ。もちろんそれはゲーム内で直接伝えられることは無いが、推測して解釈することはできるだろう。

あとで詳しく語るが、理由の一つは、今作の拠点である監視砦からリトの村への誘導のために必要だったからだろう。それはマップで確認すれば明らかである。またインパから地上絵の説明を聞くことも重要なので、見逃さないようにしてあると考えられる。ついでに言うとこの場所のなだらかな斜面は最初の地上絵の配置にも最適である。

今作におけるこのような変更は非常に多く、いま挙げたのは一例に過ぎない。今作ティアキンのフィールドは見た目こそ前作ブレワイと似ているが、実際にプレイするとその内容や誘導の仕方は異なっていることに気づく。

この記事では、今作がアクションゲーム初心者から前作経験者まで含めたすべてのプレイヤーをゴールまで導くために、前作のフィールドやシステムをいかに再設計したかを明らかにしたい。

流れとしては、まず典型的な攻略手順に沿って具体的な意図を解釈し、そのあとで一般的な解釈をしたいと思う。

実は前作ブレワイについても同様の記事を以前書いたが、今作はゾナウギアなどの新要素が存在するため「典型的な攻略手順」を考えることが前作以上に困難である。やろうと思えば目的地だけを飛び渡るようなことも出来てしまうことは承知のうえで、原則として陸路のみで攻略する場合について考える。他のプレイスタイルについては後で考える。

砂塵を文明の力で攻略する例。

なぜ何度も水面に飛び込ませられるのか

緊迫のプロローグを終えて目覚めの間を出ると、なぜか何度も水面への飛び込みをさせられる。下が水面であれば落下ダメージを受けないことを繰り返し強調している。

もちろん現実ではありえないことだが、ときにはリアリティよりゲーム性が優先されるというのは前作ブレワイから同じである。落雷の特性などが分かりやすい例だ。水面への飛び込みはパラセール入手後は目立たない仕様となるので、むしろ演出面での役割が大きいかもしれないが。

現実でもゲームでも、一般的に落下とはリスクを伴う行為である。しかし今作ではスカイダイビングを何度も繰り返すことになるので、落下への恐怖心があるとすれば早い段階で和らげておく必要がある。

でも痛そう。

視線の誘導

遠い目的地(時の神殿)と近い目的地(右の端末)

特にムービー明けのカメラアングルには次の行き先を伝える明確な意図を感じることが多い。このような調整は今作の最初から最後まであらゆる場所でされている。カメラアングルだけでなくフィールドそのものが視線誘導を考慮して作られていると考えられる。

たとえば始まりの空島で最初に巡る三つの祠も、それぞれの祠を出た直後の立ち位置から他二つの祠が見えるようになっており、マップピンが打ちやすくなっている。

右はともかく左は明らかに意図的。

落ちている素材で誘導するのも常套手段である。目覚めの間から飛び降りてタイトルロゴを見たあと、順路は右なのだが、 左に落ちているリンゴを拾いに行くと戦闘ゴーレムと初めての戦闘になる。やっていることはイーガ団のバナナ罠と同じ。

最初の戦闘ゴーレム。
「右に行かないで~」
コーガ様戦のあと

例を挙げるとキリがないが、とにかく視線誘導は基本的な誘導の一つであり、今後の説明でも大前提となる。

時の神殿からどこに飛び込ませるか

時の神殿からハイラルの大地に降りる際に飛び込む池は中央ハイラルの「底なしの池」だが、ここは前作では魔物の拠点がある「底なしの沼」だった。

前作の底なしの沼。奥はハイラル城。
今作の底なしの池。歴史改変された?

この沼から池への変更は単なるゲーム上の都合かもしれないが、シナリオ的な考察対象にもなりうるだろう。底なしの池の水は始まりの空島から流れ落ちていると仮定すると、この池は「始まりの空島が昔から上空にあった」証拠となる。しかしこれは人々が「空島は天変地異のときに突如現れた」と言っていることと完全に矛盾する(長くなりそうなのでここまで)。

中央ハイラルには前作からコモロ池という場所もある。コモロ池は今作の龍の泪の記憶にこっそり登場している場所であり、前作でもウツシエの記憶スポットになっていた場所である。最初に飛び込む場所としてもふさわしい気がするが、監視砦から遠すぎるのが難点だったのだろう。

監視砦に近いという意味では、底なしの池の北にある無名の池のほうがより近いのだが、こちらは最後にゼルダと共に飛び込む池となっている。もしこの真上に始まりの空島があったら都合が悪そうだ。

ハイラル城地底最深部へ直行できるか

プロローグで登場した黒幕らしきミイラがハイラル城の地底に落ちていったことを我々は知っている。さっそく倒しに行こう。「なんでそんなに急いでるの?」という声が聞こえてきそうだが、フラグを無視しても攻略できるのが前作の魅力のひとつだったので、確かめに行く人はそこそこいるはず。

ハイラル城の深穴を降りていくとまずエレキライクやホラブリンが配置されており、さらにその先のライネルが待つエリアへの道はかなり見えにくい位置にある。敵の数も多く序盤の装備では倒しきれないだろうから、しっかり探索できず行き止まりだと勘違いしてしまうような作りになっている。ただしルートが分かっていれば全員無視して駆け抜けることは可能だ。

がんばり未強化でもジャンプ連打でちょうど登り切れる高さ。

ハイラル城の地底はまともに進もうとすると険しい道のりなのは知っての通りだが、実はほとんどの敵を無視して魔王の軍勢の所まで行くことができる。しかし魔王の軍勢との戦いはさすがに多勢に無勢であり、RTA走者並みのプレイヤースキルがない限りこの時点でのクリアは厳しい。腕に覚えのある方は挑戦してみてほしいが、たぶんチューリのように仲間の大切さを身をもって知ることになる。

余談:このエリアの救援イベントはメインクエスト進行状況によって複数のパターンがある。まず賢者を一人も開放していない状態で行ったときは救援はなく、魔王の軍勢→神殿ボス5体→ファントムガノンと連戦しなければならない。一部の賢者だけ解放した状態で行ったときはその賢者のみ救援してくれる。コーガ様イベント未消化で魔王の居場所を知らないときは神殿ボス登場時の賢者たちの台詞が変わる。またマスターソード未回収の場合は黒龍戦の前に回収イベントが挿入される。このようにあらゆるパターンで違和感が少なくなるように工夫されている。ちなみに前作でも神獣未クリアでハイラル城本丸に行くとカースガノンと連戦しなければならなかったが、それによる会話の変化などは無かった。

監視砦はなぜここなのか

各地方にアクセスしやすく、特に「最初のエリア」となるリトの村(理由は後述)へのアクセスが良い。鳥望台からジャンプすれば浮上したハイラル城にも簡単に入れるし、始まりの空島から飛び込む底なしの池から遠すぎないのも良い。

ついでに言うと鳥望台が監視砦の中で北西にあるのは、始まりの空島が南東にあるからというのもあるだろうが、鳥望台からジャンプしてそのまま正面に進めばリトの村方面に向かえるから、というのもあるかもしれない。

ほかの理由として、フィローネ地方から遠いことが挙げられる。フィローネ地方は四地方を攻略したあと行くことになるので、序盤で迷い込むことがないように距離を離したうえで、ハイリア大橋にグリオークまで配置して封鎖している。監視砦のNPCからウオトリー村への誘導はあるが、プルアからの案内はハテノ村に行くまではされない。

見出しの問いのシナリオ的な答えは「ハイラル城を監視しているから」だが、演出面で考えると、前作経験者に対してかつての危険地帯が味方の拠点になっているという新鮮さを与えるし、さらに言えば現在は避難壕への入り口になっている中央の式典場跡はかつて各部族の英傑たちが集った場所であるという背景にも思いを馳せたくなる。

監視砦に行かなかった場合

時の神殿でマスターソードが消滅した後、雲海の下から白龍が現れ、その後カメラが地上の監視砦をアップにする。これは先述した視線の誘導であると同時に、次の行き先に注意を向けさせることによって白龍から意識をそらす効果も兼ねた上手い演出だと思う。

監視砦がアップになり・・・
ドン!

しかし意外にも「監視砦に気づかなかった」あるいは「行く必要があると思わなかった」という報告を複数見かけた。

監視砦に行く最大の意味はパラセールを取ることだが、これを取らずにインパの気球に乗ると、詰みではないが少し困った状況になる。個人的にはカメラアングルだけで十分伝わるし、そのほうが自然に感じられるので好みなのだが。もちろん冒険手帳でも目的地を確認できる。

降りた後も誘導はある。
鳥望台も起動できない。
ハイラル城の偽ゼルダも出現しない。

とはいえ絶対に監視砦に行かなくてはならないかと言うと、実はそんなことはない。行かなくても賢者の解放とコーガ様イベントは進められるし、エンディングも見られる。パラセールと鳥望台が使えないのでもちろん行ったほうがいいが、一種の縛りプレイとして楽しむことは出来る。
パラセール無しだと地底に降りられないと思われるかもしれないが、方法はたくさんある。一部の深穴は下が水面になっているし、翼や気球などのゾナウギアでゆっくり降りる手もある。直接描写されていないがロベリーや調査隊員、イーガ団員らは恐らく気球で降りている。また素直に落ちて妖精で復活する力業もある。ハイラル城地底最深部への道中は崖掴まりで落下キャンセルできる(やや難しい)。
ちなみに監視砦に行かないとミネルだけは解放できないので、パラセール無しで真エンドを見ることはできない。

橋が無いので作ってみたり。
このパターンの会話もちゃんとある。
各地方で誘導はされている。

ワッカ遺跡はなぜ追加されたか

ワッカ遺跡は監視砦からカカリコ村の位置を確認する目印になっている。前作には無かったが、なぜ追加されたのだろうか。これは前作におけるカカリコ村への目印が何であったかを考えれば分かる。

前作では、始まりの台地から見える双子山の割れ目がカカリコ村に向かう目印となっていた。しかし今作の監視砦からこの割れ目は見えないので、別の目印が必要だったと考えられる。ちなみにハテノ村からもワッカ遺跡を見ることができる。

監視砦から見るワッカ遺跡と双子山(右)
始まりの台地から見る双子山(前作)

根本的には地上探索の初期位置が前作の始まりの台地から監視砦に移ったことが原因であると言える。地図上の位置関係だけ見れば少し北に移動したに過ぎないが、影響は広範囲に及んでいる。

討伐隊の役割と「手をつなぐ」の意味

監視砦の南方で最初の討伐隊との共闘ができる。深穴の近くにテントを張っているので見つけやすい。討伐隊イベントはサブイベントではあるものの、魔王の軍勢戦の予習になっている。

NPCとの共闘自体は前作からあるが(襲われている旅人を助けるもの)、今作の討伐隊イベントに関してはほぼ新要素と言っていいだろう。敵の素材も大量に拾えるし、報酬のルピーも序盤ではうれしい。討伐対象の敵拠点は進行上必要ない場所も多いものの、ハテノ砦とアッカレ大橋に関しては討伐隊の手を借りることで通りやすくなる。

今作のテーマとして「手と手をつなぐ」というものがある。これは開発者インタビューでも語られており、作品全体を通して示唆されていることでもある。討伐隊との共闘もその中に含まれるだろう。

このテーマはシナリオや演出だけでなくゲームシステムにまで反映されているようだ。「人と人」のつながりはもちろん、ウルトラハンドやスクラビルドによる「物と物」のつながりも含まれるだろう(むしろこちらが先か)。

なぜ「監視砦防衛戦」は存在しないのか

討伐隊に似たイベントとしてゲルドの街での防衛戦がある。あのシステムを流用して討伐隊と共に監視砦を防衛するイベントを作ることもできたはずだが、なぜ無いのだろうか。監視砦にこれだけ仲間が集まったのに、結局この場所を守るために戦うことはない。

前作では魔物が積極的に集落を襲う様子は見られなかったが、今作ではゲルドの街やウオトリー村が襲撃・破壊されているので、監視砦が安全だという保障は全くない。そもそも監視砦の成り立ちはプルアの研究拠点に人が集まって砦のようになったという経緯なので、防衛に適した立地ではないし、魔物の襲撃に耐えうる構造にもなっておらず、格好の標的である。

リンクが最後の希望。

しかし一方で、地上の魔物の拠点、地底のイーガ団の拠点、ハイラル城などを見れば、監視砦よりも防衛上はるかに優れた作りになっており、その理由はもちろん「制作者が」「プレイヤーから」それらの拠点を守らなければゲームにならないからである。

たとえばハイラル平原の鳥望台は敵の拠点に取り込まれてしまっているのだが、見ての通り簡単には攻め込めないし、唯一の入り口である坂道を上がっていくとトゲ鉄球が転がり落ちてくる。

ちょっと不便だけど・・・。

監視砦が砦であるのは設定上だけであり、実際のゲーム上の役割は物資や情報を得るための拠点である。つまり馬宿と大差はない。もし幻の「監視砦防衛戦」をやりたければ砦の構造をもう少し堅牢なものにしなければならないだろうが、そうするとプレイヤーの利便性を損なってしまう。機能こそがデザインを決めるのであって、今回は探索拠点としての利便性が優先されたということだろう。

シナリオ的には、討伐隊の装備状況などから彼らが訓練された軍人ではないことは明らかなので、砦の構造にもあえて不備があるように描写されていると解釈できなくもない。

なぜ新マリッタ馬宿に辿り着いてしまうのか

左の分岐は下り坂なので気づきにくい。

序盤で新マリッタ馬宿に辿り着いた人は多いと思う。そのように仕組まれているので、意図的に誘導を避けない限り高確率で辿り着いてしまうだろう。

まず監視砦でプルアから四地方の話を聞くが、その中でも最初にリトの村へ行くことを勧められる。あえて逆らう人もいるだろうが、前作経験者であれば序盤は従ったほうが無難であることを知っている。

誘導に従ってリトの村方面へ向かうと、ハイラル城外堀から流れるヒメガミ川に阻まれるため、ヒノックスのいるカロク橋へと自然に誘導される。このヒノックスは眠っているので戦う必要はないし、起こしてしまったとしてもまっすぐ走れば追いつかれない。

橋を渡るとその先に分岐があるが、右の分岐の先にルミーが見えるのでこれまた自然に誘導される。ルミーは今作では洞窟への案内人であり、追いかけるとそのまま洞窟へ誘導される。洞窟に入っても入らなくても、右の分岐を選んだ時点で新マリッタ馬宿に辿り着くことはほぼ確定している。

冒頭で述べた通り新マリッタ馬宿は序盤の誘導として重要なので、選択肢を与えつつもなるべく辿り着きやすいようにしていると考えられる。

前作ではそもそも右の分岐は存在せず終焉の谷へ続く街道しかなかった。最初に行くべきエリアとしてデザインされていたわけでもないのでリトの村までの道のりは比較的険しかった。

ちなみに旧マリッタ馬宿の周辺にはマリッタの丘やマリッタ交易所跡など関連する地名の場所があり、それらは今作でもそのまま。また旧馬宿を囲んでいた林は今作にも残っている。

前作のマリッタ馬宿。 左奥はヘブラの塔。
前作のマリッタ馬宿。周りの地名は今作と同じ。
前作の新マリッタ馬宿(予定地)。地上絵はないが斜面はある。
前作の新マリッタ馬宿予定地。街道は終焉の谷を通っていた。
今作の新マリッタ馬宿(景観が違うが大体同じ場所から撮影)
今作の新マリッタ馬宿。終焉の谷はマップ上の街道ではなくなった。

インパに会わなかった場合

あえてルミーを無視して左に進んだ場合はどうなるかと言うと、その先の終焉の谷でインパの付き人であるボガードが待ち構えており、話しかけると新マリッタ馬宿に誘導される。

無視してもいいが、インパに会いに行かない限りボガードは中央ハイラル周辺の至る所に出現し、ほかの地方に向かおうとするたびに新マリッタ馬宿に行くよう促してくる。

左の分岐を進んだ場合(終焉の谷)
「インパに追いつきたいが道に迷った」と言い張るボガード。
逆方向だけど・・・

インパに会わなくても地上絵と龍の泪は出現しており記憶も見られるが、説明を聞いていなければ龍の泪には気づきにくいだろうから強めに誘導されているのだろう(その辺のNPCが説明するのもおかしいし)。

インパの話を聞くと「忘れ去られた神殿」への誘導がされる。そこですべての地上絵の分布を確認できるのでやはり優先度が高いのだが、これを無視して各地の賢者を解放していくと、徐々に誘導が強くなっていくことが分かる。

三人目の賢者まで解放。
四賢者解放済み。「早く神殿に行ってくれ」

新マリッタ馬宿で得るもの

ここまでして誘導した新マリッタ馬宿には何があるのか。最も大事なのは地上絵・・・もそうだが、馬である。前作に比べて移動手段としての価値は下がったとはいえ、序盤では活躍するし、口笛で呼び寄せられる利点もある。ここからシロツメ新聞社までの道中はすべて馬で踏破できるし、ここの地形は馬を捕まえやすいのでチュートリアルとしても最適である。

崖に追い込めばOK。

馬宿従業員のサブイベントを通して馬の捕まえ方や荷馬車、ハーネスについて覚えさせられる。荷馬車はコログ運びの手段の一つでもあり、ウマナリ楽団イベントでも使う機会がある。

森の馬宿にて。

新マリッタ馬宿の北にはラブラー山の鳥望台が見えるので、次の目的地として選ぶ人が多いだろう。ラブラー山には序盤のみボックリンもいる。

なぜリトの村は「最初のエリア」なのか

最初に断っておくと、もちろんどの順でクリアするのも自由だし、なんならラスボスに直行してもいいのは既に述べた通りだが、とはいえ誘導を読み解くことで見えてくる順番は存在する。「行くべき場所への誘導」と「行かなくてもいい場所への障害」がゲーム内の至る所にちりばめられており、それらを読み解きたいというのがこの記事の趣旨である。

リトの村が最初なのは、スタッフロールでチューリが最初に登場するから・・・というのは禁じ手だと思うのでそれ以外で考えることにすると、まずプルアによる誘導である。四地方の中で特にリトの村が推奨されている。

新聞社に行けとも言われるし、道中は進みやすく、また寒さ対策は始まりの空島ですでにしており、新マリッタ馬宿やタバンタ大橋馬宿、雪原の馬宿などでの誘導も丁寧である。風の神殿への道中はパラセールの練習に最適であり、今後の空島探索にも役立つだろう。またチューリの能力を他の地方でも使用可能になるといろいろな仕掛けをスキップできるようになるので、最初にクリアさせる意味がある。

またリトの村を後回しにしていると困る要素もある。少なくともシロツメ新聞社までは行ってペーンを解放しておかないと各地の馬宿にペーンが現れないし、ウマナリ楽団イベントも進められないのである。またリトの村に入る際にハイラルボックリの説明も挟むが、これは序盤の強力な上昇手段なので早めにプレイヤーに知ってほしいだろう。

序盤に監視砦まで迎えに来てくれている。

演出面の話をすると、まず前作の序盤は東のハテール地方へ誘導したので、今作では西に向かわせるというのは新鮮さを与えるために必要なことだろう。
また馬宿が新聞社に変わったという話は前作経験者の興味を引くし、前作で目立たなかったヘブラ山脈をシナリオで使用していることも新鮮さを与えている。風の神殿への道中は今作の目玉である空を舞台としておりアクションにも新鮮さがある。ちなみに氷を割るアクションはフリザゲイラ戦の伏線にもなっている。
よく言われる話として「なぜテバではなくチューリが賢者なのか」というのがあるが、言ってしまえば序盤で新鮮さを与えたかったからだと思う。ただし先述した今作のテーマである「手をつなぐ」の一環であるとも考えられる。チューリを仲間にするまでのイベントを通して彼が仲間の大切さを学ぶシナリオの意図は「今作はリンク一人ではクリアできない」というプレイヤーへのメッセージを序盤で伝えるためでもあるだろう。
またテバも前作では無鉄砲な性格だったが、彼にはハーツという相棒がいるし、リンクとの共闘経験もあるので、彼が息子に仲間の大切さを教えたいと考えるのはよく分かる。

ちなみにチューリがいなくても風の神殿には行けるが端末を起動できない。また道中にはパラセールで滑空するだけでは届かない所もあり、間違えて到達しにくいように配慮されている。

フリザゲイラ戦の意味

風の神殿ボスのフリザゲイラは、ダイナミックな空中戦が印象的なボスである。演出面での魅力は他所で語りつくされている気がするが、ゲーム上の役割はどうだろうか。

結論から言うとこれはラストバトルである黒龍戦の予習である。もちろんそれだけではなく、神殿の道中からこのボス戦までの間に繰り返してきたアクションが伏線になっているし、白龍への着地の予習であるとも言えるが。

黒龍が下からブレスを吐いてきたとき、なぜ我々は演出に圧倒されながらも迷わず弱点に着地しに行けたかというと、それはフリザゲイラ戦のおかげでもあり、白龍イベントのおかげでもあっただろう。さらに言えば、スカイダイビング中に下方に見える光を探してそこへ着地するというアクションはこのゲームの中で最初からずっと繰り返してきたことでもある。

リトの村が最初のエリアであるおかげで、二つのボス戦は時間的に離れており、同じような戦闘が続くという印象を抱くことはないだろう。あるいはそこまで計算しているのか?

画面の雰囲気は全然違うが・・・
やるべきことは一緒。

フリザゲイラは過去作のボスと似た特徴も持っている。過去作『風のタクト』のモルドゲイラや『ムジュラの仮面』のツインモルドなどがその例で、細長い体を持つのが共通する特徴だ。しかし今作のフリザゲイラに限っては、むしろ体の特徴のほうが先に設定されて、名前はあとから付けられたのではないかと想像する。このボスは明らかに黒龍戦への伏線であり、そのために「龍のようなボディ」がデザインの要件だったはずだからだ。

初めてのグリオーク?

チューリ解放後にすぐ監視砦にワープしてしまう人も多いだろうが、そうではなくシロツメ新聞社から街道沿いに雪原の馬宿へ向かうルートも考えられる。このルートは忘れ去られた神殿やデスマウンテンに向かいつつ監視砦に帰る方向でもあり、道中には地上絵や序盤向けのサブイベントもある。

前作から続投「ナツメグ姉妹」。今作では洞窟への案内役。

また道中のタバンタ村跡は前作では魔物の巣窟となっていたが、今作では街道から外れない限りほとんど安全である。つまり序盤で通ることも想定内だと考えられる。

雪原の馬宿の近くには大妖精の泉があり、また北方には氷雪グリオークが飛び回っている。グリオークを倒せとは求められないが、その先には逃げた金の馬がいて地上絵もあるという情報が得られるので、要するに「うまくやり過ごせ」という内容だろう。

グリオークがいる雪原には遺跡が点々と連なっており、たとえ見つかってもしばらく隠れ続ければ見失って離れていく。いろいろな意味で前作の飛行型ガーディアンに似ているかもしれない。さらに先に進めばローメイ城跡もあるがこれは序盤で行くような場所ではなく、迷い込まないようにグリオークが道を塞いでくれているようにも見える。

遺跡とグリオーク。関係ないが今作は手軽に空撮できて助かる。

最初の賢者を解放すると

チューリ解放後に監視砦に戻ると、様々な変化が起こっている。まずジョシュアから中央大廃坑への誘導がされる。これに従うとブループリントを取得できる(誘導が無くても序盤から取得はできる)。落ちている操縦桿を使ってお気に入り登録できるようになるので実質的に操縦桿も解禁である。

操縦桿を取得した時点で陸路で移動する必要がほぼ無くなるため「どこで操縦桿が解禁されるか」は重要なポイントだが、今は地上の誘導を読み解きたいのでその話は後回しにする(ちなみに空中でゾナウギアの翼を出して乗る方法に気づけば鳥望台ジャンプからの行動範囲が格段に広がるので実際は操縦桿を取るまでもないのだが、これに関する誘導は恐らくどこにもないのでここでは考慮しない)。

空中で出そう。

ほかの変化として監視砦の池に石碑が落下している。調査隊のリードウは解読のためカカリコ村へ移動する。早ければこの時点で空島探索はできるだろうし、結局書かれている内容は本筋に関わらないので誘導するタイミングとしてもちょうどよさそうだ。

さらに避難壕の壁に穴が開いて悪魔像へのアクセスが可能になっている。ハイラル城側からのアクセスは序盤から可能だったが、壁が開通したことで利用しやすくなる。今作では雷鳴の島の扉を開ける際にハート10個が必要であり、またマスターソードを抜く際にがんばり2周分が必要となる。これらを満たすために悪魔像の器交換が役立つだろう。ただし序盤では器が少なすぎて意味が薄いだろうからやはりちょうど良いタイミングと言える。

大砲でも壊せなかったのに・・・

さらにほかの変化として、監視砦に「デスマウンテンへの帰り道が分からないゴロン族」とハイリア人のコンビが現れている。彼らの会話からデスマウンテンへの誘導を読み取ることが出来るので、二番目のエリアとして設計されているのはデスマウンテンだと考えられる。

こういうNPCたちにもそれぞれストーリーがある。

火山が二番目のエリアである理由

監視砦からデスマウンテンに向かうと森の馬宿に辿り着く。森の馬宿はハイラル城、迷いの森、デスマウンテンに囲まれており、前作から引き続き重要な馬宿となっている。

近くに大妖精の泉があるが、解放するためにはシロツメ新聞社でペーンを解放しているのが前提であり、ここに先に来た場合は解放できない。デスマウンテンが最初のエリアではないと考えられる理由の一つである。森の馬宿の大妖精を解放すると、ほかの大妖精の居場所もわかる。

チューリを解放すると新聞社から火山へ誘導される。

理由は他にもある。まず今作では地上の溶岩がなくなったためゴロンシティまでは簡単に行けるが、神殿攻略にほぼ必須となる耐火装備が序盤では高価である。しかも今作は序盤で金欠になりやすい理由がある。まず前作は魔物素材と宝石を売ることで金策ができたが、今作の魔物素材はスクラビルドにも使うので売りにくく、また宝石を取るための鉱床が基本的に洞窟の中に移動してしまっている。結果的に、最初に火山に行くと耐火装備が買えないせいで攻略が止まる可能性が高い。

逆に後半のエリアではない理由としては、前述の通りシティまでは簡単に行けるし監視砦からの誘導も強いこと、それから森の馬宿で空からの落下物の話を聞けることが挙げられる。落下物モドレコは鳥望台ジャンプと並ぶ強力な上昇手段であり、空島に到達する方法の一つにもなっており、序盤で伝えておくべき内容だと言える。また後述する洞窟とマヨイについても同様である。

この子は前作から空に憧れていた。
別の場所で戦闘後の会話。

モドレコは移動でも戦闘でも非常に強力であり、炎の神殿ボスのボルドゴーマ戦でも有効である。道中でも岩オクタの弾を反射したり、急斜面を滑り落ちてきた鉄板の上に乗って逆再生すると楽に登れるなど、いくつかの伏線が張られている。

この鉄板は誰が落としてるんだろう。
ロック族にも有効。
この能力だけでもゲーム作れそう。

洞窟への誘導とマヨイの役割

森の馬宿にいるコルテンからマヨイの落とし物集めを依頼される。コルテンから受け取る報酬として、精霊の防具が目玉扱いされているが、実際は各種魔物のマスクが重要である。

ムジュラの仮面がそれらのマスクの上位互換ではあるが、これを取るには地底の闘技場でライネル5連戦を勝ち抜く必要があり、戦闘が苦手なプレイヤーにとってはハードルが高い(ライネルには古代の刃が有効なので最終的にはクリアできるかもしれないが)。コルテンから入手できるマスクはケムリダケ戦法との相性もよく、戦闘の救済用アイテムだと考えられる。

今作においてマヨイは洞窟に入る動機付けでもあり、また洞窟探索の終了を知らせる役割も担っている。マヨイを見つけることで「この洞窟は大体探索できた」と判断できる側面があり、もし今作にマヨイが存在しなかったら「まだ何かあるかも」と思ってダラダラと探索を続けてしまうかもしれない。

前作から同じだが、ゲーム内のすべてのシーンについて拘束時間が長くなりすぎないよう検討されているようなので、洞窟探索にも区切りが設けられていると考えられる。

なぜ登山道は変更されたか

前作では山麓の馬宿から登るルートが正攻法であり、森の馬宿から登るルートは邪道だったと言えるが、今作では逆になっている。直接的な原因はもちろん地上の溶岩が消えたことである。今作でレストランとなっている場所は前作では溶岩湖であり、その先の街道もすべて溶岩の川だった。

前作のマップ。中央のゴダイ湖が今作ではレストランに。
前作のゴダイ湖。

しかしこのように変更されたゲーム上の理由は何だろうか。それには前作の事情を考えるとよい。前作ではハイラル城周辺は危険地帯だったので森の馬宿は序盤では辿り着きにくく、逆に山麓の馬宿は前作で「最初のエリア」となっていたゾーラの里から近かったので、登山口として採用されていたのだろう。しかし今作では森の馬宿は非常にアクセスのよい場所なので、合理的に考えてこちらを登山口としたのだろう。

ちなみに旧登山道には瘴気魔がいて、これが「初めての瘴気魔」になる可能性もある。道の端にいるので近づかなければ遭遇しないが、鉱床による誘導もある。これはロクに情報収集をせずに前作と同じルートで登ろうとしている前作経験者への洗礼ではと邪推してしまう。あるいはわざわざ敵が多いほうへ向かう人は上級者だと判断してより強い敵を配置しているのかも。

山麓の馬宿にて。警告はちゃんとある。

なぜ地上の溶岩は消えたか

地上の溶岩が消えた理由もまた、森の馬宿から登りやすくするためである・・・という考えも無くはないと思うが、さすがに飛躍しすぎか。溶岩が消えた理由はむしろ「洞窟や地底と環境的に変化をつけるため」というのが大きいだろう。ちなみに前作の旧登山道では馬に乗ったままシティまで行くことはできなかったが、今作の新登山道ではそれが可能である。

別の考えとして「水浴び」による耐火効果を活かすため、というのもありうる。レストランのサブイベントで溶岩洞への入り方を覚えることになるが、洞窟の前で水浴びをしているハイリア人がその説明をしてくれる。もし前作と同じように地上も溶岩に覆われていたとしたらこの仕様は説明しにくかっただろうし、大して役に立たなかっただろう(実は前作から仕様自体はあった)。

水を浴びれば熱くないというのは納得感もある。

演出面の話だと「火山では天変地異の表現として導入する気候の変化が他にないから」という理由が一番かもしれない。他の地方を見ればそれぞれ寒波、砂塵、ヘドロが採用されたわけだが、火山では適当なものがない(ヘドロが気候かは置いといて)。火山活動が活発化するか沈静化するかしかないわけだが、前者は前作ですでにやっている。

初めての「操縦桿が出るガチャ」

ゴロンシティの入り口で悪徳ゴロンたちに絡まれたところをゲルドの宝石商が助けてくれるミニイベントを挟み、そのあと彼女に宝石を売ることができるようになる。役割としては耐火装備を買うための金策用だろう。今作は序盤で金欠になりやすいという話は先ほどした通り。

さて、ここまでずっとゾナウギアを無視し続けてきたが、そろそろ逃れられなくなってきた。ゴロンシティにある祠では大きなタイヤの使い方を予習させられるが、これは地底に降りた後で使うことになる。

ユン坊を正気に戻した後、山頂まではトロッコで行くように誘導されるが、ここで乗り物上でのユン坊アタック(とつげき)の使い方も同時に覚える。このあとイルバジア戦では操縦と攻撃を同時にしなければならないので、まず操縦が不要なトロッコで段階を踏んで覚えさせている。

前作は苦労して登ったのに、いい時代になったもんだ。

また、山頂付近の祠では操縦桿付き飛行機の使い方を予習させられる。このように今作の祠の配置は前作以上にチュートリアル的な意味合いが強い。

イルバジア戦では操縦桿付き飛行機で飛び回りながら戦うことになる。この戦闘を通して今作がもうはっきりと前作とは異なることを全員が思い知らされる。ゾナウギアの持つ可能性のプロモーションとしてこれ以上ないものになっており、そしてその戦闘のあとデスマウンテンの深穴を降りると「操縦桿が出るガチャ」が置かれている。

なんか別のゲーム始まったんだけど・・・

「操縦桿が出るガチャ」は他にもあるが、いずれもメインクエストの流れで訪れる場所ではない。地上から行きやすい場所としてはイチカラ村、ドイブラン遺跡鳥望台から行ける北ハイラル空諸島、ゲルドキャニオン鳥望台から行ける東ゲルド空諸島などがある。

なぜ炎の神殿には壁がないのか

炎の神殿は配置されているトロッコを使用して「まともに」攻略しようとすると大変だが、壁がほとんどないことに気づけば多くの謎解きをスキップできる作りになっている(気づいたうえで謎解きに向き合いたいと考えた方もいるかもしれない)。

ゾナウギアを使えばほぼ何でもありだし、単純に崖登りでスキップできる部分もある。純粋な難易度は風の神殿のほうが低かったと思うが、ズルがしやすいという意味では炎の神殿のほうが楽だろう。難易度を上げつつも困ったら強引に突破する選択肢も与えている、今作の祠の謎解きでよく見る光景がこの神殿でも見られる。

開いてるから仕方ない。

ゾーラの里が三番目のエリアである理由

まず前半のエリアではない理由として、地上の道のりが険しいことが挙げられる。ゾーラ川を遡ろうとするとヘドロと土砂崩れのせいで馬で進むことはできず、序盤に来た場合は悪路を徒歩で進まなければならない。

また、誘導が少ないのも理由の一つ。監視砦には情報が流れてこない。大きな誘導としては地底のコーガ様イベントでの誘導がある。ゲルド廃坑でコーガ様を倒したあと、次はラネール廃坑に行くと宣言されるが、執事ゴーレムから「ラネール廃坑へは地上の深穴から行くとよい」と言われる。

ラネール湿原での誘導。

ちなみにゾーラの里は四番目のエリアでもないと考える理由としては、まずヘドロが降っているとはいえ環境自体は穏やかだということ。四番目のエリアだと考える砂漠と異なり、ゾーラの里では環境対策は必要ない。ヘドロに対しても現地で入手できる水の実やオパール、チュチュゼリーで対処できる。また、ここで入手した水属性の素材や能力がほかの地方でも役立つという理由もある。

ゾーラの里へ陸路で行く場合

ゾーラの里まで陸路で向かったプレイヤーは少数派かもしれないが、実際に通ってみると当然しっかりデザインされていることが分かる。ゾーラ川を遡っていく道中にあるオーレン橋とラルート大橋という二つの橋は敵の防衛ラインになっている。

オーレン橋は対岸で魔物が道を塞いでいるが、近くにいるルミーを見逃さなければオーレン橋たもとの洞窟に入ってトーレルーフでスキップできる。ラルート大橋にはボスボコブリンが往復しているが、これもラルス水脈(洞窟)に入ってトーレルーフすればスキップできる。ちなみにラルス水脈の真上に鳥望台があるので、ゾーラの里に到着したも同然である。

ラルート大橋。

ゾーラの里周辺にはシドの石碑が配置されているが、街道沿いで読める石碑はどれも重要な内容になっている(里の成り立ち、リンクの話、ゼルダの話)。

ゾーラの鎧なしで水の神殿に行けるか

風の神殿と同じく水の神殿でも上空にある神殿にどうやって行くかが問題になる。普通は謎を解いて滝登りで行くのだが、例によって自力で行くことも出来る。シドがいないと端末を起動できないので単独で行く意味はないのだが、間違って行ってしまう可能性はないだろうか。

結論から言うとそれはほぼないだろう。魚鱗舞う島を経由しながら気球で行くと届くのだが、ミファー像の場所から気球で行くと届かないという微妙な調整になっており、要するに「ブループリントがあれば行ける」という感じなので、序盤に間違えて行ってしまうことはない。そして他の地方をクリア済みならシドを同伴しないと意味がないことは分かるだろう。

変わり種としてラネール山の鳥望台ジャンプからパラセールで滑空してくる方法もあるが、序盤ではスタミナが足りないだろう(高さは足りる)。

ゾーラの鎧は今作ではヨナから受け取るが、彼女は鎧に込められたミファーの想いについては知らない様子である。ゲーム的な理由としては、前作未プレイのプレイヤーもいるし、今作で必要な情報ではないからだと思われる。
シナリオ的には、この里に来て間もなくヘドロ騒ぎが起こったのでまだシドとゆっくり話せていないと説明される。しかしシドの石碑によるとヨナは幼少期にミファーを姉のように慕っていたという話もある。

ゾーラの鎧は他の地方の空島(北タバンタ空諸島など)へ登る手段としても使うことができ、浮上したハイラル城から流れ落ちる滝に対しても有効である。空中からでも始動できる点や滝が続く限り無限に登れる点でトーレルーフとの差別化もできている。

北タバンタ空諸島から流れる滝。地上から気球で到達できる。

なぜ水の神殿は重力が弱いのか

重力が弱いエリアは他にもいくつか存在するが、シナリオ上で訪れる水の神殿で初めて経験することが多いだろう。確かに現実でも宇宙空間に近づくと重力は弱まるだろうが、今作では地上からの距離とは関係なく、特定のエリアで重力が弱くなっているようだ。

謎解きの過程で、高速回転するブロックの中にあるスイッチを起動するシーンがあるのだが、これは空中で弓を構えるとスロー状態になることを利用して矢を当てるのが正攻法と思われる。このとき示唆されているのは、重力が弱いおかげでその場でジャンプするだけでスロー状態に入れるということ。

水の神殿ボスのオクタコスは水を当てるとヘドロを剥がせるが、第二形態ではヘドロを剥がした後も跳ね回って逃げるので追いつくのが難しい。しかし低重力のおかげでいつでも空中で弓を使えることに気づけば一気に簡単になる。地底でもオクタコスと再戦できるが、そのときは低重力に頼れないので、初回限定の救済措置として機能している(通常時は操縦桿をジャンプ台として使うと簡単)。

その場でジャンプしただけ。

過去作の水の神殿は水位変更などを軸とした複雑な謎解きが多かった。今作でも洞窟などでは水位に関する謎解きが見られるが、そもそも前作から潜水が出来なくなっているので再現は難しいか。今作の水の神殿で重力が弱い理由も水中にいるような雰囲気を出すためかもしれない。謎解きの内容も浮遊する水球や浮遊石など低重力に関するものが多い。

砂漠が四番目のエリアである理由

他の地方で説明したことと大体同じである。まず対策が面倒な砂漠気候、地形が険しいこと、誘導が少ないこと。

気候に関して、目立たない変更ではあるが前作は砂漠に入るまでは穏やかな気候だったのに対し、今作ではゲルドキャニオンからすでに砂漠気候になっており、より厳しくなっている。また特殊な気候である砂塵に対してチューリのスキルが役立ち、暑さに対してはシドのスキルが役立つという理由もある。

また神殿の謎解きをスキップできないので難易度が高いという理由も挙げられる。炎の神殿で述べたことの逆で、雷の神殿は壁があるせいで謎解きと向き合わざるを得ず、その謎解きも比較的難しい(連弓とカガヤキの実でズルができるが恐らくどこにも誘導がない)。

鏡を使う謎解きは過去作に何度も登場している。特に『時のオカリナ』の魂の神殿は今作と同じ砂漠の神殿であり、内部のデザインもよく似ている。謎解きの内容だけ考えると「鏡の神殿」とか「光の神殿」とかのほうがふさわしい気もするが、基本的に神殿の名前は賢者の属性に対応しているようだ。

砂漠への誘導としてはイチカラ村のイベントが強力だが、これを序盤でやる人は少ないだろうから、砂漠に来るタイミングも後半になる可能性が高い。

地形が険しいということに関して、前作経験者は忘れがちだろうが、今作では始まりの台地もその「険しい地形」に含まれる。グリオークがいる闘技場も含めて、序盤で迷い込んだプレイヤーを追い返す要素はけっこう多い。

なぜゲルドキャニオンに川が出来たか

イーガ団のしわざ、というのはシナリオ上の説明であり、ゲーム上の理由は馬での通行を禁止するためだろう。川に辿り着く前にキャニオンの入り口である巨大遺跡の門番に止められてしまうのだが、ともかく今作は馬で通行できない。

この門番は水浴びによる暑さ対策もレクチャーしてくれる。水浴びと言えば当然新しくできた川もそれに含まれるわけで、結果的に昼の暑さに対する救済措置にもなっている。

水の実を支給してくれる。

道中にはゾナウギアの大きなタイヤ6個を使用する車両が落ちていて、タイヤが1つだけ外れた状態になっている。いかにもブループリントに登録してくれという雰囲気を出しているが、素直に登録しておくとこの先の砂漠でも役立つ。

大きなタイヤの力で川も問題なく進める。

またこのエリアでは火吹きリザルフォスと雹吐きリザルフォスが出現するが、彼らが落とす素材があとで対ギブド武器として役立つことになる。もっとも実際には空路でゲルドキャニオンをスキップしたプレイヤーが多いかもしれないが。

キャニオンの道中には、めがね岩のグリオーク討伐を依頼されるサブイベントもある。グリオークを「倒せ」と言われるのは(監視砦の依頼を除けば)恐らくここが初めてであり、砂漠が四番目のエリアであることを示しているかもしれない。

前作ではモルドラジーク討伐を依頼された。

砂漠の裂け目と砂塵の役割

ゲルド砂漠に入るとすぐにスナザラシを借りることができるが、カラカラバザールより先では砂漠の裂け目と砂塵が行く手を阻んでくる。砂漠の裂け目は見ての通りスナザラシから降りることを求めていると考えられるが、実は迂回することも出来る。

しかし砂塵でマップが見えない状態なので初見ではわかりにくい。また砂塵の中では耐暑レベル2を要求されるので、防具、食事、水浴び、氷属性武器などを組み合わせた対応が求められる。

カラカラバザールでは熱砂の鉢がねを450ルピーで購入できる。火山の耐火装備は700ルピーだったことを考えると安いが、砂漠では現地での金策がしにくいからか、あるいは同シリーズの他の服が高いからか。

先述の通り砂塵はチューリのスキルでスキップできるほか、暑さに対してはシドのスキルも役立つ。また砂塵の中には薪の束と油ツボが落ちていて上昇気流を起こすのに利用できるなど、序盤に来たとしても何とかなるようにはなっている(上に頭を出せれば方角は分かるのでゲルドの街まで行くことも可能)。しかし基本的には「ほかの地方を先にやれ」と言われている気がする。

この砂漠の裂け目と砂塵は、過去作『時のオカリナ』で非常によく似た光景が見られる。ついでに言うとギブド、ライクライク、バクダン花など今作の新要素の多くも過去作からの復刻である。今作はゾナウギアの斬新さが目を引く一方で古参ファンへのサービスも豊富な印象がある。

地下街に行かずにルージュに会えるか

他の地方では賢者に出会う前に単独で神殿に行くことが可能だったが、砂漠に限ってはルージュの助けを借りなければ神殿が出現しない。

『風のタクト』の神の塔を出現させる謎解きに似ている。

地下街をスキップして北の遺跡に直行することはできるが、砂塵とギブドが障害となる。むしろ「地下街を通ることで砂塵をスキップできる」と言うべきだろう。また少し離れてはいるが北の遺跡の近くにはモルドラジークもいるので、地上から無理に行こうとして道に迷うと遭遇する危険がある。

ゲルドの街に入ると荒廃していることに気づくが、ルージュの手記を読むと住民は地下に避難していることが分かり、さらに玉座裏から入れることも分かる。手記にはルージュの行き先も書いてあるので直行してもいい。

手記に気づかなくても探索していれば水路からの侵入口を見つけるだろうし、また街の西エリアには一人で地上に抜け出してきたゲルド族の子供がいて、追いかけると別の入り口も見つけることができる。地下街に入ってビューラの説明を聞けばルージュの居場所が分かる。

このように複数のルートでルージュへ誘導されているが、北の遺跡に直行した場合はすべてスキップできてしまう(防衛戦の後で地下街に行く必要はあるが)。「地下街に行かないとルージュが出現しない」ように設定するのは簡単だろうが、あえてそれをしない所に今作らしさを感じる。

なぜギブドには物理攻撃が効かないのか

物理攻撃が有効だとしたらゲルドの街は陥落しなかっただろうし、ルージュの雷撃の出番もないし、話が始まらないから・・・というのはまあそうだが、もちろん属性攻撃を使ってほしいからだ。ちなみに過去作のギブドには物理攻撃も普通に効いていた。

またギブドを倒すとギブドの骨が手に入るが、これは非常に壊れやすい代わりに矢じりとして強力という性質がある。このように各素材の特性を考えてスクラビルドすることを彼らは教えているように見える。

属性攻撃自体は前作からあったし、今作でも序盤からライクライクやウィズローブなどに学んでいることではあるが、ずっと逃げているプレイヤーもいるかもしれないし、今作では能動的にスクラビルドしていかないと属性武器を手にすることが少ないという事情もありそうだ。

余談:前作で栄えていたゲルドの街を知っているプレイヤーは、街に入った瞬間にショックを受けることになる。破壊され、砂に覆われた街と、隅にうずくまるギブド。複合的な要素による演出ではあるが、ギブドの独特なデザインがその一端を担っているのは間違いない。ちなみにギブドは『時オカ』や『ムジュラの仮面』などでも登場した魔物だが、今作のデザインとは異なっている。

このシーンで『時オカ』の大人時代の城下町を思い出した。

瘴気魔の役割

属性攻撃の話になったのでついでに瘴気魔の話もしておこう。

前作におけるガーディアンのように今作を象徴する敵であり、恐怖を与えるようなBGMも共通していて、役割的にもガーディアンと似ている点が多い。戦闘がラスボス戦の予習になっていることや、倒すと次に遭遇した時に役立つものを落とすこと(ガーディアンの場合は古代矢の材料)も同じ。

違いがあるとすれば、瘴気魔は隠れていて、罠を張り誘い込んでいるということである。基本的に瘴気魔がいる場所には他のボスはいないので「ボスがいるべきなのにいない場所」は特に怪しい。また、ガーディアンと違って瘴気魔はしばらく逃げ続けるだけでも消滅して素材を落としてくれる(武器は落とさない)。

誰もが「逃げろ」と言っている。前作のガーディアンと同じ。
なんかいるなあ・・・

ファントムガノン戦がガノンドロフ戦の予習になっているのは言うまでもないが、実は瘴気魔も魔王の軍勢戦の予習になっているかもしれない。一人で戦うより賢者たちと一緒のほうが戦いやすいし、属性攻撃や範囲攻撃、リーチの長い武器が有効であるというのもそうだ。

先ほどのギブドの話で、ギブドが属性攻撃を推奨しているという話が出たが、その理由はいずれ瘴気魔を倒してほしいから、というのは飛躍が過ぎるだろうか。ともかくマスターソード回収のためにはデクの樹サマに巣食う瘴気魔を倒さなければならず、その際に属性武器が有効なのは事実だ。

集団戦でも有効。
実質これも集団戦か。

ちなみに瘴気魔の見た目は『風のタクト』のフロアマスターとよく似ている。リンクを捕まえてくるのも同じ。

ハートが削られる演出に対する危機感はプロローグから仕込まれている。

なぜ本丸は復元されたか

四賢者を解放したあと、族長から監視砦に戻るよう誘導される。浮上したハイラル城で偽ゼルダとの追いかけっこになり、最後に本丸でファントムガノンとの戦闘になる。

ここまでのプレイのどこかしらで瘴気魔とも遭遇しているはずだが、NPCの警告に従って素直に逃げ続けてきた場合は初めて戦うことになる。ここではファントムガノンが複数出てくるが、こちらも賢者を全員出すことで戦いやすくなる。前述のとおり魔王ガノンドロフ戦の予習だろう。序盤はハートが少なくて瘴気ダメージも受けられなかったが、この時点ではすでに余裕があるはずだ。

ファントムガノンも過去作で何度か登場している。

ずっと地底で封印されていたはずのガノンドロフがなぜこの本丸を復元できるのかと疑問に思わなくもないが、ゲーム的な理由としては単純に床面がガタガタしているとプレイヤーが戦いにくいからだろう。実際そのままだったら難易度が上がるはずだ。

ゼルダの声に導かれてこの場所に辿り着くのは前作の再現でもある。前作ではゼルダがこの場所に厄災ガノンを百年間封じ込めていたのだった。シナリオ的な解釈として「厄災ガノンは地底のガノンドロフから生じた生霊のような存在であり、それを通して彼は現代の様子を感じ取ることができていた」というのはアリかもしれない。
ちなみに戦闘前の会話で偽ゼルダが「リンクと私の思い出の場所」と言うのだが、これには少々違和感がある。確かにハイラル城でも会う機会はあっただろうが、城内で私的な会話はあまり出来なかっただろう(むしろ城外で護衛につくときのほうが出来た)。しかしガノンドロフの立場での発言だとしたら、確かにこの本丸が思い出の場所ではある。

思い出というか因縁?

ハイリア大橋のグリオーク

ワッカ遺跡のイベントを終えるとフィローネ地方のゾナウ遺跡群に向かう流れになるが、最初のほうで述べた通り、フィローネ地方には迷い込まないようにするための障害がいくつかある。

まず監視砦の位置がフィローネ地方から遠いというのもあるし、始まりの台地と双子山によってハイリア大橋に誘導したうえで橋の真ん中を火炎グリオークが塞いでいるというのも大きい。

ちなみにこのグリオークは馬で強行突破することはできない。ある程度近づいたところで羽ばたきによる強風で馬から振り落とされてしまう。ここに限らず今作はいろいろと馬に対して厳しいような気がする(ゾナウギアを使ってほしいからだろう)。

しかし序盤ならともかく四地方クリア後ならどうとでもなるだろう。空島や鳥望台から空路で行ったり、湖を船で渡ったり、もちろんグリオークを倒したっていい。ただしグリオークに古代の刃は通じないので戦うにはある程度の準備とスキルが求められる。

ハイリア大橋を馬で渡るのは伝統なので・・・

序盤に雷鳴の島をクリアできるか

序盤にフィローネ地方には行かないようになっていると言ったが、そうは言っても前作経験者にとってはフィローネ地方に行きたい理由がある。ゾナウ遺跡群は前作から存在しており、前作でゾナウと言えばフィローネだったのだ。

今作でゾナウ文明が重要なのは発売前から分かっていたことだし、上空には何やら目を引く雷雲もある。ウオトリー村の誘導もあるので、全くの無駄足になる心配もなさそうだ。そういうわけで、あえて序盤から行くプレイヤーもいることだろう。

雷雲を晴らすためにはワッカ遺跡のイベントをこなすことが必須であり、そのためには四賢者の解放が必須なので、普通に考えたら序盤でクリアすることはできない・・・のだが、実は雷雲を晴らさなくても、ミネルゴーレムの頭部が置かれている竜頭島に直接降りることはできる。基本的に視界ゼロなので初見で迷い込む可能性は低いだろうが、雲に入ってから見えなくなるまで数秒ラグがあるので祠の緑色の光を見つけて降りることもありうる。

高度も低めなので祠センサーを頼りに辿り着く可能性も?

ただし奥の扉を開くにはハート10個が必要であり、序盤ではハードルが高い。しかし四地方とハイラル城本丸イベントをクリアしているなら、ハートの器と始まりの空島での強化込みで9個あるはずなので、残り1個を強化するだけでいい。

ミネルの本当の役割

シナリオ上の役割はもちろん大きいのだが、ゲーム上の役割はどうだろうか。その時点でマスターソードを持っていなければデクの樹サマへ誘導してくれるというのも大事だが、これに関しては一般のNPCからも聞ける情報だし、前作経験者なら最初から分かっていることだろう。「迷いの森は地底からしか抜けられない」ということまで教えてくれるなら別だが、そこまでは教えてくれない。

実はそれよりも重要なのは「ゾナニウムで古代の刃を買えること」である。魂の神殿でミネル解放後、ミネルの隣に控えている採掘ゴーレムに話しかけるとその取引が可能だ。

古代の刃はほとんどの魔物を一撃で消滅させる矢じりである。一部のボスは対象外だがライネルには有効であり、ハイラル城地底最深部に向かうための強力な武器となるのは間違いない。ただし素材ごと消してしまうデメリットもあるので、初心者救済用のアイテムだろう。

ハイラル城の地底が険しい道のりであることは最初のほうで述べた。このゲームをアクションゲーム初心者でもクリアできるゲームにするために、この古代の刃の取引があると考えられる。ちなみに前作では「古代兵装・矢」がその役割を担っていた。

購入するために地底でゾナニウムを集める必要はあるが、ケムリダケ戦法で拠点を制圧するのは初心者でもできるだろうし、採掘場を巡って集める手もある。

完全に余談だが、魂の神殿ボスの「奪われしゴーレム」は最高にかっこいい。同型機との戦いというのも熱いし、戦闘中に予備の腕が飛び出す演出が最高!

哀れだが、かっこよすぎる・・・

コログの森への誘導

前作では取らなくても問題なかったマスターソードだが、今作では必須アイテムに返り咲いている・・・とはいえ、最初のほうで説明した通り、もし回収していなくても結局黒龍戦の前に回収イベントが挿入されることになるので、事実上取らなくても問題ないアイテムではある。

しかしプルアも言っているように「マスターソードが無いと締まらない」と考えるプレイヤーは多いだろうし、ミネルの話を聞くと「ゼルダのためにも取らなければならないらしい」と分かる。もちろん真エンドを見るためにも必須である。馬宿でも伝説の剣の噂を耳にすることができる。

前作経験者であれば誘導されるまでもなくコログの森に直行するかもしれないが、そこで前作とは様子が違うことに気づく。

ボックリンは序盤はリトの村への道中(ラブラー山)にいるが、ミネル以外の賢者を一人解放すると監視砦に移動し、ミネルも解放すると「森の様子がおかしい」と言い始める。さらに本丸イベントを消化すると森の入り口に地底への誘導が出現する。また誘導が無くても序盤から地底を進んでコログの森に入ることはできる。

この誘導を見る前に森を解放した人が多いかも。

チロリの森の深穴を降りると尾根沿いにポゥが誘導してくれる。コログの森にトーレルーフできる場所に近づくと、地底では珍しいことに瘴気魔が出迎えてくれる。

あ。
見覚えのあるランプ。

デクの樹サマの瘴気魔の役割

デクの樹サマに巣食う瘴気魔はシナリオ上で唯一倒すことを求められる瘴気魔である。通常の瘴気魔はしばらく逃げ続けると自然消滅するのだが、この個体は消滅しないので倒すしかない。

台詞はこれだけだがやるべきことは伝わる。

この瘴気魔は深穴の底にいるが、穴の途中には安全地帯が存在しており、下に降りた後でもトーレルーフで逃れることができるようになっている(ただしファントムガノンはワープしてくるので安全ではない)。安全地帯のふちは瘴気で覆われているのであくまで回復用だろう。

もちろん適当なゾナウギアを足場にすれば上から一方的に攻撃できるし、飛び降りて空中から爆弾矢を乱射してもいい。あるいは十分なハートを確保したうえでヒダマリ草を使った料理で回復しながら殴り合う手もある(上に料理鍋もあるし)。

どれが正攻法か決めるのは難しいが、一つだけ言えることは、過去作から変わらない基本的な戦闘スタイルがこの瘴気魔には明らかに不向きだということである。つまり「敵に注目して盾を構え、ガードか回避をして反撃する」というガーディアンやライネルにさえ有効だった戦法が通用しないのだ(逆にファントムガノンにはそれが有効)。

瘴気魔のつかみも回避ジャストすることはできるが、結局囲まれているので非常にやりにくい。今作で新たに学んだ知識やテクニックを使えているかテストされている。

『時のオカリナ』ではデクの樹サマに巣食う魔物はゴーマだった。今作にもボルドゴーマが登場するが、瘴気が持つ徐々に体力を蝕んでいくイメージのほうがここではピッタリだろう。『時オカ』でゴーマを仕向けたのもガノンドロフだったので、今作では瘴気魔がふさわしいと言える。瘴気魔は今作のプロローグでリンクが屈した瘴気の象徴でもあり、プレイヤーはデクの樹サマの瘴気魔を倒すことで瘴気を克服した実感を得ることができる。

なぜ序盤は白龍と出会いにくいのか

「いや、自分は序盤で運悪く白龍と遭遇してゲーム内ネタバレを踏んだ」という人には先に謝っておく。しかし序盤は白龍と出会いにくいと考えられる明確な理由があるのだ。

コログの森を解放するとデクの樹サマに白龍の位置を追跡してもらうことができるようになるが、その前後で白龍の高度が大幅に変わっているのである。具体的に言うと追跡開始前の高度は1800~2200以上であることが多いのに対し、追跡開始後の高度は700程度まで下がっている。

ピンとこない人のために補足すると、この世界の天井が約3300、始まりの空島の最高点が約2350、時の神殿の飛び込み位置が約1470、監視砦の鳥望台ジャンプが約1160である。

つまり追跡開始前の高度は通常プレイではあまり到達しないほど高く、逆に追跡開始後の高度はおそらくどの鳥望台からジャンプしても余裕で見下ろせるほど低いのだ。

序盤で特大ネタバレを踏まれないよう高い位置を飛んでいた白龍に下界へ降りてきてもらうこと。これがコログの森を解放する本当の意味だと言える。

追跡開始前の高度。地上の景色がかすむ程度の高さ。
追跡開始後の高度。地上絵もくっきり見える程度の高さ。

序盤にたまたま到達したとしてもがんばりゲージ2周分が用意できていないとマスターソードを引き抜くことはできないのだが、刺さっているのを見た時点でいろいろ察してしまうだろう。

序盤にコーガ様イベントを完了できるか

前作経験者の中には新しいフィールドである地底の探索にのめりこんで地上そっちのけでクリアしてしまった人もいるかもしれない。地底ではコーガ様を追って各地の廃坑を巡るのが主なイベントとなるが、地上の進行状況とは無関係に進めることができ、序盤でクリアすることも可能である。

順番としては中央→ゲルド→ラネール→ヘブラとなるが(地上の順番と逆)、ラネールとヘブラは地上から入るように誘導される。地形的にも地上から入りなおしたほうがいいのは事実だが、たまには地上に戻ってこいという意図もあるだろう。ちなみにヘブラ廃坑に降りる深穴はリトの村の側壁から入るが、寒波中でもその部分は凍っていないので入ることができる。

地底では矢が大量に手に入るし、武器も亡霊から朽ちていないものをもらえる。ケムリダケ戦法を使えば序盤でも上級の魔物を倒せるので、その素材で強力な武器をすぐに作れる。被弾しないことが前提だが、このように戦闘面についても問題なく進められるようになっている。

中央ハイラル地底の闘技場で入手できる「ムジュラの仮面」も、上級者が序盤で確保してバッテリー強化を進めやすいようにする意図だろう。ライネル5連戦は武器不足がネックになりがちだが、最初の一体を倒せる火力さえあれば倒したライネルの素材をその場でスクラビルドして戦える。

コーガ様イベントと地底の役割

コーガ様イベントの最大の意味はもちろん「魔王の居場所が分かること」だが、このイベントがそこにつながっていると最初から分かっているわけではない。実際にはゾナニウムとゾナウエネルギーの結晶を集め、ゾナウギアを使いやすくすることが動機付けとなる。また、コーガ様やイーガ団員からゾナウギアの使い方のヒントをもらえる意味もある。

監視砦に必要な人材。

地底を探索すればするほどバッテリー強化が進み、ゾナニウムも集まって、地上をゾナウギアでスキップしやすくなる。前作経験者は未知のエリアである地底を探索したがるだろうし、逆に地上はスキップしたがるだろうから噛み合っている。地上の進行度と無関係に進められる理由はここだろう。

ただし地底で必要なヒダマリ草は地底ではほとんど手に入らないし、またアカリバナの種も主に地上の洞窟で調達する必要がある。逆に地上でも有用なコンラン花とケムリダケは地底でしか拾えないなど、並行して進めることを促す仕組みにもなっている。

地底でまれに見かける地上へトーレルーフできる塔があるが、あれは地上絵がよく見える場所につながっていることが多いようだ。例外はあるがその場合も地上の仕掛けをスキップできたりするので、これも並行して進めさせる仕組みと言える。

迷っていると時間経過で勝手に出るので注意。

また地底の地形はゾナウギアを使わないと快適に移動できないほど険しいものになっており、ゾナニウムとゾナウギアに役割を与えている。ゾナウギアの移動性能は地上では強力すぎるほどだが、地底ではむしろちょうどよい。

地上のイベントを一通り終えた後で地底に向かった場合、コーガ様イベントを経てそのままハイラル城の地底に潜ることになる。ずっと地底に意識が向かい続けた後だからこそ、ラストの黒龍戦の印象がより強まる気がする。

なぜ「賢者の力が届かなくなった」のか

ハイラル城地底最深部への道中は険しいが、実はほとんどの敵は無視して駆け抜けることができる。また、道中の瘴気魔以外の魔物には古代の刃が有効であり、古代の刃は魂の神殿でゴーレムから買えることもすでに述べた。

道中の終盤、長い吹き抜けを降りていくと不意に「賢者の力が届かなくなった」というメッセージが表示される。地上から離れすぎたからか、瘴気が濃すぎるからかは不明だが、ゲーム上の意味ははっきりしている。賢者の力が使えるとその次の部屋の仕掛けが成り立たなくなるからだ。

次の部屋に進むと中央が陥没しており、対岸にモリブリンが待ち構えている。そして下にはもちろん瘴気魔が潜んでいる。もしここでチューリの力が使えたら瘴気魔に目もくれずに対岸へ渡ってしまうだろう。

下からトーレルーフで行ける。

また右手には迂回路があるのだが、そちらでは岩盤を掘り進む必要があり、ユン坊がいれば・・・と思うことになるかもしれない。ちなみに岩盤は二枚あるが一枚目の岩盤は天井付近が空いている。

迂回路に気づかなくても、デクの樹サマの瘴気魔を倒していればここも同じ要領で倒せるだろうし、ゾナウギアを使って対岸に渡ることもできるだろう。ここを越えるとプロローグのエリアとなり、まだ少し魔物は出るが演出の意味合いが強いので、実質この瘴気魔が最終関門である。

魔王の軍勢戦、ガノンドロフ戦、黒龍戦については、これまでの話の中ですでに触れてしまったので簡単にまとめよう。軍勢戦は討伐隊イベントを思い出せばいいし、ガノンドロフ戦はもちろんファントムガノン戦、そして黒龍戦はフリザゲイラ戦、白龍イベント、そして今までやってきたスカイダイビングが伏線となっている。

演出的には「賢者の力が届かなくなった」というメッセージによって「やはり最後はリンク一人で戦わなくてはいけないのか」と思ったところに、軍勢戦での助太刀が刺さる形になっている。黒龍戦での白龍の救援も同様に「自我を失ったはずのゼルダがそれでもリンクを助けに来た」ことがポイントだろう。

さて、ここまで読んでいただいた方にはお疲れ様でしたと言いたい。エンディングまでの流れを語り終えたわけだが、あくまで一つのルートを取り上げたに過ぎない。出来るだけ誘導に従うルートを考えたが、別のルートを選んだ場合にもやはり別の誘導がある。

広大なフィールドに網の目のように張り巡らされた誘導の全てを語るのは無理だし、それを読む時間があったら実際にゲームを遊んで確認してもらいたいとも思う。周回プレイする際に今までより少しだけ誘導について気にしてもらえれば楽しみが増えると思う。

すでにだいぶ長くなってしまったが・・・まだ少し続く。冒頭で述べた通り、ここからはストーリーラインを離れて一般的な話をしたい。

「掛け算」とその発展

そもそも前作の何が画期的だったかというと、たとえば草地に火をつけると燃え広がり、上昇気流が発生し、そこに素材が落ちていたら燃えながら上昇して・・・と言った「掛け算」の面白さであった。今となっては当たり前に受け入れていることだが、この一つ一つが当時としては衝撃だった。

ゲーム的なお約束に慣らされていた我々は驚きながらも「まあ現実ならそうだな」と頷かざるを得なかった。ゾナウギアやスクラビルドなどの要素はこの掛け算を発展させたものであり、その奇抜な見かけとは裏腹に、前作の正統進化だと言える。

ちなみにこういう作り込みの細かさ自体は前作から始まった話ではなく、たとえば『時オカ』では道端の看板を切りつけると切る方向に応じた形の破片が地面に落ち、その破片を持って池に投げるとちゃんと浮くのだった(これにはゲーム上の意味は無かったが)。

ゾナウギアは「成長要素」である

確かにゾナウギアは掛け算を発展させる役割も担っていたが、それとは別に「リンクの成長要素」としての役割もあるだろう。従来のゼルダではプレイヤーにレベルの概念がない代わりに、新しいアイテムを取得することが成長要素となってきた背景がある。

前作では序盤にほぼすべての能力(過去作で言うアイテム)を手に入れていたが、これは異例なことであり、過去作では各ダンジョンで新たなアイテムを取得するのが普通だった。新しいアイテムにより今まで解けなかった課題が解決できて成長を感じるという仕組みである(実際のプレイヤースキルの成長は少しずつ感じるものだが、そこにアイテムが加わることによって劇的に感じられるようになる)。

今作も最初にほぼすべての能力を手に入れるのは同じだが、ゾナウギアについては「少しずつ集めていき」「そのたびに課題を劇的に解決できる」といった特徴があり、従来のアイテムと似ていると言える。

最初の感動は皆覚えているはず。
ギアの使い方を教わるのも成長。
空島に出来合いのマシンが置いてあったり。

ランドマークによる誘導

目立つ建物や地形(ランドマーク)による誘導は前作から行われていた。今作の鳥望台にあたるシーカータワーを筆頭に、集落、馬宿、祠、敵の拠点、のろし・・・などなど。これらのランドマークの中からプレイヤーは好きなものを選び、当面の目的地として設定することができる。制作者の視点で言うと、プレイヤーに移動の自由を与えつつ誘導もできるというわけだ。

視線誘導やワッカ遺跡の話で触れた通り、ランドマークによる誘導は今作にも引き継がれているが、大きな違いが一つある。今作のプレイヤーはそれらを上空から探すことが多いのだ。前作のランドマークのデザインは地上で探す想定だったのだから、今作ではうまく機能しない可能性がある。今作のランドマークに多くのデザイン変更が見られる理由はそこだろう。

馬宿から煙が上がるようになった変更に気づいた人は多いと思う。そもそも馬宿のデザインは前作から特徴的であり、それはランドマークとしての機能性を考えた結果だろう。上空から見ても十分目立つと思うが、それが煙でさらに強化されたのは、ランドマークによる誘導がそれだけ重要だということだろう。

大妖精の泉は前作では見つけにくい位置にあった。

今作で追加された地上絵も空から地上に誘導する要素だし、祠や鳥望台、深穴、大妖精の泉、ルミーなども発光することで夜でも上空から見つけやすくなっている。

ゴロンシティの石像の目は前作では光っていなかった。

今作はパラセールでの滑空中に望遠鏡が使えるようになったのも大きい。しかも使用中は時間の流れが遅くなるので落ちついてマップピンを打つことができる。

ランドマークによる誘導を「大きな誘導」とするなら、「小さな誘導」としては素材、旅人、コログ、カバンダなどがある。これらがフィールド全体に散りばめられているので、フィールドのどこにいても常に「見回せば何かが見つかる」状態であり、たとえ街道を外れたとしても「どこに行けばいいか分からない」とか「何もないところに来てしまった」と感じることはほとんどない。

洞窟は地域性のある「祠」である

空島と地底ばかりが注目されていて、その陰に隠れている気がする洞窟(井戸も含む)だが、ゲーム内での役割は意外と大きい。すでに述べたように洞窟で採れる素材が地底で役立つというのもそうだし、険しい地形をスキップできるトンネルとしての機能もあるが、ここでは地域性のあるミニダンジョンとしての役割に着目したい。

今作の神殿を「前作の神獣に地域性を加えたもの」だとするなら、洞窟は「前作の祠に地域性を加えたもの」だと言える。実際、今作の祠は洞窟の中にあることが多く、そこまで誘導する祠チャレンジがメインであって祠自体は「祝福」であることも多い。

今作のシナリオで訪れる場所にある祠の多くがチュートリアル的な内容であり、純粋なミニダンジョンとしてはむしろ洞窟のほうがそれらしいと思える。また前作の祠で数多く見られた一体の強力な小型ガーディアンと対決する形式はほぼ無くなり、ゾナウギアのチュートリアルや「一身の戦い」に置き換わっている。

そもそも祠とは、過去作で言うところの神殿(ダンジョン)を短時間でテンポよく進められるように細切れにしたうえで、広大なフィールドに散りばめたようなものである。前作の祠と神獣のデザインに地域性がないのはフィールドと空間的に切り離すことで単調さを避ける狙いだろう。しかし今作の神殿を見れば明らかなように、今作では地域性を取り戻す方向に舵を切っており、ミニダンジョンについても洞窟のデザインで地域性を表現している。

こういうのとか、
こういうの。
戦闘系は前作DLC「剣の試練」を思わせるパズル形式に。

たくさんの「間違った」方法

手段は問わない。

この祠の謎をどう解くか、この敵をどう倒すか、あの空島にどうやって行くか・・・このゲームはプレイヤーに対して絶え間なく「課題」を提示してくる。そしてそれらを解決するたくさんの方法がある。最適な方法、簡単な方法、自力で考えた方法、楽しい方法など。

どう解いても報酬は変わらないので、好きな方法で解けばよい。これはやりたくない方法はやらなくていいという意味でもある。たとえばより難しい方法で解いたプレイヤーに特別な報酬を与える実績システムのような形式もありうるわけだが、今作はそうではない。もしそうだったら、簡単な方法で解くことに対して実質的に罰が与えられてしまうことになり、本当の意味で自由だとは言えなくなるだろう。報酬が無かったとしても「正解」を定めてしまうこと自体が今作にはそぐわない気もする。

ここまで「簡単な方法」という言葉を乱暴に使ってきたが、そもそもどれが「簡単な方法」かは人によって異なるというのが面白いところである。「簡単な方法こそが盲点だった」ということはゲームに限らずしばしばあるし、あるいは悩んだ末に「たぶん正攻法ではないが、簡単でもない、なにやら奇妙な方法」で解決することだってたまにはあるかもしれない。

とにかく解き方が多いほうが解ける確率も上がるだろうし、結果的に解けたのならそれはすべて正しい方法だと言っても怒られはしないだろう。

正しい。

もちろん制作者は神ではないので不具合もゼロではない。しかし通常プレイの範囲で出来ることをしているだけなら、それは基本的に制作者の想定内だと考えられる。正確に言うと「想定外の解き方をされても構わないと考えている」。

祠の内部の壁を見ると分かることだが、行く手を阻む壁の天井付近が空いているときと空いていないときがある。前作では「なんとなく」空いていることが多かった印象だが、今作では意図的に分けられているように感じる。想定した方法で解いてほしい所では壁は完全に閉じているが、それほど重要ではない所ではこっそり空けてある、というように。

あるいは別の例にして「雷鳴の島の雲はどこからでも入れるが、風の神殿の雲は上からしか入れない」と言ってもいい。要するに本当にされたら困ることは最初から出来ないようにしてあり、されても困らないことは出来るだけ制限しないようにしてあるということだ。

なぜ制限しない必要があるのか

なぜ制限しないようにする必要があるかと言えば、それは今作がSNSを意識して作られているからであり、そのために毎回異なるプレイ体験を生むようにデザインされているからである(もちろんSNSではなく身内とのコミュニケーションでも構わない)。

もし購入前に動画でゲーム内容を見てしまったとしても「別のやり方がありそう」と思えるから、自分でやる意欲を損なわないようになっている。それは前作でも同じだったが、今作はフィールドの拡張とゾナウギアの導入によってさらに強化されている。自分でクリアした後でも動画を見たくなるし、自分と異なる解き方を知りたくなる。

我々が求めているのは、知らないこと、予想外のことが起こったときの驚きであり、それがどんなに非効率的な方法だろうと(解決方法にすらなっていない無意味な行為だろうと)大して問題ないのである。そのような驚きを得るために必要な、予測不能なほど多様な結果を生み出す可能性を、このゲームは秘めている。【終】


あとがき 230731
お疲れ様です。ゲーム自体は発売から2週間くらいでクリアしてたけど検証と執筆に時間がかかってしまった(最初はどうまとめるのこれと思った)。検証のために空路での移動禁止やパラセール取得禁止をやったけど結構面白かった。次はシナリオ解釈で書きたいけどDLCを待ちたいような気もする・・・。( → DLCを待たず投稿しました)

230816追記
最初の投稿後にけっこう加筆修正しました。記事タイトルにある新マリッタ馬宿の話は全体のごく一部でしかなくて期待外れだったら申し訳ない。本当は「ティアキンのレベルデザイン」とかが無難だろうけどあまり専門用語を使いたくなかったのと単純にキャッチーじゃないなと思いました(このタイトルでもピンと来るような人に読んでほしいという思惑もあり)。新マリッタ馬宿の話は私が初回プレイの中で最初に気づいたポイントであり、この記事を書こうと思ったきっかけでもありました。

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